偽書作家列伝

偽書作家列伝 (学研M文庫)

偽書作家列伝 (学研M文庫)

偽書作家列伝』種村季弘(学研M文庫)読了。
中学から高校の頃は、けっこう澁澤とか種村季弘のオカルトエッセイ(河出文庫の)を読んでたんだけど、久々だな。


大好きなサルマナザールとかポイニッチ写本の話かと思ったら、ちと違った。
3部構成になっていて、有名作家関連の偽書、歴史上の人物に関する偽書愛国心から生まれた偽書、てな具合。
中でも気に入ったのが、フランスの大数学者シャスルを騙したリュカの話。
リュカの作った贋物は、ほとんどが有名人の書簡。カエサルクレオパトラ、ユダ、ピラト、ジャンヌ=ダルク……
それが、揃いも揃ってフランス(ガリア)万歳の内容で、そんな2000年近く前の手紙を信じるかいな、と思いそうなものの、
シャスルはなぜか信じてしまったのだ。
そして、パスカルニュートンよりも35年前に万有引力を発見していたという内容の手紙を買って事件は発展する。
シャスルがこの万有引力の発見の事を本にしてしまうのだ。
こうして、アカデミーで真贋論争が繰り広げられる。
毎日のように未発見の書簡、ガリレオやポンパドゥール夫人の手紙が発見されて辻褄合わせがされていくが、
書簡の元ネタが発覚し、さらにすべてがひとりの筆跡ということが証明されて、
シャスルは観念し、リュカは逮捕される。10年間に3万通の手紙を書いたそうだ。


偽書屋は金目当てもあるんだろうけど、歴史を思いのままに書き換えていくって言うのがたまらんのだろうね。
今じゃ、ネット上に流れたウソは、そのまま本物になっちゃう情報時代。
ウソもホントも両方とも現実になる時代としては、読むべきかも。
エッセイだから読みやすいし、知識も詰め込まれてる。
フェイク好きの人にオススメ。