ながおかドキドキ通信


   小説「光る砂漠」ー夭折の詩人矢澤宰の生涯ー
  宰の病室   
 一日3時間の養護学校の授業を終えて病室に戻ってきた宰。学生服から寝巻きに着替えながらベット脇のサイドテーブルに視線をやる宰。そこには母、レウからのハガキが届いているのに気がつく。手にとってハガキを見る宰。内容は、祖父が風邪をこじらせて寝込んでしまったことなどが記されている。ハガキを手にしてベットに横になる宰。天井を見ながら祖父との思い出にひたる。「じいちゃん・・・」とつぶやく宰。そこに吉住先生が入ってくる。「宰君。歩いて学校へ行った感じはどうだい」と吉住先生。「はあ・・・」と気のない返事の宰。「どうしたんだい。熱でもあるのかな」と吉住先生は宰の額に手を当てる。「熱はないようだね。学校で何かあったのかい」と吉住先生「先生。オレり家のじいちゃんが風邪こじらせてねたきりになったみていなんだ。オレ、じいちゃん子だったんではや家に帰ってじいちゃんに顔を見せてやりてえがあろも・・・。今のままじゃだめらろうと思うと・・・」と宰。「宰君。辛いだろうが我慢するんだ。おじいちゃんにかわいがられた君だからこそ家に帰って励ましてやりたい気持ちは分かるが君の体も病気が完治するかどうかの大事な時だ。かわいがってくれたおじいちゃんのためにも今は一日でも早く病気を治すことを考えなければね」と吉住先生。
 「・・・」宰の顔は曇って涙があふれそうになる。「我慢するんだ。ところで学校へ歩いて行くようになっても尿の具合もいいようだよ。遠間先生から聞いたけど一生懸命勉強しているんで成績もいいんだったね」と吉住先生。「オレ学校へ行っている時や勉強している時なんかは自分が病気だということを忘れてしまうみていなんです。何かちょっとおかしいですよ」と宰。「正直、僕らも君が学校へ行くようになってから病気の具合もよく回復力には驚いているんだ。もう少しの辛抱だから頑張るんだよ」と吉住先生。「はい。わかりました」と宰は素直に吉住先生のいうことを聞いた。「色々考えることもあって大変だろうけれども今は体を休めなさい」と吉住先生は宰をいたわるのだった。

(続く)
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