16年12月の書籍雑誌の推定販売金額は1283億円で、前年比0.5%減。
書籍は576億円で、同0.8%増、雑誌は706億円で、同1.6%減。
雑誌内訳は月刊誌が605億円で、同0.8%増、週刊誌は101億円で、同13.8%減。
12月のマイナス幅が小さかったのは、31日の特別発売日に書籍40点、雑誌(増刊、別冊、ムック、コミックス)170点、総発行部数840万部、50億円が送品されたことによっている。
業界誌ではそのことで、大手書店が前年よりプラスになったと報道されている。私もそれらを見るために5店ほど見てみたけれど、コーナーを設けて販売しているところはなく、それぞれの雑誌コーナーに分散され置かれていただけだった。
そのことから考えても、実売に関してはどの程度の歩留まりであったのか、疑問が生じるところでもあるし、返品の反動も恐ろしい気がする。
返品率は書籍が37.2%、雑誌が38.3%。
店頭売上は書籍が1%減、雑誌の定期誌が2%減、ムックが1.5%減、コミックス10%減で、コミックスと週刊誌は二ケタのマイナスが定着したかのように続いている。
1.出版科学研究所による1996年から2015年にかけての出版物推定販売金額を示す。
■出版物推定販売金額(億円) 年 書籍 雑誌 合計 金額 (前年比) 金額 (前年比) 金額 (前年比) 1996 10,931 4.4% 15,633 1.3% 26,564 2.6% 1997 10,730 ▲1.8% 15,644 0.1% 26,374 ▲0.7% 1998 10,100 ▲5.9% 15,315 ▲2.1% 25,415 ▲3.6% 1999 9,936 ▲1.6% 14,672 ▲4.2% 24,607 ▲3.2% 2000 9,706 ▲2.3% 14,261 ▲2.8% 23,966 ▲2.6% 2001 9,456 ▲2.6% 13,794 ▲3.3% 23,250 ▲3.0% 2002 9,490 0.4% 13,616 ▲1.3% 23,105 ▲0.6% 2003 9,056 ▲4.6% 13,222 ▲2.9% 22,278 ▲3.6% 2004 9,429 4.1% 12,998 ▲1.7% 22,428 0.7% 2005 9,197 ▲2.5% 12,767 ▲1.8% 21,964 ▲2.1% 2006 9,326 1.4% 12,200 ▲4.4% 21,525 ▲2.0% 2007 9,026 ▲3.2% 11,827 ▲3.1% 20,853 ▲3.1% 2008 8,878 ▲1.6% 11,299 ▲4.5% 20,177 ▲3.2% 2009 8,492 ▲4.4% 10,864 ▲3.9% 19,356 ▲4.1% 2010 8,213 ▲3.3% 10,536 ▲3.0% 18,748 ▲3.1% 2011 8,199 ▲0.2% 9,844 ▲6.6% 18,042 ▲3.8% 2012 8,013 ▲2.3% 9,385 ▲4.7% 17,398 ▲3.6% 2013 7,851 ▲2.0% 8,972 ▲4.4% 16,823 ▲3.3% 2014 7,544 ▲4.0% 8,520 ▲5.0% 16,065 ▲4.5% 2015 7,419 ▲1.7% 7,801 ▲8.4% 15,220 ▲5.3% 2016 7,370 ▲0.7% 7,339 ▲5.9% 14,709 ▲3.4% [前回の本クロニクルで、16年度の推定販売金額はついに1兆5000億円を割りこみ、1兆4670億円前後と予測しておいたが、ほぼそのとおりの金額となった。
雑誌の凋落はとどまることなく、15年度に続き、ピーク時の1997年の1兆5644億円の半減という事態に追いやられてしまった。しかも書籍との合計でも、ピーク時の雑誌売上を下回って2年目である。それとともに書籍を下回る状況をも迎えている。
これからも雑誌のマイナスが続くことは確実であるし、それは雑誌をベースとして構築された出版社・取次・書店という近代出版流通システムをさらに危機へと向かわせるであろう。
書籍のほうは雑誌のように半減してはいないにしても、これもピーク時の1996年の1兆931億円に比べれば、3561億円というほぼ3分の1のマイナスであり、販売冊数も同様となっている。現在の社会や出版状況から見て、書籍売上が雑誌を上回ったけれど、それが書籍の回復を示しているわけではないし、こちらも下げ止まってはいない。
