無責任なのは誰か

これ、自分のことを言っているのであればまだわかるんだけどさ。

埼玉県内の公立学校で100人以上の教員が退職手当減額前の1月末での退職を希望している問題で、同県の上田清司知事は22日の定例記者会見で「無責任のそしりを受けてもやむをえない」と釈明した。

http://mainichi.jp/feature/news/20130123ddm041100129000c.html

いや、確かに

また、県が退職金が減額される改正条例を2月の施行にした理由を「1月1日が望ましいと思ったが、組合もあり最小限の周知期間が必要だった」と説明。4月施行で減額を遅らせた場合には逆に人件費の負担増が約39億円に上り、別の批判を招く恐れがあったとして理解を求めた。

http://mainichi.jp/feature/news/20130123ddm041100129000c.html

とも言っているので

  • 1月末の退職を誘発したのは私が無責任でした
  • 39億円と天秤にかけて選んだんですが失敗でした

という「釈明」にも見えなくはない。しかし、日経の記事では

上田知事は「それぞれが得か損かの判断をしている。価値観までは強制できない」としつつも「責任ある立場の人は責任をしっかり受け止めてほしい」と話した。

手当減額前に駆け込み退職 埼玉の教員100人超 :日本経済新聞

と言っているので、やはり教師を無責任と謗っているのであろう。
まあはっきり言うと、39億円という金で責任のある立場を買っていたわけだから、39億円引き上げるぞと言われたらきっちり回収されるのが世間というものであるよな。

知事には結果として失敗している上に教師という人格に金か生徒かを選ばせる苦痛まで与えているという事実に対して、十分に反省し、「責任ある立場の人は責任をしっかり受け止めてほしい」ものだ。

追記

神奈川県知事まで酷いことを言っている。

知事は「卒業生を送り出す直前に退職するというのはショックだ。相当の思い入れで最後の学年と向き合っていたはずで、そういう教師が出ていることは本当に残念でならない」とも指摘した。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130124-OYT1T00304.htm

これさ、「責任を感じるならここで退職はしまい…この作戦は完璧だ!」という見当はずれの考え方が失敗したことへの逆切れ文句にしか思えないんだよね。県の方針も含めて教育なんだから、相当の思い入れを無にした行政の仕打ちの方こそまず責められるべき。責任という言葉で自分たちの無為無策を隠蔽しているにすぎない。

そりゃあ教師にも最後まで面倒を見て欲しかった気持ちは僕だってあるよ。でも、退職して今後国の失策でどうなるかわからない年金だのみの生活をしなきゃならない状態で、目先のかなりの高額な退職金を捨ててまで打ち込める価値のある職業だ、と政治や世間がみなしてきたというとでも?教師だからという理由でいろいろ耐えないといけないことだってたくさんあっただろうに、最後の最後で金を取り上げるという仕打ちをしておいて「責任だけ果たせ」という神経が信じされない。
神奈川県知事に於かれましてはいつぞやの横浜市長が築いた赤字の責任も追求して欲しいところ。

更に追記

これは酷い。

ちなみに、3段階の第2弾引き下げは今年の10月、第3弾は来年の7月です。
 このタイミングですと、確かに年度内の残りの月数が多いので、その分の給与を捨ててまで、早く退職するインセンティブは低くなります。
 が、だからといって、今年度について、引き下げを行わなかったら、国で百数十億円、地方で1000億円近くの節減ができなかったことになります。
 そこまでして、「こんなことで辞めるのか?」という程度の自覚の駆け込み退職教員や警察官の退職金を守るべきでしょうか?

片山さつき Official Blog : 退職金が民間より15%(平均400万円)高いとの調査により、引き下げが決まり、生徒と職場を放り出して駆込み退職した地方教員、警察の方々!公務の矜持は何処へ?

前半はその通り。しかし、程度の自覚?「こんなこと」の重みがわかっていないのはパンが無いならケーキ的なものでしょ?庶民が公務員の給与が高いって文句言っているのは本来の国家運営の話として考えるとさ「デフレを解消できない政府」にも原因があるんだよ。現にインフレが起こった場合に煽りを食うのは給与の上昇が一番遅くなる公務員なわけで。それが嫌なら民間並みにインフレに対応するんだろうな?

こんなことも言っている。

こういう考え方は甘いのですかね。地方の教員や警察官の方々に、「矜持」や「性善説」を求めるのはもう無理、ということですか?
 であれば、退職時期を規制できますか?できませんよ。誰でも、いつでも辞める自由はありますから。

 公務というのは、広義の給与も含めて、制約のある仕事です。だから守られる部分もあるわけで、それだけの責任を負ってもらえる方、ということで任用している(はずの)、仕事し続けてもらう(はずの)職業です。

片山さつき Official Blog : 退職金が民間より15%(平均400万円)高いとの調査により、引き下げが決まり、生徒と職場を放り出して駆込み退職した地方教員、警察の方々!公務の矜持は何処へ?

「矜持」「性善説」で飯を食えというのかしらん。なにが(はずの)なんだか。政治家に国民が期待することなんてのはもっと責任が重いんだけどさ、選挙があると役職捨てて衆院鞍替え辞職するような議員が続出するわけじゃん。自分たちの行為を棚に上げて公務員を非難するのって庶民の嫉妬以下の行為だよ。
「矜持」や「モラル(士気)」は相応の待遇から発生するものなんだよ。少なくとも、武士は食わねど高楊枝、というのは武士という身分そのものが待遇だったから発生し得たことであり、議員から「みなさんのお陰で日本は動いている」と感謝されるどころか鼻くそ扱いされて矜持云々なんて言葉が響くわけなかろう。

またまた追記

まだ居やがった。

「決して許されざる(ことだ)」と批判し、文科省として各教育委員会などへの指導に乗り出す考えを示した。
同相は「(特に)クラス担任ら責任ある立場の先生方は、最後まで誇りを持って仕事を全うしてほしい」と述べた。 

http://jp.wsj.com/article/JJ11939821350646144055320080547730253729508.html?mod=wsj_share_tweet

文科省の大臣だからってお前の個人的な主張を指導のネタに使うなんてのは体罰教師の理屈と一緒だよ!
年度に縛られると高を括って安直な予算削減策を考えた馬鹿が悪いんだろ!
誇りを金と天秤にかけなくてもいいくらい日本が豊かだったらこういう問題は起きないんだよ!