菱形三十面体のCG

・正十二面体と菱形三十面体
  
 菱形三十面体は,合同な黄金菱形30枚*1からなる多面体である。左図のように,正十二面体の各面に正五角錐を貼り付けることで作ることができる。隣同士で正五角錐の側面が面一になるので,構成面は菱形になる。正五角錐は12個で,それぞれ5枚の側面をもつから,12*5/2=30枚の菱形ができる。
 菱形三十面体のもとになる正十二面体は,実は立方体から作ることができる。上の右図のように,立方体の各面に,屋根状の五面体を貼り付けるのだ。立方体の各面に正四角錐を貼り付けて菱形十二面体を得るのと同じ要領だが,屋根の向きに注意が必要だ。この屋根は底面が正方形で,4枚の側面は三角形と台形が交互に並んでいる。隣接する屋根同士で,異なる側面が接するように屋根を90°ひねりながら貼り付けていく。そうすると隣接屋根の三角形と台形が面一になって,正五角形の面が得られる。

・菱形三十面体と二十十二面体

 菱形三十面体の頂点は,鋭角ばかり集まるものが12個,鈍角ばかり集まるものが20個である。前者は同心に配置した正二十面体の頂点と一致し,後者は正十二面体の頂点と一致する。
 この正十二面体と正二十面体の複合多面体の凸包が菱形三十面体であり(左図),正十二面体と正二十面体の重複部分が二十十二面体である(右図)。二十十二面体は菱形三十面体の双対多面体*2であり,準正多面体*3の一つである。
 二十十二面体は,正十二面体の各頂点を,稜の中点まで切頂したものともいえるし,正二十面体の各頂点を,稜の中点まで切頂したものともいえる。正三角形の面を20枚,正五角形の面を12枚もつ。



・菱形三十面体と接球

 菱形三十面体は,内接球と稜接球をもつ。多面体の内接球とは,すべての面に接する球,稜接球とは,すべての稜に接する球である。左図が内接球と菱形三十面体,右図が稜接球と菱形三十面体である。
 菱形三十面体が内接球と稜接球をもつことは,その双対である二十十二面体が外接球と稜接球をもつことに対応する。外接球はすべての頂点を通る球であり,内接球と外接球は双対関係にあるからだ。

 菱形三十面体は,外接球はもたない。正二十面体の頂点にあたる12個の頂点を通る球(左図)と,正十二面体の頂点にあたる20個の頂点を通る球(右図)が異なる径をもつためである。
 これと対応して,二十十二面体は内接球をもたない。正十二面体の面にあたる正五角形の面12枚に接する球と,正二十面体の面にあたる正三角形の面20枚に接する球は異なる径をもつ。



・菱形三十面体と斜方二十十二面体

 菱形三十面体(左図)を切頂していくと,アルキメデス立体*4の一つ,斜方二十十二面体(右図)が得られる。鋭角が五つ集まる頂点からの切口は正五角形であり,これは菱形三十面体を正十二面体で切り取ることによって実現できる。また,鈍角が三つ集まる頂点からの切口は正三角形であり,これは菱形三十面体を正二十面体で切り取ることによって実現できる。残りの面が正方形になるように正十二面体と正二十面体の大きさを調節すると,斜方二十十二面体が得られる。



・菱形三十面体と大斜方二十十二面体

 菱形三十面体をさらに切頂していくと,アルキメデス立体の一つ,大斜方二十十二面体(右図)が得られる。鋭角が五つ集まる頂点からの切口は十角形であり,これは菱形三十面体を正十二面体で切り取った面を,正二十面体で切頂することによって実現できる。また,鈍角が三つ集まる頂点からの切口は六角形であり,これは菱形三十面体を正二十面体で切り取った面を,正十二面体で切頂することによって実現できる。正十二面体と正二十面体の大きさは,各切口が正十角形,正六角形になるように,しかも残った菱形三十面体の面が正方形になるように,うまく調節しなくてはならない。

*1:対角線の比が黄金比,すなわち1:(√5+1)/2の菱形

*2:面と頂点を入れ替えた多面体。稜の数は等しい。多面体のすべての稜を,それと垂直な稜に入れ替えた多面体は,双対多面体である。

*3:二種の正多角形からなり,頂点が合同,稜も合同な多面体。立方八面体と二十十二面体の二つがある。

*4:複数種の正多角形からなり,頂点が合同な多面体。準正多面体を含み,全部で13種ある。