『池袋ウエストゲートパーク』

池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)
人気の作家、石田衣良の小説を初めて読んだ。「絶対面白いっすよ!」会社の後輩が太鼓判を押す。1997年に発表された石田衣良のデビュー作なのだが、以前テレビで見た彼のイメージとは少し違っていた。卒業までに1/3が退学する工業高校を卒業した主人公マコト。何か職についているわけではなく、母親の営む店の手伝いをするのが仕事という毎日。そんなマコトが出合う事件の数々は池袋の街さながら、強烈にドギツイのだが、マコトに使命感や悲壮感は無い。まるで家業の手伝いの延長のようなノリ。店番を母親に代わってもらい、ふらり街へ出て行き事件を解決する。

 文春文庫、4つの話が載っているのだが最後まで楽しく読めた。セリフ以外は全編マコトの一人称語りで、風景や情景の描写もマコトが語る。マコトは淡々としていてクール、物事を大げさに考えないタイプ。物怖じしないが感動も薄そう。読者は池袋の街に繰り広げられるドラマをマコトの目線で見ることになる。少し斜に構えたマコトの目線は物語りを淡々と伝えてくれるのだが、どこかでギアが変わり、マコトが熱くなり身を乗り出す。物語りがグイッと加速するそんな時、読者も見事にシンクロして熱く身を乗り出してしまう。石田衣良上手い。

 マコトは基本行き当たりばったりの運任せなのだが、随所で明晰な頭脳と的確な判断が光る。そんなスタイルが若い読者の心をつかむのかもしれない。昔読んだ景山民夫の『トラブルバスター』シリーズを思い出した。

池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)
作者: 石田 衣良
メーカー/出版社: 文芸春秋
ジャンル: 和書