魔術講義

Do what thou wilt shall be the whole of the Law.

“<大作業(Great Work)>とは相反するもの同士の結合である。それは、魂と神の、小宇宙と大宇宙の、女性と男性の、自我と自我ならぬものとの結合を意味するであろう”  

  アレイスター・クロウリー Magick Without Tears


自己と対局に位置するものとは何でしょう? クロウリーが示唆した<大作業>の定義は、セレマの実践的哲学を理解する上での重要な鍵となります。自己の対極にあるが故に、それは未だ補足不可能で曖昧な抽象概念、または形而上の「なにものか」であるはずです。セレマの実践哲学では、その対極を幾つかのレベルで想定しますが、究極的には自己の対局としての<消滅>がその結合の対象となります。

“ 無はこの法における秘密の鍵の一つなり。61とユダヤ人達はそれを呼ぶ。われはそれを8、80、418と呼ぶ。” 『法の書』第一章46節

61はカバラにおけるアインの数値であり、『トートの書』中に提示された<ナポリ式配列>ではアインは<零>の概念を表しています。いわば究極のとして、森羅万象が生まれくる源として、または回帰すべき源として仮説された逆説的非存在です。トート・タローの7番目の札<戦車>は、深淵越えを図示した突進のヒエログリフであり、またこの札に対応するヘブル文字ケス (数値8) は全て綴られるとその数値は418となります。また8は水平に描かれたとき<永久>を表すシンボルとなります。80はギリシャ文字のイオタとオミクロンを足し合わせた数値であり、セレマの体系では牧神Panを讃える際のを形成します(IO Pan!)。この場合、Iは直立する男根を、Oは深遠なる女陰を表し、Pan = 「全」を召喚する為の ”意志の下の愛” を示唆します。IO Panとは、相反物の和合によって無へと回帰する術式を表しているということになります。418はアイオンの術式であるAbrahadabraの数値であり、5つのAは五芒星を、残りの6つのアルファベットは六芒星を表し、正に冒頭に引用したクロウリーの言葉でいうと”小宇宙と大宇宙の” 和合を意味します。更に418はアイオンの主であるヘル・ラ・ハの数値であり、この神は<究極のTAO>として捉えるべき内在する至高神です。

OTOの標語でもある Deus est Homoほど容易に誤解され、人々に無視され続けるものはありません。私達が<大作業>に挑み、自己の相反物との合一を目指すとき、あるいは能動的に<消滅>の径に足を踏み入れるとき、私達は明確に「何」を目指し、「どこ」へ向かおうとしているのかを十分に把握していなければなりません。

この度、OTO Sky Goddess Nu Lodgeのご厚意で、大阪にて<大作業>の全体像を俯瞰し、その径を解説する特別講義を行うことになりました。ここでは<大作業>にまつわる誤解を解くと共に、クロウリー、あるいはクロウリー以後の現在進行形の魔術について解説したいと考えています。例えば、クロウリーの代表作でもある『虚言の書』(The Book of Lies)に付与された数値は、なぜ深淵の大悪魔コロンゾンの数値である333なのか? そもそもクロウリーが定義した<大作業>は人間たる<第一質量>を、どのようなプロセスによって何に変成することを目的としているのか? アイオンの主ヘル・ラ・ハとは、果たして単なるホルスの一形態であり、古きエジプトの神でしかないのか? といった事柄について、なるべくシンプルに解説したいと考えています。Deus est Homoの真義は本来至ってシンプルで、アジアでは数千年の歴史を持つものです。そこには唯一絶対で支配的な人格神などは存在しません。そのような神は既に死にゆく運命しか残されていないのです。

講義に参加を希望される方は、問い合わせ先のメール・アドレス経由で予約して下さい。講義終了後は質疑応答やリラックスした座談会的な時間ももちたいと思います。皆さんにお会いできるのを楽しみにしております。


Love is the law, love under will.