「メグとセロンI 三三〇五年の夏休み」

「ところで――、ソフィア君」
「なんですか、部長」
「新聞部について、新聞について、やけに詳しかったね」
「え?……ええ、まあ。それが何か?」
「いや――。別にいいんだけど……、助かったけど……。ひょっとして……。いや……」
「なんですか部長。言いたいことがあるのならはっきり言ってください!」
「ソフィア君、その新聞――、実は結構楽しんでいたんじゃない?」
「…………」
「そ、そんなことはありません!――部活を続けます!部長なんだからしっかりしてくださいっ!」


あらすじ

絵画の授業で一緒だったメグに片思い中のセロン。だが、声をかけるきっかけを探しているうちに学園は夏休みに突入してしまう。いつもは実家で大人しく夏休みを過ごすセロンだったが、今年は親友のラリーの誘いもあって演劇部の合宿のお手伝いに参加することに。自分達と同様に管弦楽部とコーラス部も今回の合宿に協力しているらしい。そして予想もしていなかったことに、コーラス部の参加者の中には意中の相手であるメグがいて―


ほっとする

セグとメロンって間違いそうなタイトルだな、これ。
時雨沢恵一の新シリーズ、で合ってるのだけど。
今は優先度高くないとはいえ、やはり当時『キノ』は衝撃でした。感銘を受けましたよ。そして時は流れて『アリソン』やら『リリアとトレイズ』やら新シリーズが出てきたわけですが、ほおって置いたらどちらも順調に巻数が増えて1から読むにはちょっと躊躇する量に。でも、最近の時雨沢恵一を見てみたいということで、このシリーズには期待をしていたのです。3305年って未来っぽいし!聞いたことない名前で全くの新シリーズみたいだし!上下ってことは最短2巻で完結で手を出しやすいぜ!と。…Iは見えてなかったようです。で、実際に読んでみたら…リリアとトレイズ』のスピンオフ物でした。「裏切ったな!僕の気持ちを裏切ったな!」とか一瞬脳裏に過ぎりましたが…まっったく事前知識なしでも普通に読めました。関連作品読んでおいた方が楽しめる部分は勿論あるのでしょうけど。
ド安定、鉄板、まな板…そんな感じ?面白いか否かは好みだけど、この印象にはあまりブレはないんじゃないかなぁ。作者も作品も内容は安定してます。誤字?がちらほらあったけど。
まず一つ言いたい。主人公であるメグとセロンお前ら地味だ…だがそこがいい
メグは実は活動的?らしいのだけど、<上>ではそんな描写はまだ見られないので、今のところ大人しいお嬢さんしてます。対してセロンの地味っつーか大人しさはガチ。登校途中に話しかけようとしてタイミングが掴めずに断念するとか、学食で偶然同じメニューを選んで嬉しがるとか、「一緒にいるだけで今は幸せ」発言とかお前は一体どこの乙女ですか。顔良し、成績良し、性格良し、といった完璧超人なのに…!ああもう可愛いよセロン可愛いよ
…なんか暴走しましたが、要は地味で小規模な恋愛模様もいいものだ、と。突飛な性格のヒロインとか設定とか、感動的に盛り上がる、若しくは胸を刺す恋愛ってのもそりゃーいいものですよ。けど美味しいものも食べ過ぎると飽きがくるわけで。このお話の恋愛模様は今の所、淡い恋心…ってある意味恋愛未満な代物なのだけど、その初々しさにどこかほっとした。少し癒された。ありがちですが、主人公の恋愛成就に協力する友人達…ってのもやっぱいいよね。
ベタなのはわかってるけどさ。
4840241848メグとセロン 1 (1) (電撃文庫 し 8-24)
時雨沢 恵一
メディアワークス 2008-03-10