『ナヴァロンの要塞』


『ナヴァロンの要塞』アリステア・マクリーン
ナヴァロンというのはエーゲ海に浮かぶ島の名前だ。時は第二次世界大戦中、ナヴァロン島にはドイツ軍の要塞があった。ナヴァロンの北にあるケロス島には孤軍奮闘する1200人のイギリス将兵が助けを待っているのだが、ナヴァロンの要塞にはバカでかい大砲があり、1200人を助けたくても島に近づけないのだ。この大砲を破壊するというミッションを下された5人の男達、1200人の命を背負った5人は敵だらけの島に命がけの潜入を試みる。

 息もつかせないアクションの連続。敵の要塞島への潜入なのだから当然なのだが、次から次へと迫り来る危険を一つ一つ克服することで、目的の大砲へ近づいていく。この緊張感がたまらない。そして何とも魅力的で個性的な5人。リーダーのマロリー大尉はニュージーランド人。明晰な頭脳と俊敏な肉体を持つプロフェッショナルの後方撹乱工作員なのだが、実は世界に名の通った登山家でもある。マロリー大尉の長年の相棒で一番の理解者であるアンドレアはギリシア人の大男。部隊No.1の戦力、ムチャクチャ強くて格好イイ。アメリカ人のミラー伍長はフケツのミラーと呼ばれる。おしゃべりで悪態ばかりつくのだが、実は爆発物のプロ。ケイシー・ブラウン電信兵曹は通信を受け持つが、海上では頼りになる機関士となり、スクラップ同然のオンボロエンジンも彼の手にかかれば動き出す。チームの最年少スティーヴンズ大尉は英海軍予備士官。彼もマロリー大尉同様一流の登山家なのだが、海上では航海士となる。一人ひとりが違う能力の持ち主で持ち場持ち場で力を発揮する。石ノ森章太郎サイボーグ009を思い出した。

 著者のアリステア・マクリーンは1922年生まれのイギリス人。『荒鷲の要塞』という小説でマクリーンを知り大ファンになってしまった。この作品は彼の2作目で代表作。1957年の作品だから、なんと50年以上昔に書かれたことになる。読み応えのある長編だが、一日で読み切ってしまった。この作品も『ナバロンの要塞』というタイトルで映画化されているそうだ。ぜひ観てみたい。