「“文学少女”と月花を孕く水妖」

――出会えてよかった。
あなたと同じ夢を見ることができて、よかった。
鏡に映る花のような、水に浮かぶ月のような、儚い夢でも。
いつか、目覚めがくるとわかっていても。


あらすじ

夏休みのある日。遠子先輩から突然電報で呼び出しをくらった心葉。訳もわからないまま姫倉麻貴の部下によって連れて行かれた先は山中の別荘。心葉は否応無しに遠子先輩の「おやつ」を書くためにそこに滞在することになる。
別荘に着いた翌日、遠子先輩と二人で観光に出かけた先で心葉は奇妙な噂を耳にする。
曰く「姫倉の別荘では80年前に大量殺人が起こった」。
曰く「それ以来、妖怪だの幽霊だのがまだうろうろしている」。
話に尾ひれが付いてるものの、実際に殺人事件はあったらしい。80年前と奇妙に符合する状況の中、姫倉麻貴は何かを企んでいるらしくて―


特別編?

心葉×美羽の問題も決着がつき、残るは遠子先輩の謎だけとなった文学少女シリーズ。本編最終巻の前に番外編での刊行です。今回のお題は泉鏡花の『夜叉ヶ池』。番外編ということで、軽めのコメディ寄りのエピソード集みたいな形になるのかなーと思ってました。そしたらあら意外、かなりガチにいつもの文学少女風味の展開+挙句の果てには本編最終巻のプロローグ的な内容をも含む始末。時期はズレてるもののかなり本編ライクに話は進みます。
ただ、今回はあくまで特別編であり、単体で見ると本編ほどのパワーはないかな、という印象も。心葉が積極的に物語に関わってこないのと、お話自体は過去のお話で既に終わってしまっているというのが原因かなぁ。あと時期設定が本編2巻の直後という設定なのですが、本編2巻のお話を忘れてしまっているのが麻貴の心情を読み解く上で痛かった。まぁ、これは自分が悪いのだけど。
そして、今回の肝であり、ある意味これは卑怯だろwというのが恒例の独白部分。いつもはミスリードを利用してトリックを仕掛けるために使われることが多かったのに対し、今回はミスリード自体はあるもののミスリードしたままでも特別編単体では最後まで問題無かったり。ラスト2ページの衝撃はともかく、そこまで読んで書き手を理解した上で改めて見える意味といったら!なんか結末確定な気もするけど!
ただ、この感想も5巻まで読んだ上での感想なのだね。時期的には2.5、とはいえ2巻の後に読んだら引きを含め果てしなく微妙な気が。1から読むならやはり刊行順に読んで特別編の前に2を復習ってのがベストかもと思った。
4757739184“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫 の 2-6-6)
野村 美月 竹岡 美穂
エンターブレイン 2007-12-25