ストーリー・ガール
- 作者: モンゴメリ,木村由利子
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/01/23
- メディア: 文庫
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- 作者: L・M・モンゴメリ,木村 由利子
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/09/25
- メディア: 文庫
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まるでベバリーやストーリー・ガールと共にキング農園の夢見るような美しい風景を目の当たりにしているような気にさせられるのは,さすがモンゴメリの(そして訳者の)表現力だと感じ入る。
しかし,本当に角川文庫は何を思ってこの作品に「すべての夢見る女性に贈る、『赤毛のアン』のモンゴメリ究極のラブ・ストーリー!」などという的外れな帯を纏わせたのか,全くもって理解に苦しむ。私から見ればこの帯の文言は作品を台無しにするものだ。「もう一つの赤毛のアン」なんて呼び方も意味不明。「ラブ・ストーリー」というジャンルはこの物語の主題とかけ離れているし,「夢見る女性」などという表現は陳腐すぎる。通販で買ったからよかったが,書店でこの本を見かけたのだったら,「究極のラブストーリー」とか「夢見る女性」に引いてしまって手に取ることは無かっただろう。
思春期の初期によくある淡い痛みのようなラブは物語の中にある程度散在しているが,物語全体に行き渡る愛はアガペーだ。私はラブ・ストーリーに興味を持つたちではないからそれが無くてもがっかりしないが,逆に,この帯を見て『アンの愛情』に描かれるアンとギルバートのような物語を期待した読者なら失望するだろう。今は昔のカナダの農場での子どもたちの生活と,当時の宗教観や社会観,人々の暮らしが描かれた物語である。私は面白く読んだし,『ストーリー・ガール』の読後,早くみんなに会いたくてすぐに次の巻を紐解いたのだが,人によっては退屈な物語かもしれないと思う。