『投資ミサイル』


 表紙の絵は豪華な椅子に腰掛け微笑むスーツ姿の女性。その後ろには赤色灯を光らせたロボット。サブタイトルに「今度こそ最期まで読める、あなたを成長させる投資ノウハウ」とある。恐らく小説仕立ての投資に関するビジネス書なのだろう。面白そうなので買ってみた。

 主人公の道明美穂の勤めるホリデイ産業は上場しているものの株価は低迷、不況のあおりで業績は下降線。そこでメインバンクから取締役としてやってきたのが何とロボット取締役。ロボットは営業三課課長である美穂の直属の上司となる。表紙のイラストはこの二人(?)なのだ。戸惑う美穂に対し、ホリデイ産業は5,000万円の投資を3年で回収する新事業の計画立案を命じる。美穂の作った事業計画、ホリデイ産業の「ぬるい」基準ではOKだったであろうが、ロボット上司は納得しない。赤色灯を回転させ、ロボット上司の「指導」が始まる。ロボットは美穂に情報と気づきを与え、二人三脚で新事業を立ち上げていく・・・。

 この手の本は小説としてのストーリーの部分と、ビジネス書としての情報提供の部分とのギャップが難しい。流れに乗ってスイスイと読み進んできても、難しい情報の部分が来るとガタンと読む速度が落ちる。ナンダナンダ、チョットマテヨ・・・脳の違う部分がゆっくりと起動する。正直面白くなくなるのだ。恐らく著者が一番神経を使う部分だろう。この本の場合どうかというと、ナカナカ上手くできていると思う。赤色灯を回転させながらロボット上司が語り始める時点で読者は身構える。作中では美穂も身構えている。ロボット上司を登場させることでギャップが際立つけれど、読者は違うモードに入ったことを悟り頭が切り替わる。本の中の美穂も必死で理解しようと努めている。おんなじおんなじ。

 先日読んだ『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』でもそうだが、読者を飽きさせず、少しでも分かりやすく情報を提供しようという出版側の心遣い、ありがたい限りだ(そうでもしなければ本が売れないのだろうか・・・涙)。同様の知識を得るために、少し昔なら海外の原書を取り寄せ、辞書を引き、多大な時間と努力とお金を出す必要があったはず。ましてや紙が貴重であった時代からすると、夢のような贅沢な時代だ。ほんと、スミマセンという気持ちになってくる。

 日々ビジネスの現場に身をおきながら、「投資」というコトバは実はあまり身近でない。道明美穂といっしょにロボット上司から「指導」を受けた。夏の楽しい思い出の一つになったかも。

投資ミサイル
作者: 竹内謙礼, 青木寿幸
メーカー/出版社: PHP研究所
発売日: 2010/04/08
ジャンル: 和書