合計販売額のピーク時はやはり1996年で、2兆6564億円だが、17年度が5%のマイナスだとすると、1兆3000億円台になってしまうだろう。そうなれば、トータルとしての出版物売上も半減してしまい、出版業界全体、とりわけ流通と販売を担う取次と書店のサバイバルは可能かという段階へと入っていく。それはもはや至るところに露出しているし、17年度はさらなる表出を見ることになろう]
2.出版科学研究所による16年度の電子出版市場販売金額も出されているので、それらも示す。
■電子出版市場規模(単位:億円) 年 2014 2015 2016 前年比(%) 電子コミック 882 1,149 1,460 127.1 電子書籍 192 228 258 113.2 電子雑誌 70 125 191 152.8 合計 1,144 1,502 1,909 127.1 [16年電子出版市場規模は1909億円で、前年比27.1%増。それらの内訳はコミックが27.1%増、書籍が13.2%増、雑誌が53%増となり、コミック専有率が76.5%に及んでいる。
リードでコミックの店頭売上の二ケタマイナスが続いていることを既述したが、それは電子コミックの1460億円という成長が影響を及ぼしていることは疑いをえない。これは本クロニクル95 にも挙げておいたけれど、15年度のコミッス売上は2102億円であるので、16年度は2000億円を下回っている可能性が高い。それに対して、電子コミックの成長は14年より鈍化しているにしても、まだ伸び続けるであろうし、そうなれば、数年内に紙と電子コミックスの売上は逆転してしまうことになろう。
それから週刊誌の同様のマイナスも「dマガジン」などの読み放題サービスとのバッティングは明らかで、さらなる書店市場における凋落が続いていくだろう。
『出版状況クロニクル4』で、電子出版市場が2000億円規模になった場合、従来の出版社・取次・書店という近代出版流通システムは崩壊してしまうのではないかと指摘してきた。それはまさに17年には2000億円に達するであろうし、すでに時は迫っているのである。
紙と電子合計市場は1兆6618億円で、全年比0.6%減。1に示しておいたように、ピーク時の1996年には紙だけで2兆6564億円の市場だったわけだから、成長が鈍化し始めている電子書籍を加えても、従来の売上高を取り戻すことができないのは自明の理だといっていい]
3.『新文化』(1/19)が「深刻さ増す出版輸送問題」というタイトルで、東京都トラック協会の瀧澤賢司出版取次専門部会長にインタビューしている。それを要約してみる。
* コンビニや書店への出版物配送は重量制運賃であり、とりわけコンビニ配送の採算悪化が経営を圧迫している。最低運賃の約定もないので、物量の減少によって、1車輌当たりの収支悪化が深刻で、収益が上がらないという理由により、出版輸送から撤退する業者も出てきている。
* 出版物が書店やコンビニに並ぶまでには、商品の集荷、店別仕分け、配送コース別積込み、配達、返品の回収と大変な手間がかかっている。それらの経費のすべてをキログラム単価でまかなっていることから厳しい環境下にある。
それに加え、コンビニ配送は物量が減少する一方で、配達店舗数は増加していて、配達の負担と収入のバランスが著しく悪化している。そのために荷主の取次には特別運賃を別途設定してもらってはいるが、それでも現状は厳しさを増すばかりである。
* コンビニ配送は納品時間がタイトに決められていること、客の多い繁華街の店舗では受領印を受けるために20分待たされたりして、次の店舗到着が遅れてしまうこと、オフィスビル、病院、学校などの出店も多く、セキュリティも厳しいために効率が悪化していることなどが挙げられる。
* ドライバー不足と高齢化の問題も深刻で、2020年にはトラック輸送産業全体で10万人以上不足するとの予測も出ている。
* 東京都トラック協会出版部会は1969年発足時に72社だったが、現在は70%減の20社で、10年前と比べても17社減少している。それらもあって、土曜休配日の2017年の20日導入が検討されている。
* 現在1台のトラックが稼ぎ出せる金額はかつての6割いければいいほうで、それでいてドラバーの給料は変わっていない。固定費は動かず、収入は落ち込むという図式だ。このままいくと、出版輸送の崩壊がどんどん進み、首都圏は店舗が密集していて、業量もあるので営業できているが、地方の状況は非常に厳しくなってきている。いつ出版輸送が止まってもおかしくない状況にある。[出版輸送問題は取次にとっても「出口がまったく見えない状況」にあり、取次=流通の根幹を直撃していることになる。出版輸送問題にしても、出版物売上が半分になってしまえば、1台のトラックが稼ぎ出すのも「かつての6割いけばいいほう」という状況へと追いこまれていて、「いつ出版輸送が止まってもおかしくない」ところまできている。
