KJ-monasouken’s diary

昔「モナー総研」と言うスレ紹介ブログやってた人のブログ。いまはTwitterの活動がメイン。

「『小泉以前』に戻すのか」ねえ・・・

本日(2/18)の日経新聞の第5面で「本社コラムニスト土谷英夫」なる人がこんなことを書いてます。

小泉改革」はマーケットフレンドリーだった。小泉首相の最初の所信表明演説に「地球規模での競争時代にふさわしい、自立型の経済を作る」という一節がある。世界が一つの市場に統合されつつある「グローバル化」の現実を踏まえ、官業民営化や規制緩和など「市場指向の改革」が必要と言う姿勢で一貫していた。

市場も応えた。日経平均株価は2003年に底を打ってから小泉政権中は右肩上りだった。ところが小泉降板後、安倍晋三政権で勢いを失い、後はずるずると。先月は外国人投資家の日本株売り越しが最高になった。


まあ、日経が「企業が買収防衛策を取るような閉鎖的な市場は外国人投資家に見捨てられて云々」と言う論調を展開したがっているのは今に始まった話でもないし、「小泉改革」を正当化したがるのもいつものことである。


しかしなあ。何が気に入らないって、日経平均株価のグラフを2002年から書いてるのが気に入らない。



小泉シンパにありがちなことだが、なぜか政権後半の上昇期だけ強調したがる(というか、本気で忘れてる?)傾向があるような。

ここのサイトをみても分かる通り、小泉政権誕生時の日経平均は14,000円程度で、2002年に入るまでに4,000円程度急落しているわけで。それを無視するのは都合が良すぎでは。


政権中にバブル後最安値をつけた首相に「市場も応えた」ってなあ・・・・


それに、そもそも世界経済の動向を無視して、国内政治だけで株価が決まるような書き方も乱暴すぎるのでは・・・・


試しに、小渕首相以降の各首相の在任期間について、TOPIXと米国の株価指数SP500の推移をならべた折れ線グラフを作ってみた。
青い線がTOPIX、ピンクの線がSP500です。

もう、これだけで日本の株価変動のかなりを説明できそうな気もしますが・・・

比較的短い在任期間ながら、ITバブルに助けられたとは言えほぼ全期間右肩あがり、政権後半ではSP500を上回って推移している小渕首相の優秀さが目立つ。安倍首相も悪くはないですね。


小泉首相は期間が長い割にほとんどSP500に連動しているだけのように見えますね。ただ、政権後半(というか末期)の2005年では米株を上回る伸びを見せており、「構造改革の成果だ!」と喜ぶ向きもあるかもしれませんが・・・


ただ、この2005年と言うのは、為替レートが大きく円安に振れた時期でもある。下のグラフはドル円レートのグラフで、上に行くほど円安ってことですな。

円安に振れるってことは金利の安い日本で資金調達して海外資産へ投資する流れがうまく行ってたってことでしょう。円安になると輸出企業に有利で景気もよくなるし、FXで主婦が大儲けする、っていう景気のいい話も出てきます。


サブプライム問題以降そういう流れが逆流して今の株安・円高につながってるわけで・・・


試しに、さっきのグラフのTOPIXをドルベースにしてみます(つまり、TOPIXを(ドル円レート/100)で割ってドル建てのTOPIXとしました)。日本で株が下がっても、円高が同時に進んでいるなら、外国人から見て日本株は高いまま、と言うことになります。逆もまた真。その状況を確認するために、ドルベースで見た日本株の水準を見てみよう、と言うグラフです。


ドル建てで見ると、やはり小渕政権時代が一番よく見えますね。小泉首相は、円建ての時と比べると冴えない。悪くはないが。直近の福田政権での株価下落は、まあ急落には違いないがやや緩やかになって、ほぼSP500と同じような動きになる感じですね。まあ、全体的に、政治要因がどうこうというより世界最大の経済大国の景気に引っ張られて上下してる、と言うのが実情では。


これもあくまでざっくりとした分析に過ぎないし、ユーロとか他の通貨もあるのにドルとの関係だけで見ていいのかとか突っ込み所はあるでしょうが・・・・とりあえずはご参考ってことで。2002年からの日経平均だけを根拠にして政治を語るよりはまともな視点だと思いますし。ヤフーファイナンスで簡単にとれるデータだし、計算も四則演算だけなので、興味があれば皆様も見てみてください。読む人によっては「何を今さら」って感じのエントリかも知れませんけど、夕刊フジやゲンダイならともかく、日経がこんな印象操作的な記事を書いてる以上、突っ込みを入れずにはおれず・・・・


日経にかぎらず、日本の新聞って政治よりの話をしだすと駄目ですな。


 日本の場合、財政政策も金融政策も余裕がないのは確かなんだろうけど、そうかと言って構造改革がどうとか言う話にいくのはなんか話が明後日の方向に行ってる気がしてなりませんが。少なくとも株価動向と結び付ける話としては違和感がある。短期的な景気とはあんまり関係のない話だし、企業収益さえ回復するのなら買収防衛策をとろうが市場が閉鎖的だろうが株価は上がるでしょうね。買収目的で買う投資家なんて限られてるだろうし、普通に考えれば中国やインドよりは日本の方が透明性が高い市場だろうし。それなのに、パフォーマンスが中国、インドにぼろ負けってのは、米国が景気後退の震源地となっている今の状況下ではむしろ米国との連動性が高いことが裏目に出ているってことかも。


正直、小泉首相を評価するとすれば、景気回復をもたらしたと言うより、景気回復局面になるまで政権を維持したってことでしょう。
これもまあ、難しいことには違いないですからな。