チキンパーティー - そうだ、まずはパンツをはこう。

【ネタ】…マンガ　チキンパーティー（2001-2006）　作：金田一蓮十郎
　
【説明】…月刊プリンセスで連載されていたコメディ漫画
１人で暮らす中学生・毬央（まりお）の家に、ある日突然「トリ」と名乗る着ぐるみのような巨大な鳥が押しかけてくる。
トリは１人暮らしの毬央の生活を心配し、強引に毬央の家に住み着くことに…
そして持ち前のおせっかいで、毬央だけでなく様々な人達の悩みを聞き、それを解決（？）していく。
現代人の心の隙間を究極のポジティブシンキングで埋めていく新感覚パニック・コメディー。

　
【独断】…トリ好きにおすすめ
大体『神聖モテモテ王国』と同じような感じの作品である。
変な生き物が１人暮らしの中学生の家に勝手に住み着いて、街中をウロウロして、色んな人にちょっかいを出して、逮捕されたり殺されたりする話だ。
　
このマンガの主人公の１人「トリ」は、とにかくお節介で、困っている人・傷ついている人を見掛けたら放っておけない性格をしている。
トリは、中学生ながらに家庭の事情で１人暮らしをしている毬央（もう１人の主人公）のことを勝手に心配し、勝手に家に住み着き、勝手に世話をし始める。
そして、街に出れば、迷惑を省みずあかの他人の悩みに首を突っ込んでいってしまう。
小さな子供、仕事で煮詰まる女性、寝たきりになってしまった老人、思春期のカップル…彼らのプライベートな悩みに遠慮無く、それはもう遠慮無くドカドカと踏み入って行く。
　
基本はコメディで、ボケのトリとツッコミの毬央という図式でギャグを交えて話が展開されるのだが、このマンガに出てくる人たちの悩みはかなりリアルで生々しいものが多い。
家庭のすれ違い、宗教の違い、他人からの嫉妬、同性愛、恋人に対する愛情表現、等々、どれも一筋縄ではいかないものばかり。ともすれば、半端に首を突っ込んでそれらしい正論を言っても当事者の怒りを買うだけになってしまう。
そんな悩みの数々にトリはどう対処するのかというと、堂々と首を突っ込み迷い無く正論を言ってのけるのである。
　
トリの悩み相談は、基本、鏡だ。
相手の悩みを理解した上で（勘違い含む）、「今の自分を否定することないじゃない」「キミは本当はこうしたいんじゃないの？」という具合に、その人がちょっとだけ気付かなかったこと、あるいは気付いていたけど目を向けていなかったことを、柔らかくポジティブにアドバイスしていく。
もちろん相談者だってみんな素直にトリの言う事を受け入れるわけではない。
しかし、トリは優しく“正論”を言い続ける。「わかっちゃいるけど上手くいかない」の「上手くいかない」部分をも肯定して相談に乗る。相手はそこでダメな自分の姿と本当にありたい自分の姿を見つめ直すことになる。
　
金田一先生は、どの作品でも人のあり方について相当マジメに考えられていて、それにギャグを交えてきっちりとエンタメに仕上げ、読者にメッセージを発信している。
たまにギャグの中和が負けて説教臭くなってしまうこともあるだが、この『チキンパーティー』はそれを逆手にとって、とにかく堂々と説教しまくる。トリは究極的にお節介で、絡まれた方としては「偽善的」と感じたり、それこそ「説教臭い」と感じることも多々あるのだが、そんなことはお構いなしにとにかくなんでもかんでも世話を焼く。
で、無闇やたらと独善を働くトリ自身にもキッチリとツッコミが入り、またきちんとギャグに復ってくる。
　
このマンガは、普通の人間ではなく不格好で正体不明な「トリ」がお節介を焼くところがイイのだと思う。
というか、どんなに優しくたって普通の人間が突然プライベートな問題に近づいてきたら、誰しも拒否反応が出るだろう。よく解らないふざけた着ぐるみ野郎がアドバイスをしてくるからこそ、相談者は自分自身と向き合える。
もちろん、トリ自身にも秘密があるので、それは物語のお楽しみに。
　
もう１人の主人公・毬央もまた魅力的だ。
両親と疎遠で１人で暮らしている毬央だが、腐らず、強く、誇り高く生きている。…で、たまに凄く女の子らしい面も見せる。
金田一先生の描く「女の子をしている女の子」っていつも凄く可愛くて、上手いなぁと思う。『ハレグゥ』のときもそうだが、女子トークやラブコメ描写のときは画面が凄く活き活きしている気がする。…金田一先生、多分、変態なんじゃないだろうか。
　
というわけで、人生にちょっと疲れている、ちょっと悩んでいるそこの貴方にオススメです。
こんなトリが近所にいたらいいもんだなぁと思う。
ちゃんとギャグマンガしているし、全３巻と短いのでお気軽にどうぞ。
…それにしても、今回のエントリー、ほんと、なんらオモシロを挟もうとしていないな。やばいなこれは。疲れているのか…？
俺にもトリが必要だ。
　
おわり