それは『出版状況クロニクル4』でもずっと言及してきたし、本クロニクル103 でもふれたばかりだが、コンビニ配送はもはや採算がとれないことに大きく起因している。コンビ二の雑誌売上は月商30万円を割りこんでしまい、それでいて5万店を超えている。もはやこの売上では雑誌流通のコストが合わないことはいうまでもあるまい。
かつては中小取次の小書店でも、最低月商が100万円、年商にして1000万円以上の売上がないと採算ベースに乗らないと聞いていたが、コンビニの場合はその半分にも届いていないのだから、すでに取次=流通が成立しなくなっている。ここで語られている出版輸送問題はその事実を突きつけているといっても過言ではない]
4.出版労連が出版研究室を開設するようで、そのための参考資料として、「1990年から2015年までの出版労連組織と関連データ」を提出している。それが『出版ニュース』(1/下)に掲載されているので、アレンジしてここに挙げておく。
■1990年から2015年までの出版労連組織と関連データ (売上単位:億円) 年 労連単組数 労連組合員数 従業員数 出版社数 書籍売上 雑誌売上 書店数 1990 163 10,803 15,186 4,309 8,660 12,683 28,000 1995 155 1,0484 15,998 4,561 10,470 15,427 26,000 2000 140 8,604 15,142 4,391 9,706 14,260 21,493 2005 123 6,023 12,598 4,229 9,197 12,767 17,839 2010 108 5,727 12,363 3,817 8,212 10,536 15,314 2015 89 4,838 8,798 3,489 7,420 7,801 13,488 90年比 55% 45% 58% 81% 86% 62% 48% [この表から四半世紀における出版労連の単組と組合員の減少が、出版業界の衰退とパラレルであったことが明確になる。
講談社、日経BP、平凡出版、角川書店、主婦之友社、日販などが脱退し、その他にも出版社の倒産や合併などによって組合が消滅したことにより、まさにこちらも半減してしまったのである。
だがこの間に書店数の減少とは逆に、多くのナショナルチェーンが台頭したにもかかわらず、組合の結成を見ていない。おそらくそのことは職場環境の問題と密接につながっているだろうし、そうした書店の問題もこれから吹き出してくるにちがいない]
5.1から4のような日本の出版業界にあって、一人勝ちしているアマゾンに関してこれも『新文化』(1/12)にHONZ代表の成毛眞が「成長拡大続けるアマゾンの強さの核心」を寄稿している。
これはとても明快なアマゾンの現在についての啓蒙的レポートであるので、こちらも要約してみる。
* アマゾンは1995年創業以来、爆発的な成長を遂げ、15年12月期売上は10兆7000億円、日本売上は1兆5000億円と推定される。それに対し、日本最大の売上高を誇るイオンは8兆円。
*株価も97年上場時から16年12月期には760ドルと580倍で、時価総額36兆円。これも日本最大のトヨタの20兆円を上回る。
* その株価を支えているのは年間1兆円を超えるキャッシュフローで、それを設備投資に向け、超大型物流倉庫を構築してきた。それだけでなく驚異的なのは、顧客から代金を回収し、納入業者たちに支払う期間のキャッシュコンバージョンサイクル(CCC)である。ウォルマートなどのプラスに対し、アマゾンのCCCはマイナス18・86日で、売上が伸びれば伸びるほど、手元に資金が残るシステムとなっている。
* またアマゾンは個人客向け小売業だけなく、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)を両輪とする企業向けサービスを有し、マイクロソフトと並ぶ世界最大の企業向けクラウドサービス提供会社である。
* クラウドサービスはネットワークを経由し、コンピュータ機能を提供することで、これを使うと企業は自社内にコンピュータを置く必要がなくなる。アマゾンは全世界に少なくとも28ヵ所の自社専門変電所を持つデータセンターがあり、それぞれに5万から8万のサーバーが設置され、そのサーバーもプロセッサーもアマゾンが設計し、製造を外注し、世界最大のコンピュータ会社へと変貌しつつある。
