まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ドラゴンフリート戦記 神眼の英雄提督

ストーリー
西の守護龍メッサーを擁する神聖帝国によって、生まれ故郷の村を滅ぼされたステンカとラスラーン。
二年後、仇討ちを志して水夫となっていたふたりの前に謎の男が現れ、怪しげな依頼を持ちかけてくる。
依頼を受けて海へと出たステンカたちだったが、運悪く海賊船に捕まってしまい……。



ドラゴンと戦記ファンタジーが合体。何それ無敵じゃない? そんな期待感のもと手に取りました。
主人公が「神の眼」なんていうずるっこい能力を持っているわりにはあまり軍師ものっぽくはなく、わりと真正面から戦っていたようにも思えますが、海賊を率いて海戦をするというのは新鮮で良かったです。
全体的にキャラクター紹介の色が強かったので、本番はまだまだこれからといったところでしょうか。


故郷を滅ぼされ、帝国に復讐を誓う主人公ステンカと、その親友ラスラーン。
かといって帝国相手に喧嘩をふっかけるわけにもいかず、細々と水夫などをしていたのですが、このふたり、なんというか実に小物くさい。
特にラスラーンはひどいですね。生存能力は高いんでしょうが、自分本位な印象しか受けませんでした。まあ、好きだった女の子の仇討ちのため、と思えば少しは同情的にもなれますけど、相手の事情とかをまるで考えない小悪党っぷりは、どうにも好きになれません。
一方のステンカですが、ラスラーンほどではないもののやっぱりそこそこ自分勝手。行動力や決断力はラスラーンよりは弱いように見えますが、作中ではそれが逆にいい方に働いていました。
ステンカもラスラーンも、本質的には仲間思いで悪いやつじゃないと思うんですが……なんでこんなにムカつくんでしょうねえ……。
彼らに比べると、ヒロインにして女海賊のシェーラの方がよほど主人公っぽく見えました。海賊とはいえ、分かりやすくヒーローをやっていると思います。


ステンカと契約した自動人形ノーチェ、《大海竜》ガングートなど、個性的なキャラが次々登場。
このふたりだけでもものすごい戦力増強ですよね。まあこれから帝国と戦うことになるのでしょうから、当然といえば当然ですが。
今回はノーチェとガングートの力で無理やり押し通した感がありますけど、これからはステンカの計略にも期待したいところ。
それから気になるのはラスラーンの今後ですね。ステンカと袂を分かちそうな予感もしていますが、さてどうなることやら。


イラストはコニシさん。キリエが予想外のイケメンで笑いました。
守護龍のイラストを早く見てみたいですね。


ツィンカの再登場はあるのか。

GOSICK RED

ストーリー
1930年初頭のニューヨークにて、探偵事務所<グレイウルフ探偵社>を構えるヴィクトリカ
ある日、闇社会からの依頼人がヴィクトリカを訪れ、奇怪な連続殺人の解決を依頼する。
一方、新聞記者として働く久城は、とある有名精神分析医のもとに取材に向かっていた……。



私たちの! 久城と! ヴィクトリカが! 帰ってきたよ!!!!!
いやはや、まさか続編が出るとは思っていなかったので、発表されたときは飛び上がってしまいました。
最後まで追いかけたファンとしては、久城とヴィクトリカが会話をしているだけで震えるほど嬉しいのに……こんなのずるいですよ……!


舞台はマフィアが暗躍する1930年初頭、ニューヨークはマンハッタン。当時のアメリカを彷彿とさせるお洒落なワードがそこかしこに散りばめられていて、雰囲気は最高。
銀髪になったヴィクトリカは腕利きの私立探偵として裏世界で名を馳せ、久城は三流新聞の記者として街中を走り回っています。
前シリーズのラストで一応恋人としてくっついて、ちょっとは関係に変化もあるのかなと思いきや、ふたりの間の会話はヨーロッパの図書館塔とさして変わらず。「ああ、変わっていないなあ」と思わずひと安心、ほうっとため息をついてしまいました。
それでもやっぱり、「大事な妻」ということばが出てきたときにはドキッとしましたね! 前々からではありますが、久城のちょっとした動作のひとつひとつにヴィクトリカへの深い愛情が感じられて素敵でした。
ヴィクトリカの方も、もちろん普段はあんなですが、ふとした瞬間に久城に頼る姿を見せて、それが凄まじく可愛らしくて、こんちくしょう仲良き事は美しき哉!!


今回の依頼人は闇社会のボス。久城の甥っ子を人質に取られ制限時間を設けられながらの緊張の推理劇に手に汗握ります。
特に共通点もないように見える連続殺人事件に潜む秘密。やがて明らかになる凶悪な陰謀。
あくまで論理的に進めるミステリーの部分に、少々オカルトチックな要素を乗せる独特の味わいは、相変わらずの奥深さで大変好みです。古き大陸から新天地に降り立っても、まだヴィクトリカはオカルトから逃げ切ることができていないのですね……。灰色狼の血の業というものでしょうか。
事件の真相が明らかになってからの、さらなるひと悶着にまたドキドキさせられました。最後の最後までどちらか分からない恐怖の一瞬。お見事です。


もしかしたらこの1冊だけで終わるかもしれないと思っていたのですが、どうやら続いてくれるようで嬉しい。
どうやらとんでもない人物が敵に回りそうですけれども、久城とヴィクトリカは、次の嵐をどのようにして乗り越えてゆくのでしょうか。
もうもう、溢れる期待感で胸がいっぱいです。続刊も大いに楽しみにしています。


ちょっとグレヴィールさん何やってるんですか。