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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2009-06-17 化学物質過敏症の病名登録について

[]化学物質過敏症の病名登録について 化学物質過敏症の病名登録についてを含むブックマーク

毎日新聞にて、■化学物質過敏症:治療に健保適用、70万人救済に道 10月から病名登録という記事が掲載された。


 電子カルテシステムや電子化診療報酬請求書(レセプト)で使われる病名リストに、「化学物質過敏症(CS)」が新たに登録されることが11日分かった。10月1日付で厚生労働省と経済産業省の外郭団体・財団法人医療情報システム開発センター(東京都文京区)が改訂を予定している。国が公式にCSの存在を認めるのは初めて。健康保険で扱われる病名はこのリストに連動しており、改訂されれば、自己負担が原則だったCS治療に健保が適用されるため、推定約70万人とされる患者救済の大きな一歩となる。【宍戸護、田村佳子、河内敏康】

 厚労省にCSを公認するよう求めてきた患者団体・シックハウス連絡会(東京都)によると、同省から今年5月、センターへ病名の登録を要望するように勧められた。6月1日にセンターから「CSを10月1日に採択予定になった」と連絡があったという。

 CSの一種の「シックハウス症候群」は既に健保の適用が認められている。しかし、シックハウス症候群がホルムアルデヒドやトルエンなど室内の空気汚染で発症するのに対し、CSは農薬散布やたばこの煙などが原因で室内外を問わない。このため、厚労省は「医学的に統一した見解が確立されていない」として健保の適用を原則認めなかった。


いろいろ突っ込みどころがある記事である。まず、患者数70万人という推定は、発表者本人が「感度・特異度ともに課題を残している」と認めており、妥当性はない*1。『CSの一種の「シックハウス症候群」』という表現も誤り。これまで化学物質過敏症に健保の適用が認められなかった理由もおかしい。原因物質について室内外を問わないことは、健保の適用が認められなかった理由ではないだろう。記事中「このため」という接続詞は意味不明である。「医学的に統一した見解が確立されていない」というのは健保の適用が認められなかった理由として妥当である。より正確に言えば、「(多種類)化学物質過敏症の疾患概念は医学界の主流からは認められていない*2」のであるが、あまりマスコミは報道しない。これまでは「医学的に統一した見解が確立されていない」から健保の適応を認められていなかったのに、10月からは健保が適用されるというのであれば、「医学的に統一された見解が確立された」か、「医学的な統一見解がなくても健保適応を認めることもあるとルールを変更した」かのどちらかである。私が知る限り、最近、化学物質過敏症について医学的に統一された見解が確立されたということはない。医学的な疾患概念の妥当性とは別に、患者救済のための政治的な配慮だというのならば、まだ理解できないでもない。しかし、■厚労省の愚?:化学物質過敏症保健病名へ?(内科開業医のお勉強日記)で指摘されているように、「医学を超越して疾患が定着してしまうことの危険性」のほうが大きいと私は考える。医学的な根拠が確立されていないにも関わらず、「国が公式にCSの存在を認めた」などと宣伝に利用されてしまう。

ただ、実際の診療の現場では、これまでとはあまり変わらないのではないか。病名マスターのリストに登録されることと保険請求できることは無関係であるようだ。id:bn2islanderさんがブックマークでリンクされた■2006年11月2日【厚生労働省、要望事項への回答?】(手作り「かなりや通信」/ウェブリブログ)には健康局・生活衛生課の回答として「[病名マスターに]載るかどうかというのは、請求が出来るかどうかとは無関係です」というコメントが引用されている。また、■レセプト電算処理システム 傷病名マスター改訂の概要(PDFファイル)には、「傷病名マスターの改訂は、以下のような方針で行われました(中略)自費診療しかできない傷病名も、単独では保険請求できないことの区分情報を付与した上で、可能な範囲で追加する」とある。健康保険が適用されるとしても、化学物質過敏症に対する特別な治療はこれまで通り自費診療となる。北里研究所病院のサイト*3では、「医師が必要であると判断した場合には、マルチビタミン剤、ミネラル類、解毒剤等の点滴療法や酸素療法を行うこともあります。点滴療法や酸素療法は自費となります」とある。これまでもマルチビタミン剤やミネラル類については適当な保険病名をつけて保険請求していたのであろうし、化学物質過敏症が病名登録されて以降も、別に「点滴療法や酸素療法」が保険適応になるわけではない。今回の病名登録については、象徴的な意味合いが強いと私は考える。



関連記事

■治療にホメオパシーを用いる化学物質過敏症の権威

*1:参照:■化学物質過敏症:成人患者推計70万人?

