業務日誌

2014-07-30 水曜日(晴)@所沢

[]MEET ME IN THE MOON ROOM

『月の部屋で会いましょう』レイ・ヴクサヴィッチ〈創元海外SF叢書4〉

こうしてぼくたちは休暇を過こすために、だれもが常に巨大な金魚鉢を持ち歩かねばならない世界テレポートする――不思議なバカンス顛末(休暇旅行)、肌が宇宙服になって飛んでゆく奇病に引き裂かれる恋人たち(僕らが天王星に着くころ)、彼女の手編みセーターの中で迷子になる男(セーター)……不世出天才作家による、とびきり奇妙だけれど優しく切ない33編の奇談集、待望の邦訳。2001年フィリップ・K・ディック賞候補。


・「僕らが天王星に着くころ」

・「床屋テーマ

・「バンジョー抱えたビート族」

・「最終果実

・「ふり」

・「母さんの小さな友だち」

・「彗星なし」

・「危険の存在」

・「ピンクの煙」

・「シーズン最終回

・「セーター」

・「家庭療法」

・「息止めコンテスト

・「派手なズボン

・「冷蔵庫の中」

・「最高のプレゼント」

・「魚が伝えるメッセージ

・「キャッチ」

・「指」

・「ジョイスふたたび」

・「ぼくの口ひげ」

・「俺たちは自転車を殺す」

・「休暇旅行」

・「大きな一歩」

・「正反対」

・「服役」

・「次善の策」

・「猛暑

・「儀式」

・「排便」

・「宇宙の白人たち」

・「ささやき」

・「月の部屋で会いましょう」

『変愛小説集』*1でお会いしてから、短篇集出ないかと願い続けて幾星霜。


一時期、短いから自分で何とかならないかと原著*2を買ったほど。「床屋のテーマ」を訳してみたんだけど、自分の英語力のせいなのか、やっぱり変な話のせいなのか、それとも両方が原因なのか、とにかくまるで内容が掴めず。


それがとうとう明らかに! ……やっぱり、わけわからん話でしたわw


短篇集が出るのは本当に嬉しかったんだけど、はたと気づく。

同じような話ばかりで印象が薄れるのでは? 収録数からわかるように、一作が短いし。

その危惧は結構正しかった……

アンソロジーで出会った強烈さはないんだよなぁ。

面白かったのは確かなんだけど、こう題名を見返しても内容があまり思い出せない。

そんなわけで、半ば再読しながら感想を書くことに。


お気に入りは、

・「僕らが天王星に着くころ」「セーター」「ささやき」は既読

「ささやき」はやっぱ怖いなぁ。


・「最終果実」

子供の時の友達だった少女は、今では頭から木を生やした巨大な肉の塊になっていた。

その木に何とかして登ろうと考えるが……

本書で、トップレベルの奇想力を放っているのがこれだと思ってる。

よく考えつくよなぁ。


・「ふり」

毎年、新しいしきたりを考えるグループ。

今年はくじで選ばれた人間を幽霊だと思い込むことにするが……

いじめっ子が復讐される話と読めなくもないけど、ラストは「ささやき」と似た怖さがある。


・「母さんの小さな友だち」

ナノマシンによって不老不死を目指す女性研究者。

しかし、ナノマシンたちは自身の世界の安寧のため、活発だった彼女をすっかり認知症のように作り変えてしまい……


・「彗星なし」

彗星が地球にぶつかると信じている男。

彼は、観測によってそれが変えられると考え、空を見ないように紙袋を被るが……

強迫観念的な展開の末に、『蝿男の恐怖』*3のショッキングなSF感が待っている。


・「ピンクの煙」

万引きが得意で、それが習慣になっている元彼女。

結局、彼女は刑務所に入ることになったが……


・「家庭療法」

殺虫剤、アイスピック、ペンチを用意して洗面所に立つ男。

おもむろに、鼻の穴に殺虫剤を噴射すると……

イヤ度ではこれが一番。『変身』*4の変奏曲なんだけど、どうしてこうなる?w


・「息止めコンテスト」

息止めコンテストの決勝は、貧相な女。

どこかで見覚えがある気もするが……

気づいたら『スキャナーズ*5みたいなことに!(大げさ)


・「冷蔵庫の中」

家に帰ると、妻が紙袋をかぶってソファに座っている。

その理由は?


・「俺たちは自転車を殺す」

遠未来(?)、自転車と一体化した自転車人間を狩る人類。

捕まえたら、ボルトカッターで切断するのだが、仲間の一人が……


・「次善の策」

元宇宙飛行士の遺体を盗んできたその恋人。

彼女は、サーカスの大砲を使って、彼を弔おうと考えているらしい……


・「猛暑」

家の向いを双眼鏡で覗くと、そこには美女がいる。

その声を聞いてみたいと思うが、彼女は何光年も彼方にいる異星人で……


乱暴に全体をまとめちゃうなら、「閉塞」を描いた作品が多い。

全身、特に顔をすっぽり覆われちゃう話が目立ち、なんらかのオブセッションを抱えているのかと思いたくなるほど。

さらに、そこからの解放が破壊的なんだよね。宇宙に飛んでっちゃったり、並行世界に行っちゃたり、現状からの逃避先が自由や幸せとは限らない。

掌編と言ってもいいような短い作品なのに、そのオープンエンドに無限の奈落を感じる。

笑っていいのか、ぞっとするべきなのか、その逡巡が向こう側に落ちる隙を与えてしまう。


また、女(というか妻)は理解できんな、という話も多いのは、作者の心情?w