海洋冒険ロマン

こんな話を思いついてみたり。

無敵の水兵(セイラー)クラーク閣下は自らの船を愛している。クラークは七つの海を紆余曲折しながら一人の女性の出会う。彼女の名前は徹子。しかし、徹子は謎の組織にさらわれてしまう。謎を追い求めるクラーク。その途中には協力者のイギリス人(スコッチ)の暴露によってゲルマン斡旋ブローカー一味だと分かる。果たしてクラークは徹子に再び会うことができるのだろうか?*1

という海洋冒険ロマン活劇「曲折戦艦メンデレーエフ」ってのはどうだろう?
理系の人間じゃないと何がおもしろいのか分からないのが難点ですが・・。

*1:どうせ会えん(笑) 

高周波をフィルタリングしないDAC

suikanさんの日記(id:suikan:20040428#p4)を読んで、「レコーディング技術が進んだので、DACの出力で高周波をフィルタリングしなくてもOK」(意訳)というすてき記事にちょい受けしてみたり。
うーん、これが高再現性である状況というと、もうこれはゲームミュージックしかないですね。22KHz,8bitのPCMやら、DAC内蔵のFM音源やら、4bitDACのSSGやら。
どうせ(^^;)この辺の音源は最低分周比で出力しても44.1kHzよりも低いはずだし、そもそもレベル方向だって量子化されてて、量子化解像度も16bit以下でしょう。ならば、元からジャギーがかった音源ですので、DAC量子化ノイズは「そもそもの音に入っていたもの」と見なすことができます。
つまり、くだんの記事はこう読むことができる訳ですな。

かつて(90年代以前のゲームミュージックの)CDの録音技術が未熟だったころ、ディジタル録音時に44.1Khzを超える成分を完全に取り除くことはできなかった。(中略)しかし、優秀なレコーディング技術によって高周波成分を完全に取り除ける今、オーバーサンプルなしでもDACに出力フィルタは(90年代以前のゲームミュージックを再現するのに)不要だ。

やっぱり、基盤直接続の原音だよね。PCM,FM音源の再ミキシングやコーラス、リバーブ、イコライズ等のアナログフィルタはかましちゃだめだよね、と。
やー、気が合うなぁ(笑)。
ゲームミュージックは原音ですよ、原音。


・・なんてなことは、その人は思ってなかったんでしょうけど(^^;)。

オーディオの基礎:スピーカーの話

(今日もライブ公開。そもそもなんでこんなこと書いてるのやら)
オーディオの話をし始めると、とんでもないマニアックな内容や、なぞの主観評価とかがいろいろ出てくるので、不思議な世界に突入するのですが、まぁ、自分の知識(間違ってるかもだけど)、をまとめておくためにもちょっと。

オーディオは突き詰めると信号処理工学の世界に突入します。人というデバイスにどうやって音が伝わるのかというただ一点をクリアにするための考え方。これが、「オーディオ」という評論の正体です。

そもそも、オーディオの世界では、目の前で鳴っている音が最上とされます。
でも、CDやレコードに落とした時点でなんらかの物が抜け落ち、それを別のデバイスで鳴らした時点でまたなんらかの物が抜け落ち、それを人が聞く時にまたなんらかの物が抜け落ちと、いろいろと途中で落ちて行く物が出て来ます。
これを、なんとかして「最上」の状態に持っていこうといろいろ細工をする。これが、オーディオマニアがたくさんのお金と時間を掛けて追い求めているものになります。

まず、始めに疑うべきは、目の前で鳴っている音をどうやって人は感じているかというところです。音の中身はなんでもかまいません。音楽でもいいし、何かの立てる自然音でも、人の声でもかまいません。とりあえず、お話を簡単にするためにこれらの物を引っくるめて「音源」と呼びましょう。
音という物の正体は小学校でも習うように「空気の振動」です。もう少し正確に言うと、空気の圧力(気圧)が変化したことをその回りの空気が何とか元に戻そうとして、その分を補い、補ったことによって今度は別のところが補い・・と、気圧の変化が伝わって行くことが「音」です。
「音」はそれ単体では存在せず、必ず聞く人が必要です。人じゃなくて物であってもかまいません。とにかく、空気が動いているだけではそれは「音」ではなく、空気以外の何かを動かして初めて「音」になります。
人の場合、音の多くは耳というデバイスが聞きます。耳は小さい板(鼓膜)によって空気の振動を「音」として捕らえるのです。
これから分かることは、鼓膜を元の音と同じ形で振動させてやれば、最上のオーディオとして機能するに違いない、ということです。

