Hatena::ブログ(Diary)

Coolな経済理論とWarmな金融実務のあいだ このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-03-01

日本経済の不況の原因は何か15〜ベキ分布を考える〜

無駄に為替の話が長くなっております。早く不動産の話に進みたいので、予定よりも簡素化して、為替の話を終わらせたいと思います。

前回の為替の話では、為替の動きは正規分布かなりよく近似が出来るということを述べました。では、どのくらいよく説明できるのでしょうか。

正規分布で説明できる為替の動きは95%ぐらいといわれています。「95%も説明できるならば、充分ではないか」と思うかもしれません。しかしながら、95%で説明できない、残り5%がときに大きな悲劇、例えば円キャリートレードを行っていた人たちにとってのサブプライムショック以後のような急激な円高、を起こしてしまうとどうでしょうか。説明できない5%がまさに壊滅的な損失を投資家に与えてしまうこととなります。

以下、「経済物理学の発見」より引用です。

 95%を占める小さな変動は、ランダムウォークの理論に近い変動なのですが、大きなスケールでの為替の変動にはほとんど寄与していないのです。 金融工学で中心的な役割を担っているブラックショールズのオプションの公式はノーベル賞の対象となり有名ですが、市場の変動を単純な確率モデルで近似して捉えているのは、この95%の小さな揺らぎの部分だけです。一番大事な大きな変動の部分をすっぽり無視してしまっていることになりますから、金融の現場では、この公式をそのまま使っている人はいません。

すなわち、95%は正規分布の動きで近似できているのですが、その部分は大きな変動がない部分であり、時に大きな変動を起こす5%は、正規分布では説明が出来ないということです。そして、本当に重要なのはこの5%の大変動を捉えることなのです。

上記のような動きを説明するのが、ベキ分布といわれています。ベキ分布とはどのようなものでしょうか。再び「経済物理学の発見」より引用です。

 岩石に衝撃を与えて破砕するとその破片の大きさの分布はベキ分布になることが知られています。ガラスのコップを固い床に落として割ったときに出来る破片も同じです。大きな破片はほんの数個で、中くらいの破片はかなりの数になり、小さな破片は無数にあります。目に見えないような小さな破片の数はさらに多くて、顕微鏡で拡大してみても同じような分布が観察されます。顕微鏡でも見えないくらいのほこりのような破片の数が最も多いので、1つずつの破片の大きさの平均値を求めると、事実上ゼロになってしまうのです。

 破片の大きさの標準偏差を計算すると、今度は小数の大きな破片の寄与が無視できなくなり、非常に大きな値になります。何桁も大きさの違う破片が混在しているのですからゆらぎの幅を表す標準偏差が大きな値になるのは当然といえるでしょう。

ポイントはベキ分布では平均はゼロ、標準偏差は非常に大きくなるということです。そして、95%は正規分布で説明できるようなちいさなゆらぎですが、残りの5%が壊滅的な打撃を与え、標準偏差さえも非常に大きくする桁違いの動きとなります。

多くの円キャリートレーダーは、95%の確率では小銭を儲けていたのですが、残り5%の大きな変動で一気に今までの儲けをすべて吹っ飛ばすような損失を被ったといえます。

続きは次回です。

<参考文献>

経済物理学の発見 (光文社新書)

経済物理学の発見 (光文社新書)

【コメント】

今回紹介したベキ分布については同書から引用しました。同書は、カオスフラクタルといった物理学の手法を活用して、データに基づいて実証的に経済事象を説明しようとする「経済物理学」について解説した本です。経済学ともファイナンスとも違った切り口で経済金融資産価格を分析する経済物理学の世界に是非触れてみてください。

スパム対策のためのダミーです。もし見えても何も入力しないでください
ゲスト


画像認証

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/REFEC/20090301/1235878435