まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

変態王子と笑わない猫。

変態王子と笑わない猫。 (MF文庫J)

変態王子と笑わない猫。 (MF文庫J)

  • ストーリー

頭の中身が煩悩まみれな高校生、横寺陽人は、建前ばかりで行動する自分に嫌気がさしていた。
友人から“いらないものを誰かに渡してくれる”猫の像の話を聞き、試しにお参りをしてみることに。
夜、像のある丘に登った陽人は、本音を隠したがっている少女・筒隠月子と出会い……。


第6回MF文庫Jライトノベル新人賞<最優秀賞>受賞作。
タイトルとイラストに惹かれて読んでみたのですが、いやあ面白かった。


少年と少女が謎の力をもつ猫の像に願いをかけて、物語ははじまります。
本音が欲しかった陽人が失ったのは建前で、建前が欲しかった月子が失ったのは本音でした。
初めのうちこそ建前を失った陽人の変態っぷりを楽しむドタバタギャグでしたが、建前でがんじがらめになったお嬢様・小豆梓との出会いで物語は思わぬ方向へ。
本音と建前、どちらが欠けてもだめで、どちらも揃っていても言葉に出せないことがあって、それでも言葉にしないと前に進めない。
月子の言葉が胸に染みます。
肝心なときに肝心な言葉を言えない主人公には何度ももやもやさせられました。
というか女の子に関する悩みを解決するときにもう片方の女の子から発破をかけられないと行動できないってどういうことなの。
あと気付け。ラブコメ主人公にこんなこと言っても無駄だと思うけど少しは女心に気付いてあげてください。


ヒロインの2人はどちらも実に可愛いですね。
月子は本音が出せなくなっているのでいつも表情が変わらないのですが、その無表情の下に時々感情の動きが垣間見えて、それがたまらなく愛らしい。
後輩ということで丁寧語も大事なポイントですよね! 冷静な丁寧語での悪口っていうのはどうしてこんなに胸をくすぐるのでしょうか。神秘です。
一方の梓は感情豊かなツンデレっ娘で、ふとしたときに見せる無防備さや素直さがなんとも魅力的。
デレてからがさらに可愛くて素晴らしい。頭を撫でたくなります。
月子も梓も、いつまで眺めていても飽きない小動物のような可愛らしさがありますね。


なんともじれったい物語でしたが、読了感はとても良かったです。オチには驚かされたし。
ハッピーエンドなんだけど、どこかちょっとした淋しさがあったりして、ほんのり温かくなる終わり方でした。
続きがどうなるのか大いに気になりますね。楽しみにしています。


イラストはカントクさん。素晴らしかったの一言。
手を引かれて走る月子やパジャマ姿で涙目の梓など、見ていると思わずにやけてしまうイラスト揃いでした。