このAWSの売上は9%だが、営業利益の55%を占めるまでに成長し、日本でもキャノン、キリン、ユニクロなどの多数の大企業が導入し始めている。
* FBAはマーケットプレイスから派生したもので、中小企業にインフラを提供することを目的とし、倉庫機能、在庫管理、決算、配送、カスタマーサービスまでをフォローしている。しかし現在では規模と対象が拡大し、自社製品を大量にアマゾンの倉庫に送り、在庫管理をしてもらいながら、アマゾンを経由しない注文にも対応できる物流システムとなってきている。
* 出版界に限っていえば、アマゾンは書籍も販売する大型小売店を次々と建設してきたことになり、しかも日本の大型書店の万引被害率1.91%に対し、万引ゼロである。個人客としてゴールドカードを持てば、すべての商品が2.5%値引き、さらに自動的にプライム会員となり、送料は無料、したがってすべての本も2.5%引きということになる。Tポイントによる顧客誘導がかなう相手ではない。[これらのうちで、AWSなどに関しては『出版状況クロニクル4』でも伝えてきたことだが、CCCやFBAの進化についてはここで初めて教えられたことになる。
ちなみにアマゾンがメーシーを抜き、全米最大のファッション小売業となるとの予想も記されているし、17年当初のアメリカの小売業全体がアマゾン対策を全面に出していることの背景がうかがわれる。
成毛はこの寄稿を次のように閉じているので、それも引いておこう。
「日本の出版界が電子出版の行方などに目を逸されている間に、アマゾンは着々とリアルな世界で独占的な地位を占めようとしていることを忘れてはならない」]
6.丸善ジュンク堂書店の2016年「出版社別売上げベスト300」が出され、そのうちのベスト10は講談社、KADOKAWA、集英社、小学館、新潮社、学研プラス、文藝春秋、ダイヤモンド社、岩波書店、幻冬舎となっているが、前年を上回っているのはダイヤモンド社だけである。
また同様に紀伊國屋書店も発表されているが、前年を上回ったのは2578社のうちの782社(30%)、同90%未満の出版社は1306社(50%)である。
[両社の16年販売状況は出版社のみならず、書店市場の危機を告げていることになるし、再販委託制に基づく出版社・取次・書店という近代出版流通システムが解体プロセスへと踏みこんでいることを露出させていよう。それに連鎖して、3の「出版物輸送の危機」さえも起きているのだ]
7.『創』(2月号)が恒例の出版社特集を組んでいる。
[近年の『創』の特集は、座談会からして床屋談議と呼んでいいもので、ほとんど言及してこなかった。それをここで引いたのは、清田義昭、松田哲夫、篠田博之の座談会タイトルが「書店・取次の倒産相次ぐ/深刻不況・出版界の危機」と題されていたからである。
これまでマスコミやジャーナリズムは「出版危機」ではなく、ひたすら「出版不況」を言い募ってきた。しかし16年の出版業界の現実からして、もはや「出版不況」ではすまされず、「出版界の危機」を直視するしかない状況と向かい始めたことになろう。
それは『新文化』や『文化通信』などの業界紙も同様で、3に関して、「出版物輸送の危機」「出版流通の危機」などと喧伝し始めてもいる。おそらく今年は「出版危機」の大合唱となるだろう。
それはさておき、この特集でひとつだけ教えられたのは、長岡義幸による新潮社レポートの中の、新潮文庫売上推移である。レポートによれば、新潮文庫の販売部数が1990年の4400万部をピークに、2000年には3000万部を割り込み、13年には2000万部、15年には1600万部を切り、16年は何とか1500万台で底を打たせることができたというものだ。それでもピーク時の3分の1になってしまったことになる。
文庫市場ナンバーワンの新潮文庫でさえこのような状況にあるわけだから、他の文庫がどうなっているのか、推して知るべしであろう]
8.岩波書店に関する東京商工リサーチの14枚に及ぶ「TSR REPORT」が出回っている。
[これはマル秘とある企業要覧で、岩波書店の現在状況についてのレポートである。おそらく信山社=岩波BCの破産と絡んで、どこからか流出したものにちがいない。
あえてその内容についてはふれないし、どのような意図で出回り始めたのかは不明だが、現在の出版状況と照らし合わせても、象徴的な出来事のように思えるので、ここに記してみた]
9.『週刊新潮』(1/12)に「『子連れ狼』の大御所「小池一夫」は寸借戦法で斬られた」という記事が掲載されている。
