『ビジネスマンのためのメンタルタフネス』


『ビジネスマンのためのメンタルタフネス』ジム・レーヤー、ピーター・マクラフリン
 誰でも物事が上手くいくと気分が良くなる。ホームランを打つと最高の気持ちになる。しかしそうではなく、良い気分のときにこそ物事が上手くいく、最高の気持ちの時にこそホームランが打てる、というのが本書の根本原理だ。心理状態の変化はその人の身体的・生化学的変化を呼び起こす。大きな驚きや怒りで顔色が変わったり、手足が震えるのは最も顕著な例だが、ほんの些細な気持ちの動きや心理状態の変化はその人の身体へ影響をあたえる。従って心理状態がベストの状態の時、スポーツであれ、ビジネスであれその人の持っている最高のパフォーマンスができるというのだ。その状態をIPS(Ideal Performance State=理想的な心理状態)という。本書では、インテンシティ(=やる気の入り具合、熱心度)の高低と気分が楽しいか楽しくないか、という2つの軸で人間の心理状態を4つに分類する。ハイ・ポジティブ、ロー・ポジティブ、ハイ・ネガティブ、ロー・ネガティブという4つだ。この内ハイ・ポジティブの状態がもっともIPSに近い。

 本書では第一、二章でこの考えの原理を説明した後、第三章から十二章までをつかって、態度/姿勢、モチベーション、ヴィジュアライゼーション、呼吸コントロールなど、10の切り口で自身の精神状態をハイ・ポジティブ→IPSへと導く道筋を示す。この中にはエクササイズやダイエット、ユーモアなどの章もあり、実にいろいろな角度から人間の気持ちというのはコントロールできるのだと知らされる。逆に言えば、我々の気持ちというのは、実にさまざまな物事から影響を受けてしまうということになる。

 「気は持ちよう、リラックスして、前向きにがんばれょ・・・」簡単に言うとこういうことになってしまうかもしれない。このことを豊富な実例と、生化学についてのいくつかの新しい情報とで丁寧に(くどい程)説明してくれる。いかにもアメリカ人の本って感じがする。まぁしかし、日々のビジネスの中では腹の立つ事やへこむ事が連続してやってくる。あわせて二日酔いだったり、お腹が痛かったり、睡眠不足だったり、足をくじいていたり、いやな事に限って重なるものだ。こういうのは年々、歳を取るにつれ増えてくるから困ったものだ。それらによって自分の精神がある程度のダメージを受けるのは仕方がないと割り切って、その後自分がロー・ネガティブにならないよう、気をつければよいのだと分かった。そしてそうならぬための方法として参考にできる点がいくつかあったのは収穫だ。

ビジネスマンのためのメンタル・タフネス
作者: ジムレーヤー, ピーター・J.マクラフリン, James E. Loehr, Peter J. Mclaughlin, 高木ゆかり
メーカー/出版社: ティビーエスブリタニカ
発売日: 1992/11