●平成19(ワ)12770損害賠償等請求事件「NuBra/NuBra Feather Lite」

  本日は、『平成19(ワ)12770 損害賠償等請求事件 商標権 民事訴訟「NuBra/NuBra Feather Lite」平成20年02月26日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080229155728.pdf)について取り上げます。


 本件は、原告が被告に対し「NuBra」と「NuBra Feather Lite」の商標権に基づき差止め及び廃棄と,損害賠償の支払を求め、「NuBra」の商標権のみに請求が認められた事案です。


 本件では、本件標章2の「NuBra Feather Lite」と、被告標章2の「Feather-Lite」とが非類似と判断された点が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第46部 裁判長裁判官 設樂隆一、裁判官 中島基至、裁判官 関根澄子)は、

1 争点(1)(被告は,原告の商標権を侵害したか)について

(1) 被告標章と本件商標の類否

(1)本件商品のプラスチック製容器内箱には被告標章1が刻印されており ,本件商品の紙製外箱には,被告標章1及び被告標章2が印刷されている(甲3,4) 。


 被告標章1は,「NuBra」の英文字を,大きな「B」を中央に,小さな「Nu」を左上側に,小さな「ra」を右下側に配する形で横書きし,「Bra」の文字の下に下弦の略半円が描かれているものである(甲3,4 )。


 本件商標1も,同様に ,「NuBra」の英文字を, 大きな「B」を中央に,小さな「Nu」 を左上側に、小さな「ra」を右下側に配する形で横書きし,「Bra」の文字の下に下弦の略半円が描かれているものである(甲2の1)。


 したがって,被告標章1は,本件商標1と同一の標章であることは明らかである。


 被告標章2は,「Feather−Lite」の英文字を横書きしたものである(甲4)。本件商標2は「NuBra Feather Lite」の英文字を横書きしたものである(甲2の2 )。

 被告標章2は,「NuBra」の文字がないことと,「Feather」と「Lite」の間に「−」がある点で,本件商標2と外観において異なり,またその称呼においても,本件商標2については「ヌーブラフェザーライト」という称呼が生じるのに対し,被告標章2については,単に「フェザーライト」という称呼が生じるにすぎない点で,本件商標2とは異なる。


 さらに,「NuBra」は,弁論の全趣旨によれば,原告の商品である肩ひも及び横ベルトのない乳房に圧着・粘着させるブラジャーの商品名であると認められ,本件商標2の「NuBra Feather Lite」は,「NuBra」が「Feather Lite」であるとの観念を表示しているのに対し,被告標章2の「Feather−Lite」だけでは,「NuBra」についての観念を表示しているとはいえず,両者は,観念においても異なる。したがって,被告標章2は,本件商標2とは,その外観称呼及び観念のいずれにおいても異なり,これと同一とも類似とも認めることはできない。


(2) 被告による商標権侵害行為の成否

ア 証拠(乙1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,平成17年7月25日,トリーチェから,本件商品1万5000個を,単価1500円,合計2250万円で購入し,同日,シーエスシーに対し,本件商品1万5000個を,単価1560円,税別合計額2340万円(消費税117万円,総額2457万円)で販売したこと,同年8月11日,トリーチェから,本件商品2503個を,単価1500円,合計375万4500円で購入し,同日,ゲートウェイに対し,本件商品2503個を,単価1550円,税別合計額387万9650円(消費税19万3983円),総額407万3633円で販売したことをそれぞれ認めることができる。


イ 被告は,ゲートウェイのトリーチェに対する売買代金を被告が立替払いするため,形式的に本件取引の商流に介在したにすぎず,本件販売は,本件商品の譲渡行為には該当しないと主張し,これに沿う証拠として,被告社員であるA(以下「A」という。)の陳述書(乙16)及び本件取引当時ゲートウェイの取締役営業本部長であったBの陳述書(乙17)等を提出する。そして,これらの陳述書には,本件取引1では,利益率は約3.3パーセント(単価1500円につき販売利益50円。乙1, 3, 16),本件取引2では4パーセント(単価1500円につき販売利益60円。乙2,4,16)であって,いずれの取引も通常の卸売りの場合の利益率10パーセントよりも低く,単なる立替払い(ファイナンス)にすぎないこと,また,本件取引では,商品はすべて直接ゲートウェイに納入されており,被告には納品されていないこと等が記載されている。


