『R.P.G.』

 宮部みゆきは大好きな作家の一人なのだが、3−4年前に買ったまま読んでいなかった『R.P.G.』というミステリを読んだ。2001年の作品で、NHKのドラマにもなったそうだから人気の小説なのだろう。

 殺された「お父さん」とその「家族」のお話。「ロールプレイングゲーム」という言葉から展開されるイマジネーション。軽過ぎず重過ぎない。丁寧で上品な文体と、そこかしこにちりばめられた色々なタイプの「オンナノキモチ」。久々の宮部ワールドを堪能した。

 最新作であれ、古典であれ、小説は買ったその時が自分にとっての旬だと思う。本屋で出会い、帰りの電車で読み始める。家に着き、食事もとらずに読み続けて読破。余韻に浸ってふと外を見ると東の空が明るい・・・なんてのが理想的な読書だ。

 しかしこの『R.P.G.』、何年もの間机の上に放置されていた。正確に言うと、最初の数ページを読んで、先に進めなかったのだ。「R.P.G.」と書かれたタイトルページの後、最初のページが「ロールプレイング」という言葉の解説。ページ中央に3行だけ、辞書のように書いてある。ページをめくると文字がゴシック体に変る。見開き2ページのそれぞれににインターネットの掲示板のような文面が1つずつ。一つの発言とそれに対する答えだ。ここで止まってた。別にイヤな事が書かれていたわけではない。ナゼか次のページをめくる気になれず、先に進めなかったのだ。当時の自分のココロを想像するに、本というメディアの中にインターネットの掲示板という「異分子」が登場したので違和感を感じたのではないか。漠然とした記憶だが、なんかシックリ来なかったことは覚えている。

 殺された「お父さん」の娘の一美は、ブラインドタッチで携帯メールを打つ。物心ついた頃からインターネットが存在していたこの世代は恐らく、こんな事に何の違和感も感じないのだろうなぁ。

R.P.G. (集英社文庫)
作者: 宮部 みゆき
メーカー/出版社: 集英社
ジャンル: 和書