*2:参照:■化学物質過敏症に関する覚え書き

*3:URL:http://www.kitasato-u.ac.jp/hokken-hp/consultation/guide/diagnosis/allergy/index.html

koumekoume 2009/06/17 21:36 このエントリを待っていました(^^
私はこの話を地元の新聞で知り、ブログエントリには適当にぐぐった47Newsの記事を使いましたが、毎日新聞のはすごいクオリティだったんですね。
シックハウス症候群も化学物質過敏症のひとつとされる、と言う記述は共同通信の方にもあったのですが、「ことば」でのCSの解説といい、毎日独自の部分が酷すぎです。

愛読者愛読者 2009/06/18 12:10 私も NATROM 氏の講義を待っていました。
勉強になりました。

H.MH.M 2009/06/18 20:31 ああ、また来ましたね、死刑宣告(笑)病気もついに主観的観点からのジャンプ(客観的判断が不可能という意味で)が可能になってしまう時代になりましたか。

この病気はただ、喫煙、農薬、合成着色料、つまり、『天然以外の化学物質は体に悪いというイメージ』さえ付けば、医学的見地なんてどうでも良いんです。まぁ、毎日ですから、この記事自体が嘘八百という可能性はありますが…どうもそうでもないらしいですね。これでまた一段と、禁煙活動は活発になるでしょう。

しかし、いつの間に厚労省までアホになってしまったのやら…まぁ、ありがちっちゃありがちなので、一々絶望もしませんが。

たらこたらこ 2009/06/28 15:17 >>、「医学を超越して疾患が定着してしまうことの危険性」のほうが大きいと私は考える。
そりゃ、あなたは医師なんだから、業界のことは自分たちで決めたいと思うのは当然という”側面”もあるのでは? で、医学とか専門家の存在価値は尊重して認めるとして、その専門家様が、効果があって安全だってさんざん宣伝してきた抗精神薬で、結構すごい事件が発生して、社会的にはえらい損失をこうむっているのはご存知ですよね。(でも、自分の同業者のことは、つっこめないんでしょ?) そういうことを考えると、医学とやらの専門家が100パーセント決定権を握りたいっていう要求に素直に受け入れるわけにはいかんのです。ただ、化学物質過敏症の病名がどうして登録にいたったのかの経緯についても知っているひとがいないので、どうして?って思うのは当然ですけど。

NATROMNATROM 2009/06/28 17:49 「専門家様が、効果があって安全だってさんざん宣伝してきた抗精神薬」って、具体的に何ですか?たらこさんが一知半解で話しているのか、それともきちんと専門知識を持って話しているのか、判断がつきかねます。別に、「医学とやらの専門家が100パーセント決定権を握りたいっていう要求に素直に受け入れるわけにはいかん」と思われるのは自由ですが、それでもきちんとした根拠は必要でしょう。

MikeMike 2009/07/25 12:05 >たらこさま
SSRI
って怖いですよね。


2さて、化学物質過敏症の患者は、この苦難を取り除いてくれる医術を望んでいるだけですよね。
どんなに見識高く高名なお医者様の学説であっても、それが患者を救済できないダメ学説ならノーサンキューです。
逆に、どんなに怪しげな療法でも「即日完治して、明日から社会復帰」できるのなら値千金です。
その点で、厚労省の対応は英断だと思います。

人心を掌握し統治すべき人間の器量だと思います。

まあ、優れた人間というものは、己の過ちを改められる人間だと思います。
緑色した十字架を医学者はしっかり背負って発言すべきです。
権威に殺されるのは患者です。

真に優れた医師は軽々に患者の損益になる発言はしません。
率先して患者を死に追い込む発言を繰り返すのは、利権に群がる悪徳医師なのではないでしょうか?

医師は患者を救ってこそ価値がある。師と崇められる。
患者を蹴落とす発言をする医者は、医術を使うただの極悪人。

自分の命がかかっていたら、この意見を否定できますか?
あるいは愛する家族が命の危険にさらされていても、この見解を否定できますか?

医師の存在意義は患者を救うためにある。患者を見殺しにし続けてきた現実から目をそむけてはいけない。
救える手段を掲げられない者、それは無能者に限りなく等しい。

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