ノルウェイの森(評価:なし)

・・・

―――――――――――――――――――――――――――――――
※※※ 注意 ※※※
「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。
これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。
―――――――――――――――――――――――――――――――
 
1.評価
見解の相違
評価なし
(★…1点 ☆…0.5点,★5つで満点)
 
2.基本情報

 
(2010年/東宝/133分)
 
監督   :トラン・アン・ユン
脚本   :トラン・アン・ユン
原作   :村上春樹
出演   :松山ケンイチ
      菊池凛子
      水原希子
      高良健吾
      霧島れいか
      初音映莉子
      玉山鉄二
 
3.コメント
この作品を観に行くべきかどうかについては、制作が発表された2008年からずっと考え続けていた。仮に作家のファンと言うのが、その作家の大抵の作品を恒常的に読んでいることを示す言葉だとすれば、僕は間違いなく村上春樹のファンだし(大抵ではなく全て読んでいる)、この作家の作品を映像化することの難しさは過去に発表された作品が証明しているし、この作品に羊男やジョニーウォーカーのような捉えようのない人物が登場しないからといって、それが映像化のハードルを下げることにはならないような気がしていたからだ。
つまり、乗り気ではなかったということ。どうしてもしてしまう期待が外れることは、観るまでもなく半ばわかっていることだし、正直にいえばこの作品を映像化したいという監督の気がしれない。よくもまあ進んでこんな困難で勝ち目のない勝負を挑むものだと思う。
それでも結局観に行くことに決めたのは、どうせいつか観てしまうのだったら、せめて劇場で観ておきたいと思ったからに他ならない。
 
原作は上下巻に渡る大作で、登場人物も数えてみると結構多く、ストーリー(というよりはエピソード)も多い作品である。
そのどこを映像化するか。或いはどこを映像化しないか。映像化に僅かな勝ち目があるとすれば、この作品の監督に、写真で言うところの「引き算の美学」が備わっているかどうかが分かれ目になるだろう。実際に観賞するまではそう考えていた。しかし、思いもよらないところでつまづいてしまった。
 
物語の最初から、この監督のボタンと僕のボタンが引っかかる位置が違っていたのだ。
この映画を観るまで、キズキの自殺の原因が直子であるという可能性すら考えたこともなかった。キズキと一卵性双生児のようにこの世に生まれてきた直子は、僕の中ではただただ自分の片割れがいなくなったことにより世の中との接し方がわからなくなってしまった女の子でしかなく、キズキの死因やワタナベとの関係に苦悩するような女の子ではなかった。
あーいや、この表現は少し違うな。彼女が深い闇に入ってしまった本質は、わからないキズキの死因やワタナベとの関係が必ずしも重要なことではなく、彼女はただただ途方に暮れてしまっていたのだと思っていた。
 
だから、善し悪しの前に「ああ、この物語はそういう捉え方もできたのだな」という風に、まずは監督の言い分を納得した。そうなるとこれは単なる見解の相違だ。菊池凛子の演じる直子が全然しっくり来ない理由にも、物語の脚色全体がおかしな方向に進んでしまっているのも、あるべきシーンが削られ、必ずしも必要でないストーリー(2時間枠で語るためには捨てるのもやむないシーン)が生きているのも、全て見解の相違なんだろう。
 
とまあ、そんな風に割り切れるものでは勿論ないのだけれども、この映像を「僕のしらない『ノルウェイの森』である」という落とし処に落とすことによって、それ以上の思考を停止してしまったとも言える。正直、そうでもしないと耐えられなかったし。
 
そんなわけで、僕にとってキズキの自殺の原因は未だ以て不明なままだし、この作品に対する客観的な評価もあえてしない。ただし、仮にこの作品の原作が『ノルウェイの森』でないとしたら評価はすこぶる低くなるだろう。原作を読んでいることが前提のストーリーの端折り方はそれぐらい凄まじかったし、村上作品の映像化としては、描写が全般的にグロテスクに過ぎる。(これならば『トニー滝谷』の方がまだ作品の雰囲気に忠実だった。)
 
ワタナベを演じた松山ケンイチとミドリを演じた水原希子はとても良かった。菊池凛子にいじわるをして冒頭の写真をワタナベとミドリにしちゃったぐらい良かった。
 
 
さてけなしてばかりいても仕方ないので(けなしていたのか)、最後にもし僕の知っている『ノルウェイの森』が映像化されるならば、ぜひとも入れておいて欲しいストーリーが幾つかある。同様に思いきって端折るべきシーンも掲載しておこう。
 

是非とも入れておいて欲しいシーン

  • 20歳の誕生日に話しても話しても止まらなくなる直子
  • ワタナベに「どれぐらい私のことが好き?」と尋ねるミドリ
  • ミドリのお父さんと胡瓜を食べるワタナベ
  • 悲しくないお葬式
  • 「ねえワタナベくん、あれしよ」というレイコ

 

思い切って端折っちゃっても良いシーン

  • キズキが自殺するシーン
  • 自殺しちゃった直子のシーン
  • 突撃隊に関わるエピソードすべて
  • 永沢さんとハツミに関するエピソードすべて

 
ああそうそう、もひとつ忘れていた。

  • 無理矢理オーディションに参加して、よりによって直子役に志願しない菊池凛子

  
やっぱけなしてんじゃんか。 
 
5.2010年度ランキング(10/16時点)
(1)ベスト10
  1 トイストーリー3
  2 悪人
  3 ソラニン
  4 SP 野望編
  5 Knight & Day
  6 劇場版TRICK 霊能力者バトルロワイヤル
  7 告白
  8
  9
 10
 
(2)ワースト3
  1 踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!
  2 映画ドラえもん のび太の人魚大海戦
  3

(3)ランク外
  ノルウェイの森