山本真司「35歳からの「脱・頑張(がんば)り」仕事術 (PHPビジネス新書)」

さて、そろそろこの本で書いてあるような年齢に近づいてきた。どころか、実際はもはやこの本で書かれているような仕事の仕方をしなければどうしようもない状況になりつつある。

中間管理職、と言えば言える。ある人にそう言われて図星であるとともに少しショックであり、いやいや、もっと自分のやりたいことを突き詰めないと!と感じたりもしたが、この本を読んでもう一度考え直した。

すごいことをやるためには、その時間が必要だ。自分でなくてもできること、かつまわりの人の成長に寄与しうるようなことは、チームでやってもらうべきだし、そのための「中間管理職」的な仕事を厭うべきではない。

この本の狙っているところ、これを読んでためになる読者のタイプは、以前に読んだ「プレイングマネジャーの教科書」と似たところがある。違うところがあるとすれば、「プレイングマネジャー」は、上司や部下への言葉のかけかたとか、演技の仕方、コミュニケーションの取り方というところに重点があるが、この本はもう少し具体的な仕事の振り方について書いてあるところだ。

自分がやっている、誰より知っている仕事を、どうやって「まだ自分の仕事と思っていない」年下の同僚に振っていくか。結局自分がやってしまい、部下は指示を仰ぎにくるだけ、という状況はよくある。それは、まだ「これは私がやらねばならない仕事だ!」というところまで感じられていないからだ。どのようにそう感じてもらえるようにするか、というところがこの本ではとても具体的に書いてある。

例えば、仮説をつくるまではぱっぱと自分でやる。できた仮説を隠しておいて、部下と話し合い、自分は少しとぼけて、知らない振りをして一緒に考えてもらう。部下の意見を取り入れつつ、「みんなで思いついたこと」としてプロジェクトを進めていく…。
いやはや、もっともである。ミーティングのしかたや間隔というところも含めて、とても腑に落ちるものがある。上司としてのプライドなど捨てて、一緒に並走していく覚悟。それは、自分の中にある根本的な自信があればこそ、かもしれないが、とても大事なことだ。そういう上司の姿をみて、「私がやらねばダメじゃないか」「助けてあげないと仕事がすすまないな」と思ってくれる人が増えてくればよいのである。

方法としては、いわゆるコーチング、というものに入るのかもしれないが、難しい言われ方をされるよりも、実体験として書かれたこの本のほうが、とても読みやすくそのやり方にも納得がいくと思う。

自分で仕事をばりばり進めるのは得意だが、他人に仕事をやってもらうのがあまり得意でなかった、という著者の独白と経験が比較的ページ数を割いて語られるところも、なかなか一歩踏み出せず、自分を変えられない読者に、昔の自分を見るように語りかけてくれているようで、いい。