『ヘンリー六世 第二部』

 『ヘンリー六世 第二部』ウィリアム・シェイクスピア
 イングランド王ヘンリー6世がフランスのアンジュー家マーガレットを王妃として迎えるところからこの第二部は始まる。フランスとの100年戦争が終わり、イングランドは平和を迎えるのかというとそうではない。第一部でも触れていた宮廷内の内輪もめ、権力争いが次第にエスカレートしていくのだ。そしてその権力争いが決定的となり、国を二分する薔薇戦争へと突入するまでの過程がこの第二部では描かれている。

 この戯曲、大勢の人が登場しては死んでいく。戦闘シーンが多く、演出の仕方によっては、かなりドラマチックな舞台になるのだろう。かなり騒々しい内容なのだが、全体を通してみれば何か事が起こって決着がつくといった、起承転結が明確な話ではない。前述の通りあくまでも薔薇戦争が始まるまでの過程が描かれているからだ。一方、戯曲を読むだけでも味わえるのは壮絶な舌戦。美辞麗句と罵詈雑言が交錯して火花を散らす様が面白い。

 初めて読んだシェイクスピアの戯曲は『オセロー』 だった。その時にこのブログに書いたのだが、戯曲は小説と違い、キャラクターの詳細をこと細かに書き記さない。舞台で演ずる役者が全身でそのキャラクターを表現してくれるから、ゴチャゴチャ説明がいらないのだ。若者は若者らしく、悪者はいかにも悪者風に役者は演じてくれる。したがって、戯曲を本で読む場合、登場人物のキャラクター付けは読む者の想像力に任される。繰り返すが本作は登場人物が多い。冒頭に紹介されている登場人物は40人以上、整理してかからないとわけが分からなくなってしまう。

 冒頭の登場人物一覧のページを見て「こりゃヤバイな」と思った。ずらりと並んだ40人以上の人名、王ヘンリーを筆頭に位の高い順に書かれている。この全員のキャラクターを頭の中で整理するのは不可能と思われる。どうしようか考えた上でやってみて、結構良かったことがあったので紹介しよう。

1.その人物が最初に登場したページを書き込む・・・次に出てきた時、そのページに戻って復習できる。
2.友好関係と敵対関係とを線と矢印で表す・・・登場人物が徐々に2つのグループに整理されていく。

この2つを実行するだけで混乱することなく、最後まで楽しむことができた。本当は大きな紙にマップを書けばもっと良いのだろうが、通勤途中の電車の中ではそうもいかない。いかがだろうか?

ヘンリー六世 第二部 (白水Uブックス (2))
作者: ウィリアム・シェイクスピア
メーカー/出版社: 白水社
ジャンル: 和書