『元素生活』


『元素生活』寄藤文平
 これまた面白い本だ。物質を構成する水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム・・・・昔化学の時間に習った「元素」は全部で111個あるという。名前と元素記号が書かれた「周期表」はカナリとっつき難かった。一部の金属を除いて具体的にその元素をイメージすることができず、順番と記号を丸暗記したのを覚えている。

 元素1つはものすごく小さく、人間の目では見ることができないからきっとどこからも文句は来ないだろう、この本では111個の元素一つひとつを男性のイラストで表現する。髪型、ヒゲ、服装、脚や体型に独特のルールを設けると、111ある元素が全て別の男性の姿になるから面白い。炭素は大学帽をかぶり黒々としたヒゲをはやし、タンクトップにジーンズをはいた細身のおじいさんの姿、カドミウムはギザギザのパンクヘアーで作業着姿の小太りのオジサンだ。

 日常生活の中で元素を意識することはほとんどないが、現に今も様々な元素に囲まれて生きているし、自分の体も元素の集合体だ。本書によると標準的な人間の体の65%が酸素、18%が炭素、10%が水素で、窒素、カルシウム、リンと続き、全部で34の元素からできているらしい。これはその人が生きていても死んでいても変わらない。人間や動物の生死はおろか、大気中の二酸化炭素が増えようが、オゾン層に穴があこうが、元素的には何も変わらない、ただその組み合わせが違っただけなのだという。この視点がものすごーく新鮮。

 巻末には上記の男性イラストを集めた大判の「スーパー元素周期表」が付録でついているし、レアメタルの話、カラダに必要なミネラルの食べ方なども面白い。一番高い元素はロジウム(Rh)で二番目はセシウム(Cs)らしいのだが、人間の体を元素レベルで原価計算すると、さて一体いくらになるか??

 日常生活の役にはたたないが楽しくてすごく勉強になる一冊だった。

元素生活 Wonderful Life With The ELEMENTS
作者: 寄藤文平
出版社/メーカー: 化学同人
発売日: 2009/07/16
メディア: 単行本