ところが、そこまで世界は簡単ではありません。
人の「耳」というデバイスの音を感じている部分は確かに鼓膜かもしれませんが、鼓膜に音が届く前に、耳たぶで微妙に反射し、耳の穴を通ってきます。耳たぶで反射する時には音の鳴っている位置によって微妙に音が変わりますし、細い管を通るとまた微妙に音が変わります。
結果として、実際には音源がない状態で、「鳴っている音で直接鼓膜を振動」させても、それは、「目の前で鳴っている最上の音」とイコールにはならないのです。

そこで、次善の策を取ります。
人の耳の形は個人差がありますし、あんまりそこにこだわっても仕方ない。耳に入る直前の状態を再現しよう、と。
一応、気圧の変化の伝わり方には方向があります。耳たぶの形は結構複雑で、方向によって微妙に反射が異なるのですが、この際、どうせ音が鳴っているのは正面がほとんどだと仮定して、顔の正面から音を鳴らします。
音を鳴らすためには、もともとの音源の出している空気の振動と全く同じ形の振動をつくってやる必要があります。
ところが、「全く同じ」というのは、予想外に難しいのです。
音を鳴らすためには、空気を振動させる装置が必要になります。
この装置のことを「スピーカー」と呼びます。スピーカーにはいろんな種類があるのですが、多くは板を前後に動かすことによって、板の近くの体積を変化させ、気圧の変化を作ります。板を押し出すことによって空気を圧縮し、板を引くことによって空気を薄めるという感じで。同じ気圧にずっと保持することはできませんが、瞬間的な気圧の変化だけでしたら、板の動きだけで十分近似できます。
ところが、板を動かすって事は、質量(重さ)のある物体を動かすということです。質量のある物体は、なるべくそこに止まろうとする力「慣性」が働きます。慣性の力は、質量が大きければ大きいほど、つまり、重ければ重いほど強くなります。
そのうえ、速く動かそうとすればするほど動かすための力、つまり「慣性」をねじ伏せるための力も大きく必要になります。
結果として、速く動かす(高い音を出す)ためにはそれなりに板が軽くなければなりません。
ところが、音のエネルギーというのは、高い音であればあんまり気圧を変化させなくても割合大きく取れるのですが、低い音で、なおかつ大きなエネルギーを持たせようとすると、今度は気圧の差をすごく大きく取らなくてはなりません。気圧の差を作るためには、体積の変化が必要ですので、板の面積を広くするか、板の動く距離を長くする必要があります。
じゃあ、板を大きくしようとすると、今度はそれに合わせて重くなり、慣性が強く働くため、更に更に強い力が必要になります。
じゃあ、目一杯力を強くしてやればそれでいいかというと、今度はまた別の問題が出て来ます。大きい物体は、その自重によって「たわむ」のです。「たわむ」と、板が動かしたい本来の動きより一瞬遅れてついてくる形になります。遅れてくるって事は、正しい気圧の差にならないということです。
ホントのホントに堅い物体であればたわみが起こりづらいのかもしれませんが、今度はたわまないと「折れる」事になります。
軽くしないとうまく動かない。堅くすると重くなるか、動きによって折れちゃう。大きい、低い音も出そうとすると八方塞がりです。

ここで、発想の転換をします。
人間の耳の奥には「蝸牛器官」という物が入っています。これは、名の通りカタツムリのような形の器官で、鼓膜を震わせた空気の振動を解釈するための物です。解釈は「どのくらいの高さの音が」「どれくらいの音量で」鳴っているかという方法で行います。
つまり、人間の耳は、どうやら「振動」をそのまま感じているのではなく、いったん音の高さ(周波数)に変換してから解釈してるっぽいのです。
と、なれば。
高い音と低い音が一緒に鳴っている(ように聞こえる)音は、高い音だけと、低い音だけを別々に鳴らしても、人の耳には区別がつかない(はず)なのです。
これをうまく応用します。
まず、高い音は、高い音専用のスピーカーで鳴らします。このスピーカーは、そもそも低い音は小さい音でしか鳴りません。そして、低い音は低い音専用のスピーカーで鳴らします。こっちも、高い音(速い動き)はそもそもできません。
すると、お互いが得意とするところはきっちり聞こえて、聞こえないはずの音は、もう片方のスピーカーが覆い隠してくれるからさほど問題なかろう、と。

