『ヘンリー四世 第二部』


 シェイクスピア第2四部作の3作目。物語は『ヘンリー四世 第一部』の最期、シュールーズベリーの戦いで国王軍が勝利した直後から始まる。残存する謀反勢力の掃討、王ヘンリー四世の最期、そしてヘンリー五世の即位までを描く。

 第一部同様、第二部でもフォールスタッフが大活躍する。フォールスタッフは騎士の身分ながら大酒飲みの肥満体、口が達者な大法螺吹きなくせ、戦いの場ではてんで意気地がない。そんなへっぽこ騎士は、なぜか皇太子ハル(ヘンリー五世)の遊び仲間でもある。プロローグとエピローグを除き5幕構成のこの芝居、全部で19の場面からなるのだが、フォールスタッフはその内8場に登場する。これは王ヘンリー四世、皇太子ハルをはるかにしのぐ出番の多さだ。この芝居は史実を下敷きにした、フォールスタッフの物語とも言える。戦場への道すがら、徴兵して戦力とするのだが、徴兵逃れの賄賂でしっかり私腹をこやす。昔馴染みの女から言い寄られ、旧友には酒と料理をおごらせる。まぁその手際の良さは羨ましいかぎりだ。

 より道も多いけれど、物語の本筋も見逃せない。ヘンリー四世臨終に臨む放蕩息子の皇太子ハルの言葉の一つひとつは戯曲で読んでも胸にジーンとくる。また、前王リチャードを憎み現王ヘンリーを支持していたくせに、今ではリチャードを賞賛する、民衆の移ろいやすさを呪うヨーク大司教の言葉は何とも深い。「人の心の、なんと呪わしいことか! 過去と未来は美しく見え、現在はもっとも醜いと思うのだ」おぉ、これはまさに現代にも通じるものがあるぞ。

 みなさんご存知の時代劇。ヤマ場や見どころはシッカリ描き、その上で印象的なオリジナルキャラクターの活躍が観る者を飽きさせない。定石かもしれないが、さすがはシェイクスピアだと思った。四部作の最期を飾る『ヘンリー五世』が楽しみだ。

ヘンリー四世 第二部 (白水Uブックス (16))
作者: ウィリアム・シェイクスピア, 小田島雄志
メーカー/出版社: 白水社
発売日: 1983/01
ジャンル: 和書