『<他人力>を使えない上司はいらない』

<他人力>を使えない上司はいらない! (PHP新書)

<他人力>を使えない上司はいらない! (PHP新書)

 元ANA客室乗務員でニュースステーションのお天気お姉さんだった著者。論理的な章立てと丁寧な文章に好感がもてる。

 前半は理論編と称し「他人の力を上手に借りる」ことの大切さを健康社会学の見地から、「ストレス」という切り口で論じている。抗ストレス力をあらわすSOC理論や、ストレスとやる気の度合いとの関係を示すJD-Cモデルなど、示唆にとんでいて面白い。また、「運」にまつわる松下幸之助氏の逸話、「死」と向き合った東芝の元社長の西室泰三氏の話なども興味深く読ませてもらった。

 後半は実戦編ということで、ビジネス上の実例が挙げられている。「力を貸したい」と思われるため、「力を貸したくない」と思われないための実例集。「良い見本」と「悪い見本」だ。前半とは大きく変わり、まるで雑誌の人生相談コーナーのような優しい論調に変わっていて少々おどろいた。「他人力を借りやすくなるためのHACK」といったところか。使えそうなのがいくつかあったので赤ボールペンで線を引いておいた。

 分かりやすい文章と、興味深い内容、そして使えそうなHACK集。とても良い内容だ。特に20代後半から30代前半位の若くて心優しい新人リーダー達にお勧めしたい。一方、このタイトルはいただけない。売れそうなタイトルなのだけれど、実際に上司が他人力を使うことそれ自体を論じているのは第一章の十数ページのみ。あとは基本的にストレスと他人力との関係で論じられている。タイトルから入った読者としては「チョット違う話になっていませんか・・・」というような印象を受ける。また、前半と後半のギャップにも悩む。いっそのこと紙の色と活字を変えるか、別の本にしてしまった方が良いのでは・・・と思った。内容が良いだけに惜しい。