老化現象

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 http://d.hatena.ne.jp/neodenjin/20060829#p1

で、驚いたんだけど、プログラマの募集年齢の上限が結構高いのね。だいたい35歳とか40歳くらいまで、となってる。

おかしいなあ。以前、俺が30過ぎになってから転職したりしてた頃には、募集年齢の上限が30歳位まで、とかいう制限が多くて、もうオレ、ヤバイかなあ、とビビってたんだけどね。

つまりこれはどういうことかというと、若い(ゲーム)プログラマが全然育っていない!ということに相違ないわけですよ先生!!即戦力になりそうな経験者の層が、われわれ30代後半から後はぐぐっと薄くなってしまっている?ということなのでしょう。

 これは言われる通り年齢が下がれば下がるほど即戦力にならないからですが、実際近年の大量の人材流入と質の低下でで「きちんと組める」よりまだマシな「とりあえず組める」という人すら少なくなってしまったからかなぁと思います。
 プロジェクトに新人(や新人に近い人)をアサインしても成果を期待しないのが普通ですし。
 「教育目的」よりは「即戦力」ばかりなんですよね、求められているのは。小さい開発会社なんて特にそうです。(中には30代でもまともに組めない人とかいますけど)

確かに俺らの世代は恵まれてた。

10代の時にはマイコンブーム、そしてファミコンブーム。20代ではX68000とゲーム産業の最盛期を経験。そしてそのまま一気に次世代機の競争による盛り上がりと2Dから3Dへの飛躍。

ただその場にいるだけで、技術的な基礎から製品の応用までいつの間にか身についていたという、稀有な世代なのかもしれないですぞ。

 言われるとおり、周囲はまだドット全盛期。多少へぼくても「こういうゲームを創ってみたい」と思って手を出せば個人でも(劣化版であろうとも)創ることができたのですよね。真似ることが比較的難しくなかったというか。多くの場合は模倣から始まるのは当然で、周囲のゲームを見てあれこれ考えられる土壌がそろっていた、と思います。2Dゲーム事始めなんて、絵を用意して座標を指定すれば良いわけですから、始めやすいという利点はとても高かったと思います。
 これは僕らの時代まで続いていたのではないかなぁと思いもします。小学校でファミコン→中学ではスーパーファミコン→高校でPS/SS、WindowsだってDirectDraw全盛期、周りはまだ2Dが主体だったと思います。まだまだポリゴンもカクカクしてて汚かったですしね。
 が、

しかし今や、自分で何かソフトを作るなんてことは馬鹿らしい時代になってしまった。クオリティの高い製品は町にあふれ、X68000の1000倍の性能のパソコンが1/10の値段で売られていて、当たり前のようにGUIの乗ったOSを、幼稚園児でもマウスでクリックして扱えるわけで。

プログラマ(の卵)にとって何のきっかけも与えられない、こんなプアな環境で、我々のような肥えた霜降り牛のような優秀な*1プログラマはなかなか育つはずもないのであって…。

 いわゆる今の「ドラクエ」や「FF」を見ても「これ創れるんじゃないの?」って誰も思わないですよね。PS2のゲームなんて個人で創れるとは思えないものばかりです。「こういうのを創りたい」と思わせても、そのとっかかりはどこにもなくて、理想ばかりがムクムクと成長するばかりで。
 そうして「ゲームを創りたい人」というのはドンドン入ってくるわけで……。これって凄い「理想と現実の剥離」だと思っています。
 昔は「こんなのが創りたい」→「とりあえず創ってみた」→「ゲーム会社で力を合わせればもっと凄いものができる?」→「勉強すればもっともっと凄いのがつくれる?」みたいな思考ができたのですが、
 今は「こんなのが創りたい」→「どうやって創るの?」→「会社に入れば創れる?」→「実力が伴わない/勉強しかたもわからない」
 みたいな感じになっているんじゃないかなと。
 結果として掘り下げて「なぜ創りたいのか」という考えを持つ人も少なくなって「どうしてゲームを創りたいの?」って訊いてもまともな答えが返ってこないこともしばしばです。なので、どういう方向の勉強をしたいかもわからなくて、勉強もしないので実力もつきません。

 それに加えて現場に入っても(創りたい意欲があっても)その実力が伴わない場合はまともな部分を組ませてはもらえないでしょうし、基本的に技術力を持った人間は忙しいので基礎も何もなってない新人に手取り足取り教えてあげられる余裕もありません。(これは開発工数の増大も影響しているかもしれませんね)
 新人が一ヶ月で駄目コードを書き上げれば、上の人間は一日とか数時間でもっと良いコードを書き上げてすませてしまうでしょう。
 そんなことが続けばやっぱり育っていく新人というのは少なくて、大抵がどうして良いかわからずに脱落していく訳で。他の会社に放り出されても技術力がないので、やはり同じような末路を辿ったり……。
 個々の会社に教育係というか、少なくとも人を育てる余裕があれば良いのかもしれませんが。そのぐらい実力がある人は日々忙しくしている訳で。
 業界的に育ちにくい土壌を創ってしまったのかなぁ、という気もしています。