『十五少年漂流記』

 1899年、ハワイ北のパール・アンド・ハーミーズ環礁で難破した龍睡丸の乗組員達がたどりついた無人島での記録、須川邦彦による『無人島に生きる十六人』という本を以前読んだ。危機的状況の中、明るく生き抜いた明治の男達の実話なのだが、椎名誠がこの本の解説を書いている。そのタイトルが『痛快!十六中年漂流記』。有名な小説になぞらえたこのタイトル、言いえて妙。さすが椎名誠と思うと同時に、『十五少年漂流記』をまだ読んでいなかった事に気づいた・・・。 そんなわけで手に取った『十五少年漂流記』、1828年生まれのフランス人ジュール・ヴェルヌ、1888年の作品だ。

 夏休み、ニュージーランド沿岸一周の船旅に胸を躍らせていたオークランドのチェアマン小学校の生徒達がどうしたことか、子供達15人だけで太平洋を漂い、南海の無人島にたどり着いた。最年長のゴードンは14歳のアメリカ人。13歳のフランス人ブリアンと同じく13歳のイギリス人ドノバンはライバルの関係。8歳から14歳までの少年15人だけで切り開く無人島での暮しをヴェルヌのペンが生き生きと描いている。

 「困難に直面した時に、勤勉、勇気、思慮、熱心の四つがあれば、少年たちでも、必ずそれに打ち勝つことができる」これがヴェルヌが少年少女へ伝えたメッセージだ。本当にその通りと誰もが認めよう。しかしオトナは考えてしまう。これだけじゃぁダメなんだよと。実際の人生ではこの四つ以外にも必要なものがある。ずるさ?冷酷さ?如才なさ?才能?いやいや諦めかもしれない・・・。

 あらためて考えてみたら、確かに勤勉、勇気、思慮、熱心は大切だと思うけれど、日々心掛けているのはそれ以外のことばかりのような気がしてきた。そうなってしまうのは自分を含めたオトナ達に勤勉、勇気、思慮、熱心の四つが足らないから。足らない分をアレやコレで必死に補って生きている、そんな図式なのではないだろうか。本当は30年前に読みたかったけれども、今読んでヨカッタとも思う。『海底二万マイル』や『八十日間世界一周』も読んでみようかな。

十五少年漂流記 (新潮文庫)
作者: ジュール・ヴェルヌ
メーカー/出版社: 新潮社
ジャンル: 和書