福田康夫首相は1日午後、衆院本会議で就任後初の所信表明演説を行い、
参院での与野党逆転を踏まえ「野党と誠意をもって話し合いながら国政を
進めていく」と表明、民主党との協調路線に軸足を置く姿勢を鮮明にした。
特に海上自衛隊のインド洋での給油活動継続は「国益に資する」として、
国民や国会の理解を得るため全力を尽くすと強調。構造改革は推進しつつ、
地域間格差など「生じた問題には処方せんを講じていく」と述べ、国民生
活の安全・安心を重視した「温もりのある政治」への転換を打ち出した。
ただ全体的に前内閣からの政策課題を列挙する新味、具体性に乏しい演説
で、閣僚13人を再任した組閣と同様に「守りの政権運営」を印象付けた。
首相は冒頭、安倍晋三前首相の国会中の退陣表明に伴う国政混乱を陳謝し
「今後、誠実な国会対応に努める」と明言した。

 

安倍前首相の突然の辞任表明で空転した国会がこれで正常化するかと言え
ば、なかなか難しいところであろう。福田首相も降ってわいたような総裁
選だっただけに、政策も何もあったものでは無く、安倍前首相が志した「
美しい国」のようなフレーズを所信表明演説の中に散りばめることは出来
なかったようだ。如何に慌ただしく新首相が決まったことの証明でもある。
地方切り捨てとされた小泉改革路線の継承では無く、地域間格差や国民生
活の安全・安心を重視するなどの内容は如何にも参院選での大敗を受けて
路線を変更したと言う、場当たり的なものにも見える。本来であれば、参
院選で与党が勝利していれば消費税増税を打ち出していたと思われるだけ
に、増税を明確に言えない状況は福田政権にとって、少なくとも良いもの
ではなかろう。閣僚の失言や政治とカネの問題で自爆した安倍政権の二の
舞とならないためにも「守り」の姿勢もやむを得ないかもしれないが。