イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

グラモフォン フィルム タイプライター

フリードリヒ・キットラー、筑摩書房。グラモフォン(蓄音機)、フィルム、タイプライターという1900年代に登場し、燎原の火のごとく時代を席巻したメディアテクノロジーについての論考。覚悟はしていたが、堅牢強固なる本だった。基本は文化社会学である。新しいメディアの登場とそれに伴う認識・社会構造の変化。それについて述べている。
しかし、凡百なメディア論との圧倒的な差は、その文学的咆哮(もしくは芳香)にある。圧倒的な知識に裏打ちされた、適切かつショッキングな引用の数々。詩的かつ私的な言語によって綴られる、窒息寸前の深度までもぐりこむ洞察。精神分析学・戦争史学・技術史学・文学……。もはや学際という言葉すら陳腐な言辞に堕す広範な知識のカバーにはしかし、1910年代、第一次大戦の萌芽を孕み、この現代へと繋がるメディアの一般化が始まった時代にしっかりと腰をすえることで、強烈な安定性を持っている。
再三、筆者は言う。タイトルにある三つの発明で、文学は死んだのだと。(個人的に)最後の文学であるピンチョンを多数引用するのも偶然ではないだろう。全てはメディアという可変・可加工なものになり、「唯一の私」「唯一の世界」は消え行く残響に帰る。その主張の説得力は、西洋智の限界がイラク戦争で露呈し、それでもなお資本主義によるグローバリズムという名前の押しつぶしが刊行される現在にこそ意味がある。
なにしろ、インターネットによる政府政治の希薄化まで予言しているこの本は、20年前に発行されているのだ。技術文化論という、高速で発展していくジャンルであるがゆえにその腐敗速度は尋常ではない領域。その領域で、20年前の本術がこれほどのスキャンダルを読者の心に呼び覚ますということがどういうことなのか。必読すべき傑作。

白き刃の継承者

西上柾、JIVE。つうわけでメガテン200Xのリプレイ。トキタ先生が西上さんに丸投げしているおかげで、非常に安心して読めるデスよ。ヒロインの使い方や話の構造なんかが、非常にスマートかつメガテンらしいハード&ダークネス。レール引いてないところにど根性でレール引く気合がたまりません。でもやっぱり色々ハウスルールは導入されてたよ。確かになぁ、手入れないといけないところは多すぎ、メガテンは。でもまぁ、スッゲおもしれ。公式NPCによる必要以上のリソースハックもないしね。あとイラストもいいし。とてもいいリプレイだと思います。