でも。
お互いの得意不得意の部分をぴったり重ねるのは結構大変です。得意っぽい音の高さはそれぞれ違いますし、不得意っぽい音の高さが、うまい具合にほかのスピーカーの得意なところにはまるとは限りません。すると、お互いの得意と得意のちょうど境目に不得意な音の高さが出てしまいますし。場合によっては特定の音の高さだけ
高さだけが元よりも大きくなってしまうかも知れません。
そこで、スピーカーに行く前に得意不得意がうまく均されるように、音の高さによって大きさを変えるという作業を行います。
スピーカーはそもそも電気で動きますので、電気の信号をいじってやれば、特定の音の高さだけを大きくしたり、小さくしたりすることができます。このための電気的な機械を「バンドパスフィルタ」と言います。そして、「フィルタ」をいくつか束ねて目指している音の大きさにする機械を「イコライザ」と言います。

ところが、まだ思った通りの音にはなりません。
スピーカーは板を動かしています。そして、物を動かすためには、それに力を掛けなくてはなりません。力をかけると、「押されている物」にかけられる力と、「押している物」がかけている力が、ちょうど反対方向で同じ大きさになります。
ここで、動かしたいのは「板」なのですが、動かしている側の機械も、板と同じように動いてしまう可能性が考えられます。すると、板は思ったようには動かず、結果的に期待している音にはなりません。
そこで、板を動かすための機械はどこかに固定し、板だけがきちんと動くようにします。

ここまでやっても、まだ元の音にはなりません。スピーカーの板が「たわむ」ということは、こんどはそのたわみによって「びよーん」と変な音がするのです。たわんでいる物の堅さと長さによってこの「びよーん」の音の高さが変わります。この音の高さのことを「固有振動数」と言います。どんな力を加えられても、板は大体その音で「びよーん」と鳴るようになります。
鳴らないようにするために一番いいのは、おさまえつけることです。板を適度な力で押さえ付けてやれば、固有振動数で音を鳴らそうとするのを止めることができます。もちろん、固有振動数以外の音もおさまえつけられてしまいますが。
次善の策としては、あまり堅くないできれば軽い物体で板を作る事にします。あまり堅くない物体であれば、そんなに「びよーん」と言う音がしないはずです。堅くない物体だと、「たわみ」は大きくなりますが、変な音がしちゃうよりはましです。

さあ、これでスピーカーは何とかそれっぽい音を出せるようになりました。
でも、まだこれだけでは足りません。
スピーカーは人の前に置かなければなりません。もちろん、空中に動かないように浮いていればいいのですが、重力が働いている現実ではそんな風に置くことはできません。仕方がないので、スピーカー自体を板か棒の上にくくりつけます。板や棒はきちんと固定できるほど頑丈な物。スピーカーひとつでは全部の音を再現できませんので、二つないしは三つのスピーカーをくくりつけておきます。
ところが、こんどはこれをどこに置くのかということを考えなくてはなりません。スピーカーからは正面にだけ音が出ている訳ではなくて、ちょうど真後ろにも同じように音が出ています。例えば、部屋の中にスピーカーを置くと、壁とかで音が跳ね返って、正面からの音と、真後ろから出て壁に跳ね返った音が混じって、元の音とだいぶ違う音が聞こえてしまいます。
そこで、スピーカーの後ろから出た音をなんらかの方法で聞こえないようにしてやる必要があります。
一番確実なのは、スピーカーの板をちょうど挟む形で無限の広さの壁を作ることです。でも、無限の広さの壁なんてのは実現できる物ではありません。
次善の策としては、スピーカーの後ろ側を、部屋の一部として隔離してしまうことです。密閉してしまえば、元より音は聞こえないはずです。
ところが、音というのは結構やっかいです。「聞こえないように」と簡単に言いましたが、音を完全に無くす確実な方法はなかなかありません。すごく頑丈な壁で隔離したとしても、スピーカーの板から音は漏れてきてしまいます。
仕方ないので、隔離するのはあきらめてスポンジのような柔らかい物で音を吸収する方向で考えます。吸収するとはいっても、完全に吸い取ることはできませんので、ある程度小さくする程度で我慢するしかありません。

