モンゴル総括。

今度はできるだけ感傷的にならず、そしてできるだけにごさず総括を。今度は自分自身にむけて。
次の進路として具体的に何を始めるのか、本当に国際協力に関わりたいのか、どんな方法で関わりたいのか、現場に飛び込んだら何か見えるんじゃないかと期待してモンゴルワークキャンプに参加した。
テイクだけでなくギブもしないと駄目ってことはなんとなく気付いてながら、飛び込んだらどうにかなると思って参加した。たぶん、その甘えた姿勢が、結局自分自身を追い詰めることになったんよね。

私はウランバートルに寄ることなく、空港から直接畑があるキャンプに入った。見渡す限りの草原とか、高すぎる空とか、掬えそうなくらいの数の星が映るそこは、ちょっとした宇宙みたいやった。今まで、人の手で作り出された街を見てでしか、外国に来たっていう実感したことがなかったから、そこがモンゴルやなんていう実感は全くなかった。
そのちょっとした宇宙で、初日から子ども達のキラキラした笑顔に出会ってしまったもんやから、さっそく自分の考えてることがちっぽけに感じた。こんなに美しすぎる大地ととびっきりの笑顔があれば、生きていくには充分じゃないないのかって。右も左も前も後ろも、そんなのどうでもいいかもって。
おっとアブナイそれじゃ来た意味ないからしっかりしなければ…と思いながら初めての夜、眠りについたのを覚えてる。

翌日から本格的に前半1週間のワーク生活が始まった。ちなみにその生活は…

07:00ころ…ゲルが東風でバタバタいう音で目覚め、歯ブラシとトイレットペーパーと日記を持って、丘に座る。日の出を待つ。
08:00ころ…朝食。チョコクリームを付けたパンと使いまわしのTEAバックのお茶でお腹を満たす。
09:00すぎ…朝ワークへ。徒歩5分ほどの畑へ向かう。これでもかってくらいの芋の収穫。
13:00ころ…昼食。おかわりは欠かさずぺこぺこのお腹を満たす。
      休憩。
15:00ころ…午後ワークへ。
19:00ころ…夕食。もちろんおかわりをしてお腹を満たす。
      休憩。
22:00ころ…ウォッカウォッカウォッカ
01:00ころ…いい具合に楽になり眠りへ。

毎日砂だらけ。爪は真っ黒。手足はしわしわ。キッチンでは蝿にかこまれ、ゲルは日に日に臭くなった。体も臭くなった。畑で土まみれのにんじんを食べた。1人で丘で転がった。オギー(先生)やみんなとバレーボールした。絵本でしか見たことないよな虹ではしゃいだ。相撲技をよくかけられた。ムギ(24歳)には負けたけど、ガンスク(14歳)には勝てた。1時間半くらいかけて湧き水のところへ行き一度だけ髪を洗った。手作りのディスコで子どもたちとおもいっきりダンシングした。夜は草の上でおしっこした。ウォッカじゃない乳臭いアルヒ(酒)も飲んだ。たまに酔っ払った。真っ暗な中で子どもとあっちむいてホイした。蝋燭囲んで日本人メンバーと話し込んだ。オギーとギリギリの英語で話し込んだ。ゲル台に転がって流れ星をみた。男の子がサッカーしてるのを応援した。捌いた山羊でパーテーした。


こんな感じ。

その二日目、たくさん(モンゴルにしょっちゅう出入りしている70歳台日本人男性)から聞いたモンゴルの現状のお話。
モンゴルは92年に社会主義時代を終え資本主義経済に変わり、同時にソ連からの援助が無くなり生活が苦しくなった。それ以来モノの奪い合いがあちこちに生じているという。驚くことに子どもまでが奪われる立場にあり、大人が子どもを守らないことだって普通に起きていると。モンゴルで確実な支援のルートを作るのは難しく、今できる最も確実な方法は直接子どもに渡すことだとおっしゃった。あんなにキラキラした子ども達の笑顔の向こうに、そんな厳しいモンゴル社会があったことに正直ショックで、子ども達との接し方に頭を悩ました。一時しのぎにしかならないかもしれないけど、同じ一時しのぎなら後々子どもたちの元気の素になるような思い出を作らないといけないんやろうとか、でも私が自分のために来たとか、実は子どもが苦手ってことだって、すでに子ども達はお見通しじゃないやろうかとか、そんなことが頭の中をぐるぐるし出して。結局私は一歩引いた位置から、子どもとまっすぐ向き合ってる他の日本人メンバーを見ながら、ほとんどの時間を過ごすことになってしまった。

今回はボランティアやからこんな私でも許してもらえないこともないかもやけど、頭で考えることより瞬時の反応が求められてると常に感じた。ホントにこんな仕事につきたいなら、お金もらって仕事するんやったら、もっと何か自分が与えられるものがないと駄目やろうし、知識だって無さ過ぎるやろうし、何より今の私ではメンタル的に厳しすぎるとも思った。
自分の足りてないものにたくさん気付けた。

今回の3週間でよくわかったけど、私はたぶん人間が一番怖い。モノより動物より自然より何より人間に一番敏感であるし、人間が一番私をグサグサ刺したり傷つけたりするやろうから。何言われるかわからないし、何否定されるかわからないし、何考えてるかわからないし。やから人間対象でなく、開発系のワークショップとかがあったらそっちに行ってた気がする。でも今回、このワークキャンプに参加して人間にはまってしまった気がする。知らない人間だらけのところに、しかも対象が子どもたちというワークキャンプに1人で飛び込んで、毎日人間と向き合うことで苦しんだりもしたけど、最後は人間に救われた。愛しいと感じる人をたくさん作って、踏み出してみることの快感を知って、視野がどんと広がって帰ってきてしまった。

だから今…人間と(できればいつかは子ども達と)向き合いながらできる仕事に魅力を感じてる。そのために必要なことはいろいろあるやろうから、その準備を始めようと思う。向き合うための道具をそろえないといけない。語学だとか、知識だとか。メンタル的にも鍛えないといけないだろうから、人間と向き合う活動に参加して少しづつ慣れていきたい…。

もっと具体的につめていくことが、しばらく私の生活の目標になる気がしてる…。