東君平さんの言葉

昔々の学生の頃、 『詩とメルヘン』 という月刊誌を毎月買っていた。
厚い紙を使った贅沢な雑誌。今はこんなグダグダ日記を書いているが、物書きや言葉に関わる仕事をすることが夢だった私にとって、詩とメルヘンは大事な大事な月刊誌だった。アンパンマンの作者やなせたかしさんが編集していて、一般から詩を公募し、採用されると、その詩にプロの作家が詩に合った画を付けてくれる。
今のように、パソコンや携帯電話が普及する前の時代。自分の文章が活字になるだけでも夢みたいなのに、それに画がつけられるとは!あの頃、おおた慶文さんが描く少女の画が大好きで、いつかわたしも慶文さんに画をつけてもらうんだ!と意気込んで投稿し続けたものの掲載に至らぬまま、詩とメルヘンは2003年に休刊してしまった。


詩とメルヘンには、大好きな東君平さんの 「くんぺい魔法ばなし」 というページがあった。誰もが一度は目にしたことがあるであろう、君平さんの画。 「くんぺい魔法ばなし」 は後にまとめられ、3冊の本になっている。優しさがいっぱい詰まった短い詩と、可愛らしい画。何度、読み返したか分からない。
詩とメルヘンを買うと、ペラペラと全ページをめくる。また自分の詩が採用されていないと分かるとすぐに、君平さんのページを開いたっけ。


もうン十年前のことなので記憶が曖昧だが、確か詩とメルヘンの最後のページに、いつも君平さんの同じ言葉が載っていた。

「おねがい」


なつかしがっては いけません
だいじな おもいで うすれます


さみしがっては いけません
ほんとの なみだが でてきません


かなしがっては いけません
みているひとが つかれます


この言葉が持つ意味を、バブル前後期の浮かれた自分がどう理解していたのかは覚えていないが、なぜか心に残った 「おねがい」 。あの頃から毎年ずっと、手帳を買うと必ず、いちばん最後のページに書いている。特に最後の 「かなしがっては  いけません」 は、生活している中で、常に意識していた。そして今でも。
一見、ストイックな感じの、冷たい印象の 「おねがい」 。でも今なら何となく、君平さんが言いたかったことが分かるような気がする。


言葉って、発することも受けることも、すごく難しいんだなぁ。同じ言葉でも、時代や年齢、性別、環境、置かれている情況によって、受ける印象が全く違うんだもの。
だから 「言葉」 は面白い。




・・・今日の重量【前回比−0.2kg、基準日比−0.2kg】 ← またちょっと頑張るのだっ!イヒヒ。