まぁ、それでもそこそこ小さい音しか漏れてこないようになったとしましょう。
これでもまだ問題があります。先程、堅い物は「びよーん」という固有振動数を持っているという話をしましたが、同じような感じで、構成する面自体がある程度平行になっている狭い空間は、平行になっているところで「ぼー」と特定の周波数の音が聞こえてきます。これは、音が跳ね返った物に、更に跳ね返って・・と繰り返した末に鳴る音で、「共鳴」と言います。共鳴する音の高さもやはり「固有振動数」と言います。
共鳴を起こさせないためには空間を不規則な形にする必要があります。

だいぶいい線まできました。でも、まだ元の音にすることはできません。
音が聞こえないように密閉すると、本来聞こえてはいけないはずの音を遮断することはできるのですが、今度は密閉しているために別の問題が出てきます。
音は、気圧の変化です。つまり、スピーカーの板のところでは、気圧がいろいろ変わっていると言えます。
ところが、大きく気圧を変えるためには、そのための元になる空気が必要です。たとえば、スピーカーが大きく引いて、スピーカーの前の気圧を低くしようとした、としましょう。すると、密閉されてる側の空気は逆に押されています。押されるということは密閉されている側では気圧が高くなったということで、高くなった気圧はなんらかの反発をします。
つまり、密閉されていると、実はスピーカーは自由に動けないのです。
高い音ならば問題ありません。気圧の変化は早いですが、変化量自体はあまり大きくないので、反発も小さいです。
でも、低い、大きい音を鳴らそうとすると空気の反発は大きくなります。反発が大きくなると、思った通りに板が動きませんので、思った通りの音を鳴らすことができません。
仕方がないので、スピーカーの裏側を密閉するのはあきらめ、空間に穴を空けます。ただし、できればあんまり音は漏れてほしくないので、いろいろ複雑な形で道を作るとか細工をします。

さて。
ここまで見てきた物をまとめましょう。

  • 目的
    • 音源と全く同じ形の空気の振動を耳に伝える
  • 方法
    • 「全く同じ形」は難しいので、似たように聞こえるよう人をごまかす
  • 作り方
    • いろんな音の高さを再現するため、複数の、大きさの異なるスピーカーで、
    • なるべく軽い板を使い、
    • なるべく強い力で、
    • 動かす部分はなるべく重く、固定し
    • なるべく頑丈な箱で囲み、
    • なるべく箱の中は複雑な形状で、
    • 箱の一部に穴を空けること

これを踏まえた上で手元のスピーカーを見てみましょう。なんとなくそれっぽく作られているのが分かると思います。

でも。
さっきから私は何度「次善の策」という言葉を使ったのやら。やりたいことはすごく単純なのに、なかなかそれに近づけない。これがオーディオの世界なのです。

こんなにも面倒なので、「別に、音を再現しないでも楽しめるよね」という見方もあります。この立場にたつと、今までお話してきたのは「High Fidelity(高忠実性:Hi-Fi)」とよび、再現性を気にせずに楽しむ方向を「Low Fidelity(低忠実性:Lo-Fi)」と呼びます。
スピーカーの話をしているだけでこんなにも面倒なのですから、もっと奥まった、アンプやレコードにまで踏み込むとどうなるかは推して知るべしです。
(続く・・かな?)

(追記)

と、言うような話を、なぜか小学生の頃ずっと読み返していた「絵で見るオーディオ・ガイド」(誠文堂新光社)で、知識ではなく血肉として受け取っていたような。
父親が当時持っていた本で、未だに記憶に残っている本ってのは、しみじみ考え直してみるとすごい本ばかりだったんだなぁ、と思い知ります。
ほかにも「FF車のドライビングテクニック」という本が大のお気に入りでしたが、これは、スバルの小関監督の本だったし。今読んでも、これよりも細かく書いているドライビングテクニックの本って、見たこと無いです、私。