地域伝承における「塚」のタイプ

 どれほど日本列島には塚があることか。古墳や富士塚など名だたる塚だけでなく様々な塚がこの島国を埋め尽くしている。あるいは埋め尽くしていた、というべきか。
世界各地に塚はある。アメリカの東海岸にもインディアンが造成した「塚」がマウンドという名称であちらこちらに残る。しかしながら肝心の伝承者たちの文化が抹殺されてしまい、考古学的遺物になっている。
 日本の塚の独自性は口承伝承がかなり残存することにあるのだろう。だからこその多様性である。

 その例証として、いま、手元にある柳田国男編纂の『日本伝説名彙』の「塚の部」から、塚の分類を引くとしよう。


糟塚
すくも塚
粕塚
味噌塚
飯塚
飯盛塚
飯籠塚
糀塚
餅塚
一夜塚
一日塚
千駄塚
百匹塚
百目塚
百頭塚
百塚
百八塚
千人塚
千人壺
千人椎
旗立塚
白旗塚
旗塚
将軍塚
大将軍塚
竜宮塚
御椀塚
椀貸塚
椀塚
膳塚
納戸塚
桜塚
椀久塚
皿塚
児が塚
稚児塚
小児塚
道童塚
産子塚
子持塚


 まだ、続くのだ。ご存知のように柳田国男は塚マニア、というより塚のオタクであった。とりわけても、彼の偏愛し、追求した塚は十三塚であった。