それによれば、小池は小池書院を立ち上げ、出版活動にも携わってきたが、資金繰りが悪化し、昨年2月の雑誌発行を最後に実質的に営業停止状態にある。11月には破産手続きに入るべく、債権者に宛てて債務を調査する文書を送付している。
そのような事態にあって、小池は6年前に社長を辞任し、経営にはタッチしていないとされるが、一方で、「寸借戦法」などの金銭トラブルが相次いでいるという。
[小池一夫の小池書院をめぐる金銭トラブルに関しては、『出版状況クロニクル2』の2009年から伝えているが、ついに破産へと至ったことになる。
小池はまさに梶原一騎と並ぶ漫画原作者の大御所で、小池一夫劇画村塾も開校し、高橋留美子、原哲夫、山本直樹たちも育てたことを含め、戦後コミック史のキーパーソンだった。だがそのような小池にしても、やはり出版だけは鬼門だったことになる。
ここで私的感慨を付け加えておくと、いずれ『子連れ狼』論を書きたいと思っている]
10.ガム出版が破産。
2000年に設立に設立され、雑誌『KBOOM』や韓流音楽『FtoF』、韓国アイドルグループの書籍やDVDを手がけていた。11年には韓流ブームに乗じ、年商5億2000万円を計上していたが、14年は1億7000万円に落ちこみ、主力雑誌の『FtoF』も休刊した。負債は3億5220万円。
[不勉強で、この版元は知らなかったが、ブームに乗じて設立されたり、成長した出版社も多々あり、これからも同様のことが起きてくるだろうと予測される。
それから他業界からの出版社のM&Aはかなりあって、現在でも水面下で交渉中という事例も多いようだ。
デザインビジュアル書のピエがパイ インターナショナルにM&Aされたのも、その一例と考えられる]
11.書原は入居ビルの取り壊しに伴い、阿佐ヶ谷書店を閉店し、本社機能を調布のつつじヶ丘店へ移す。
それとともに、つつじヶ丘店、中央区大川端RC21店、杉並区高井戸店の3店が大阪屋栗田からトーハンへ帳合変更。
[ビルは耐震強度不足とされ、解体後には分譲マンションが建設されるという。
そうして長きにわたって書店があった街の風景が変わっていく。今世紀に入って、そのような風景の変化をいくつ見たことになるだろうか]
12.『フリースタイル』34の特集「THE BEST MNGA 2017このマンガを読め!」が出た。
[今年はBEST10のうち、7位の近藤ようこの『死者の書』しか読んでいなかった。
しかも異例なことに、1位のスケラッコ『盆の国』、4位の高浜寛『ニュクスの角灯』、5位のひらのりょう『FANTASTIC WORLD』はリイド社からの刊行で、『盆の国』と『FANTASTIC WORLD』は「トーチweb」に連載だという。ネット上のコミックがBESTを占める時代がやってきたことを告げている。『FANTASTIC WORLD』はB5判、2980円とあるので、どのような造本に仕上がっているのか、入手を楽しみにしている。
なお近藤ようこに関しては、論創社のHP連載「本を読む」4の「コミック、民俗学、異神論」で言及しているので、ぜひ参照されたい。
それにしてもコミックのブックオフの買い入れはひどい状態になっている。片づけるために600冊ほどを売りにいったのであるが、引き取りは70冊750円ほどで、『フリースタイル』の蔵前仁一の巻頭エッセイのタイトルをもじれば、「持っているコミックが紙くずになってしまった」気にさせられた。
ただ古本屋の友人にいわせれば、大量の本はすでに片づけるだけで、逆にお金を取られるという。出版物がゴミとして処理される時代を迎えつつあるのだろう]
13.『日経MJ』(1/11)が第一面で、「絵本 革命起きた!!」と題する特集を組んでいる。
それは言葉を代えれば、ブロンズ新社特集といってよく、ヨシタケシンスケの『このあと どうしちゃおう』は昨年4月に3日間で12万部を売り上げるなど、日販のデータでは16年の売れ筋トップ10位のうち5作品がブロンズ新社だったという。
[本クロニクル99 において、絵本市場のデータなどを掲載しているので、詳細はそちらを見てほしいが、絵本ブームと新しい絵本の時代が到来しているのかもしれない。
ちなみに図書館で『このあと どうしちゃおう』をリクエストしたところ、6人待ちで、まだ読むに至っていない]
14.「出版人に聞く」シリーズ番外編の鈴木宏『風から水へ』は遅れてしまい、3月に刊行がずれこみそうである。
論創社のHP連載「本を読む」12は「『縄炎』を見る」である。SM ビデオへの言及なので、よろしければ覗いてみて下さい。