『意外に日本人だけ知らない日本史』

 著者のデュラン・れい子は1942年東京生まれで元博報堂のコピーライター。スェーデン人のご主人と結婚後、スェーデン、オランダ、ブラジルで暮し、現在は南フランスのプロヴァンス在住。専業主婦時代を経て版画家として活躍、本はこれが3作目。

 少し内容にふれるが、本の帯にも書いてあることだから許して欲しい。タイトルにある「意外に日本人だけ知らない日本史」とは第一次大戦後の1919年、日本が世界で初めて人種差別撤廃の提案をしたという歴史のこと。フランスをはじめ多くの国の賛同を得たもの米英の反対で成立しなかったという。著者はご主人からこの事を知らされ、「そんな事、教科書で習わなかったわ」といったそうだ。実際知らなかったし、習った覚えがない。

 近すぎて見えないもの、離れて初めて見えるものがある。この手の本は、ずっと日本に生まれ住んでいる我々には気づかない、あんな事、こんな事を気づかせてくれて面白い。デュラン・れい子の場合、思考がかなり現地人化しているのだけれど、三つ子の魂百まで、日本人的感覚も忘れていない。そしてその二つを頭の中で意識的に区別できるとても頭の良い人だ。だからいわゆる「西洋かぶれ」にはならないし、「日本びいき」にもならない。そして職業柄とても幅広い年代、国籍の友人を数多くもっている。まるで近所のおばさんが世間話をするような気楽な雰囲気で、本質をついた内容が語られる。写真やデータ満載で「どうだ!」と強力に説得されるより、ストンと腹に入る、そんな不思議な魅力のある語り口。コスモポリタンってのはこういう人のことなのだろうと思う。

意外に日本人だけ知らない日本史 (講談社+α新書)
作者: デュラン れい子
メーカー/出版社: 講談社
ジャンル: 和書