 しかし,利益率の高低は,本件販売の法的性質が売買か立替払いであるかとの判断には直接関係のないことであり,また,商品が転売される場合に,商品が中間の業者に納入されず,転買人に直接納入されることは商品取引上よくあることであるから,これらのことは本件販売が売買であることを否定する理由とはならない。


 本件取引においては,被告が,平成17年7月25日にトリーチェから「ヌーブラフェザーライト」1万5000個を購入した旨の仕入伝票(乙1) ,被告が,同日「ヌーブラフェザーライト」1万5000個をシー エスシーに販売した旨の売上伝票(乙2) ,被告が,同年8月11日にトリーチェから「ヌーブラフェザーライト」2503個を購入した旨の仕入伝票(乙3) ,被告が,同日「ヌーブラフェザーライト」2503個を ゲートウェイに販売した旨の納品書(乙4)がそれぞれ作成されているのであり,また,上記認定のとおり,被告がシーエスシー及びゲートウェイから売買に伴う消費税を徴求している(ファイナンスであれば消費税は不要である)ことからすれば,本件販売は,法的にはいずれも売買である。と認められる。


 なお,売買行為の経済的実体がファイナンスである場合でも,当事者がその法的形式として売買を選択することは,商品取引上珍しいことではなく,本件販売も,仮にその経済的実体がファイナンスであるとしても,当事者がその法的形式として上記認定のとおり売買を選択したものである以上,その法的性質も売買であり,売買に伴う法的な効果が生じるものというほかないのである。


 また,平成18年6月12日付でゲートウェイ,同月15日付でシーエスシーが,それぞれ被告に対して発した「貴社(被告)には伝票のみが,経由するという取引であったことより貴社に対する商品の瑕疵担保責任等の仕入れ先への責任は履行しない」旨の記載がある確定日付を付した通知書が存在する(乙5,6)ものの,これらは,被告が,本件商品が偽造品であるとの指摘を受けてから,ゲートウェイ,シーエスシーに対し,作成を指示したものであり(乙16) ,被告の意向に沿って作成されたものであるから,信用性が乏しく,本件販売が売買契約であることを否定する根拠とはならない。


 以上のとおり,本件販売については,売買契約としての取引書類が作成されており,他に本件販売が売買ではないことを窺わせる特段の事情は見いだせない以上,本件販売は,いずれも被告を売主とする売買契約にほかならないというべきである。


ウ よって,本件販売は,本件商品の売買であり,被告は,本件販売1により,シーエスシーに対し本件商品1万5000個を,本件販売2により,ゲートウェイに対し本件商品2503個を,それぞれ譲渡したものと認められる。


(3) 小括

 以上によれば,被告は,本件商標1と実質的に同一又は類似する被告標章1を使用して行った本件販売により,本件商標権1を侵害したものである。なお原告は,被告が本件販売によるもの以外に,本件商品を4万個販売したことが推定されると主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。


2 争点(2)(損害額)について

(1) 上記認定のとおり,被告が,本件販売によりシーエスシーに対し譲渡した本件商品は1万5000個であり,商品の単位数量当たりの利益の額は60円であるから,原告が被った損害の額は,90万円である。


 また,上記認定のとおり,被告が,本件販売2によりゲートウェイに対し譲渡した本件商品は2503個であり,商品の単位数量当たりの利益の額は50円であるから,原告が被った損害の額は,12万5150円である。


 以上の合計額は,102万5150円である。


(2) 本件訴訟の性質,経緯その他本件に表れた全事情を考慮するなら,被告による本件商標権の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は,10万円と認められる。


3 争点(3)(侵害のおそれの有無)について


 被告が,本件取引は,ゲートウェイのトリーチェに対する売買代金の立替払いであると主張し,本件商品の譲渡を否認していること,Aが,被告は,本件取引にはファイナンスとして関与したので,商品の真贋について,配慮しなかったと述べていること(乙16) ,その他弁論の全趣旨によれば,被告が,今後も被告標章1を付したブラジャー又はその容器若しくは包装を販売し,もって,原告の本件商標権1を侵害するおそれが認められる。

第4 結論


 以上の次第であるから,原告の請求は,112万5150円及びこれに対する平成19年5月29日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払と,別紙被告標章目録1記載の標章を付したブラジャー又はその容器若しくは包装に当該標章を付したものの差止め及び廃棄を認める限度で理由があるから,これらを認容し,その余の請求は,いずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり,判決する。 』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。