『ヤバい経済学』


 アメリカに経済学ブームを巻き起こした本らしい。ハーヴァード大卒の若手経済学者スティーヴン・D・レヴィットとジャーナリストのスティーヴン・J・ダブナーの共著。二人ともスティーヴンでややこしいのだが、レヴィット教授の独創性あふれるアイデアを、ベストセラー作家でもあるダブナーの筆がみごとにまとめ上げた、そんな一冊。

 本書の序章に書かれているのだが、経済学は非常に強力で柔軟な手法を取り揃えていて、情報の山をかきわけ、何かの要因やその影響を探り当てることができるのだそうだ。そして、その手法は雇用や不動産や銀行や投資に関する情報に向けられることが多いのだけれど、もっと「面白い」ことにも使えるのだという。「学校の先生と相撲の力士、どこがおんなじ?」「ヤクの売人はどうしてママと住んでるの?」「完璧な子育てとは?」目次を見ると経済学の本とは思えない「面白い」テーマが並ぶ。一方、どの章にもいろいろなデータが出てくる。全米の小中学生対象の標準テストのデータ、1989年から2000年までの上位力士の取組3万2000番の勝敗、ギャングの帳簿、ギャングが逮捕・負傷・殺される可能性のデータなどなど・・・。このあたりは経済学らしいのだろう。しかしそれぞれのテーマを、データをもとに掘り下げていく様はまるで謎解きのよう。ミステリ小説を楽しむような感覚でドキドキしながら読むことができた

 古典派経済学の始祖、アダム・スミスは元々哲学者だったという。世界はどうなっているのか?人はどう生きるべきか?哲学の問いはちょうどその頃に胎動を始めた現代資本主義を読み解こうとした。この本で二人のスティーヴンがやろうとした事は、分化され専門化された経済学の先祖がえり、原点回帰なのだろう。

 大晦日から元旦にかけて、年越しで読み終えたこの本。経済関連の書物や雑誌はよく読むが、いわゆる「経済学」の書物に触れたのは大学の教養課程以来だ。yoichiyy先生がブログ”おぺん”で紹介してくれなければ読むことは無かったが、高校生の頃にこの本と出合っていたら「経済学部に行きたい」と思ったかも知れないな。

ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する
作者: スティーヴン・レヴィット, スティーヴン・ダブナー, 望月衛
メーカー/出版社: 東洋経済新報社
発売日: 2006/04/28
ジャンル: 和書