『封印再度』 森博嗣 講談社文庫

 こう、アレですよ、森の小説はミステリとしては結構うまいんですが(今回で言えば凶器の処理の仕方とかね)、登場するキャラクターたちがあんまりにも魅力がないんで、読んでいて楽しくないんだよね、全然。
 キャラクターの魅力だけで言えばおかゆまさきの方が断然上手いと思うよ、俺は。

 『グスタフ・マーラー 愛と苦悩の回想』 アルマ・マーラー 中公文庫

 小栗虫太郎の『完全犯罪』や笠井潔の『バイバイ、エンジェル』でも使われ、ミステリファンにも馴染み深い作曲家・マーラー。そんな彼の奥さんだったアルマ・マーラーが当時を思い出して書いたマーラーの回想録。
 前半では恋人時代のエピソードを中心に一緒にオペラを聴きに行ったときの感想などを綴ってある。非常に仲が良いので、「いちゃつきやがって、このくそどもがっ」と腹をたてつつも読んでいた。
 が、後半どんどんマーラーの体調が弱っていくと、それを必死になって看病するアルマの姿が健気で健気で非常に泣けてくる。久々に『大地の歌』を聴きたくなってくる、そんな1冊。