Pと大阪で会ったとき、大阪の人はフレンドリーで親切だなあと思った。Pも同意していた。フィンランド人の彼は、英語は母国語のように流暢に話すが(ほんっとうに流暢である)、日本語はまったくできない。その晩泊まるホテルは、新大阪駅から徒歩5分という場所にあった。一人で行かねばならなかったのだが、スーツを着た二人組の男性に、持っていたホテルまでの簡単な地図を見せたら、ホテルの看板が見えるところまで一緒に来てくれたという。ええ人らや(あっているだろうか、この関西弁)。

Pと夕飯を食べに行くために梅田までタクシーに乗ったときの運転手さんも気さくな人だった。「和食でなんかおいしいところご存知ありません?」と聞くと、あそこの寿司がいいとか、色々教えてくれた。二人ともお寿司の気分ではなかったので、何にしようかなどとバックシートで話しているうちに梅田到着。運転手さんは、「あそこの信号のところで止めますんでね。ここら辺なら中華でも和食でもなんぼでもありますから」と笑っていた。

で、結局焼き鳥のお店に入った。そこでは、給仕の元気な女の子が、ニコニコしながら片言の英語でPに話しかけるのだ。英語としては何を言っているのかはよくわからないのだが、やたらチャーミングで可愛い。私がお手洗いに言っている間に支払いを済まそうとしたPが、「Do you take credit cards?」と彼女に聞いたらしい。すると「カードで払う?」と聞き返したらしく、Pが「card de hello?」と答え(何を言ってるんだ、P)、"ノーノー、ノット・イングリッシュ・ハロー。はらう, ジャパニーズ、ペイ"などというやり取りをした、と後でPがおもしろそうに語ってくれた。

私が席に戻ったときも、「アイ・スタディ・イングリッシュ・ナウ。マイ・ファイト」と言っていて(がんばっているという意味なのだと思う)、Pが"Oh, you're studying English now? Good!"と答えると、"ぐっど? オー、サンキュー"という会話をしていた。店を出るときも元気に「サンキュー、グッバイ!」と言い、最後までニコニコして感じの良い人であった。"Wasn't she charming? I love people like that. So pleasant and friendly."と言うと、Pも同感だと言っていた。

帰りのタクシーの運転手さんも、ずっとむすっとだまっていると思っていたら、降りるときには「サンキューベリーマッチ!」と手を振ってくれた。

知らない町でこういう人たちに会うというのは、実に気持ちのいいものであるわ。

リンガルボタンにこすれて出来た口内炎は相変らず痛い。Pと食事をしながらでもワックスを付け足す始末である。"Excuse me"と後ろを向いて、こそこそとワックスをつける私。しかし、彼は非常にunderstandingであった。彼自身は、中学生だか高校生だかのときに、上だけ2本抜いて矯正したらしい。"I know what you are going through."と痛みにはsympatheticであった。
こんな口内の状態であるが、Pと話すとバトルになるくらい声を大きくして言い合うことが多く、余計に大変であった。"See, that's where you're wrong, P! いたっ、Hold on. Gotta put on some wax again."と言い、また後ろを向いてこそこそとワックス装着。その間だまって待っているような男ではないので、またとうとうと持論を述べ始め、私は何を言いたかったのかわからなくなる、というパターンであった。くっ。