子離れのできない親.

今日は別の友人の話を聞いていた.娘の就職活動にいちいち口を出し,自分の詳しくない分野への就職は反対,娘が面接に落ちれば「それ見たことか,あんたなんかがやっていけるわけがないだろう」と勝ち誇り,「だから貴女は私の言う通りにすべきなのよ」.娘が言うことを聞かなければ「こんなに貴女のことを心配して考えているのに,どうしてそれが分からないの!」


健さん,私自信が持てません.私は我慢の足りないワガママ娘ですか?私は親の言うことを聞けない悪い子なんでしょうか.」


ここにもいたか・・・子に執着し,子をコントロールできないと不安で堪らない親の下に生まれてしまった,犠牲者が.
親離れできない子供が問題にされることは多いが,より深刻なのは子離れが出来ない親の問題だ.彼らは平気で子の人生を潰す.そして潰された子は,自分が親になったときに同じことを繰り返す.その心理的な種明かしは簡単なことで,親に対して自由に振舞うことの許されなかった子は,自分が自由に振舞う対象として,無力な子供を食い物にしてしまうのだ.無論,本人にその自覚はない.自分が正しいと思うことを,息子や娘のために教えてやろうとしているのだと信じていて,それが単に支配欲・所有欲を正当化するための欺瞞だとは夢にも思わない.だから親になった子は,「私がお前のことをこんなに考えているのが分からないのか!」と,自分の親と全く同じ台詞を吐いてしまうのである.


僕が彼女に言うべきことは唯一つ.


「とにかく家を出ろ」


その一言だけだ.

あっちはあっち,こっちはこっち.

夕方頃,「オトシタカケラ」の「彼女」から電話.


「面白いこと教えたろーかぁ?」


とビミョーなテンションでそんなことを言うから,軽く不安になりながら「何や?」と促すと・・・


「今ツワリでしんどいねーん」


え?あ? へー! そら良かったなぁ! ちょっと計画性に欠けてるけどなぁ,まあええんちゃうん.入籍確定やな!おー,良かった良かった.


電話を切って,思う.彼女の恋人が事故死したとき,アイツの人生はどうなるんだろうとばかり考えていた.それが,妊娠だもんな.8年経った,ということなんだな.


どんな悲劇も,人は乗り越えてしまう.
彼女は,それを体現している.