センセイ・アラヤマの文庫で読める単著は全部読んだ俺が来ましたよ。
 『十兵衛両断』『魔岩伝説』『高麗秘帖』『魔風海峡』の順に。
 感想? えー、いい加減にして欲しい*1。どんな顔をしてこんな事を描いているのかもう分かりません。
 分かった事を箇条書きに。

  • 超朝鮮。好きなのか。好きなんだろうな。
    • メイゼルたんんもかくやのサドデレっぷり、と言いますか、高度に発達したファンはアンチと区別がつかない、と言いますか。愛するのに愛される側の事情なんて一々かまっていられない、そんな激しすぎるサラン。朝鮮の人には読ませられない。
      • 朝鮮を残酷の大地としか思っていない節がありますね。ギャグのような陰惨な死に様*2、猟奇的な刑罰*3、死体と見るや蛆、日本軍・明軍の残虐行為活写etcetc。ノリオ南條のウェットで心情主義的な残酷と違う、ドライで即物的な残酷。
  • 平等命。
    • 隆慶先生はあまりにもF、自由の戦士、フリーダムファイターガンボーイでありますが*4荒山徹が憎むのは不平等だけです。あまりにもFの象徴と言うべき前田慶次が捨丸をこき使う事になんの疑問も呈されないのが隆慶世界。日記で倭奴倭奴連呼する李舜臣が倭奴も同じ人間と考えてしまうのが荒山世界。
      • 時代小説の宿痾ではありますが、なので、作家の考える開明的な人物、に主人公側がなりがちです。それから荒山先生明らかに明治以降な語彙を使ってしまいがちで、そのあたりでうーん、と思わなくは無いです。身分制、とか、差別社会、とか。しかもそれがメインテーマ。その手は悪しゅうござるとも思うがそれしか言いたくないなら止むを得まい。
        • Fは個人の資質*5だけれどE*6は社会制度の問題だから、時代的にんー? となりがち。*7
  • 仏教をなんだと思っているのか。
    • 身分制社会の支配原理としての儒学を退けた時に残るものであるというのはわからなくはないが、にしてもあまりに魔法。仏教をリベラリズムと結びつけるのも極めて今風ですが、まあそれは難癖か。
  • バトルヒロインも好きすぎると思う。
    • くノ一って言うんでもない、というのは珍しいのかも。貞婦で戦士、というのはなんだ、戦う変身ヒロインか。
  • 小説としては実はそこまで巧みではないよね。
    • 何の問題でもありませんが。
      • 放っておくと何ページでも設定説明だけを続けてしまいがちですね。
      • そこに一番イカレたものがあるので良いのですが。
    • そんな奴いるって一言も言ってなかった庇護者突然登場しすぎ。
      • というのは主人公たちの超人化に伴う止むを得ざる処置なので、別に良いのですが。
    • 総じて創作は技術ではない、と分からせてくれます。
  • なんだかんだで大好きです。
    • 「太閤呪殺陣」が一番好き。

*1:褒め言葉。

*2:根津甚八とか。

*3:剖棺斬屍とか陵遅処斬とか。

*4:参考http://internet.kill.jp/wiki/index.php?%BE%AE%C0%E2%2F%C5%C1%B4%F1%2F%B0%EC%CC%B4%B0%C3%C9%F7%CE%AE%B5%AD#g30c9bb6

*5:畢竟、「俺の藩だ。俺が潰して何が悪い。」(『柳生非情剣』「逆風の太刀」)という大迷惑な考え方が隆慶一郎の理想なんだもの。

*6:equality。

*7:尚、フランス共和国の標語、自由・平等・友愛は英語で言うとliberty、equality、fraternityなので正確にはLのはずである。しかしここは「男の子はFから始まる言葉が大好き。freedom、fighter、fuck、Finland(北欧)」という俚諺に基づきFと称してしまいたい。