無限集合のベキ集合の作り方は説明できない

無限集合のベキ集合を作る操作は有限では終わらないし、説明も有限の範囲では出来ない。ということに関して。


集合というのは何かの集まりのことで、aとbとcという3つの物があった場合に、
{a,b,c}
といったように書きます。


ベキ集合というのは、ある集合の部分集合をすべて集めた集合です。
部分集合というのは、ある集合の一部からなる集合です。一部という言い方をしますが、何も中身の無い空集合と呼ばれる集合や、もとの集合とまったく同じ集合も含みます。
だから、
{a,b,c}
という集合の部分集合は、
{}
{a}
{b}
{c}
{a,b}
{a,c}
{b,c}
{a,b,c}
の8つです。

この、8つの部分集合を全て含むのがベキ集合です。
{},{a},{b},{c},{a,b},{a,c},{b,c},{a,b,c}


無限集合というのは、中身が無限にある集合です。無限集合を表記するには、一部を省略して表記します。そうしないと、無限のスペースが必要になってしまいます。
{1,2,3,4,5,…}
これは、1、2、3といった自然数をすべて集めた集合です。自然数は無限にありますが、省略して表記することで、有限の表記で説明することが出来ます。


しかし、この自然数の集合のベキ集合を表記することはできません。*1
どうして自然数の集合のベキ集合を表記できないかというと、すべての部分集合を表記できないからです。そして、部分集合を求める方法も有限の範囲では表記できません。


有限の範囲の自然数の集合であれば、部分集合をすべて求めることも可能です。
{}
{1}
{2}
{1,2}
{3}
{1,3}
{2,3}
{1,2,3}
ここまでで、1から3までの集合の部分集合をすべて書きました。4までにする場合は、同じ部分集合をもう一そろい用意して、そこに4を入れていけば簡単にかけます。
{4}
{1,4}
{2,4}
{1,2,4}
{3,4}
{1,3,4}
{2,3,4}
{1,2,3,4}
これを5までにするのも、4の時と同様にここまでの部分集合をもう一そろい用意して5を追加していきます。
{5}
{1,5}
{2,5}
{1,2,5}
{3,5}
{1,3,5}
{2,3,5}
{1,2,3,5}
{4,5}
{1,4,5}
{2,4,5}
{1,2,4,5}
{3,4,5}
{1,3,4,5}
{2,3,4,5}
{1,2,3,4,5}
これ以降も同じようにやっていけば、このままどこまでも書けそうです。そして有限の範囲ならば、どんなに大きな自然数nを仮定しても、nまでの集合の部分集合をすべて書ききることは可能です。そのすべての部分集合を集めたベキ集合をつくることも出来るわけです。
でも、すべての自然数の集合の場合には出来ないんです。不思議ですね。


この場合の不思議というのは、任意のnで成り立つのにもかかわらず、すべての自然数の場合では成り立たないということです。初級レベルというか高校くらいまでの数学だと、任意のnで成り立つことをもって証明できたとしています。しかし、自然数の集合のベキ集合のように、任意のnでは成り立っても、それが可能であることの証明にならない場合もあるようです。


このあたりのことを理解するのが難しいというか、任意のnで成り立つのだけれども、それが可能であるという証明が成り立たない場合があるとすると、これまで任意のnで成り立つことをもって証明できたとしてきたものも、本当に証明できたといえるのかを検証しないといけないのではないかということを考えてしまいます。


以前に書いたもの
ZFとC
2つの集合
無限桁の自然数
有限集合の冪集合としての自然数

*1:ベキ集合を表す記号を決めることはできます。しかし、それはベキ集合を定義することとは別です。πという表記を決めても、円周率の値は定まらないのと似たようなもの。ただし、円周率の場合は、有限の範囲で求め方を定義することができます。