真剣に触ってみて分かったFinal Cut Pro Xの使い勝手


このブログでも触れたけど、ここ二ヶ月くらいFinal Cut Pro X(以下FCPX)を真剣に触っていた。その編集作業が一旦完了したので、ここで備忘録的にFCPXの善し悪しについて記しておく。
なお、現時点でのバージョンは10.0.3であり、今後のバージョンアップによる機能拡充・バグフィクスはあると思われます。

画面インタフェースは抜群

iMovieから成り上がった人は、まず機能の多様さにびっくりすると思います。僕はびっくりした。しばらく使っていて、それが普通になってしまった後でiMovieに戻って来たりすると、かつてはあれほど使いやすいと思っていたiMovieが使いにくくてしょうがないと思うレベル。


具体的に幾つか挙げると。

  • クリップをタイムラインにドロップした後で、採用する場所を選べる。カットの長さも変更できるし、カットの長さは変えないままスタート/エンドのタイミングを変更することができます。
  • CPUのアイドリングを利用しレンダリングを行ってくれるため、最終的な動画書き出しの時間短縮が機体できる。
  • タイムラインの上下関係(レイヤー)が視覚的で、複雑な重なり合いでも迷う事がない。
  • iMovieに比べ、全体的にカスタマイズ可能な領域が増えており、標準のエフェクトやテロップをいじくるだけで「いかにも」じゃないレベルまで引き上げる事が出来る。


↑因みにFCPXの画面はこんなイメージ。結構複雑に見えるかもしれませんが、僕が作った動画のタイムラインの複雑さは、こんな生易しいレベルじゃなかった。

メモリ管理は苦手

ずっと起動していると、どうしても動作がもたつき始めます。それでも放っておくと、耐えられないレベルまで動作速度が落ち込む。メモリ管理が下手くそというのが根本的な原因かと思われ、これは今後のバージョンアップに期待したい。
現状、快適な速度を保つためには、定期的に上げ落としをする必要があり、これが不満と言えば不満。

まだまだ不安定

他の方もレビューしている事だが、体感としてはバージョンアップを経る度に不安定さが増す傾向にあります。実質的にまだ産声をあげたばかりのソフトであり、バージョンアップはバグフィクスというよりは不足機能拡充のためのリソースが目立ちます。要は、まだ仕様が安定していないということ。これは楽観的に今後に期待します。
とは言え、特に10.0.3のバージョンアップに伴うプロジェクトファイルの移行に当たっては、僕自身洒落にならない不具合に直面しており、その点では注意が必要。(詳しくはこちらを参照)
現時点では、こまめなバックアップと、余裕を持ったスケジュールが必須です。でないと僕みたいにマスタアップ直前の1週間は徹夜する羽目になります。

アウトプットが苦手

僕もそうだったけど、とりわけコンシューマの間では、未だに最終的な出力先がDVDやBlue-rayなどの媒体が主流である事は間違いないでしょう。
FCPXをはじめとする製品群は、このあたりの取り回しがとても苦手。
特に痛いのが次の点。

  • FCPXでチャプターマーカーが設定できない。
  • 仕方なくCompressorに持ち込みチャプターを設定するのだが、CompressorのDVDオーサリング機能は子供騙しレベル
  • なので、現実解としてiDVDに持ち込むのだが、こちらはチャプターマーカーの設定が大雑把(30秒に1度とか現実的じゃない)
  • 以上より、apple製品でチャプター付きのDVDを書き出すためには・・・

(1)FCPXで全ての要素を結合した動画を編集
(2)Compressorで書き出し時にチャプターを設定
(3)その後iDVDに持ち込みオーサリン
・・・という手筈を踏むことになります。FCPXには単独で書き出し機能があるにもかかわらず。
このあたり、未だに役割分担の考え方が不明瞭なんだと思われます。恐らく、CompressorがFCPXの目指すアーキテクチャーに追いついていないのが主な原因。製品群のうち、FCPXとMotionについては賛否両論なのに対し、Compressorだけはおしなべて評価が低い事からも伺えます。
というわけで、Compressorが将来的に大化けする事を期待します。

総合評価

マイナス評価だけが目立つ結果となりましたが、最初のポイント「入力インタフェースの秀逸さ」が全てを補って余りある、というのが僕の結論です。このソフトが3万円を切った価格で購入できるのであれば、真剣にビデオ編集する機会かある方は購入すべきだと思います。
動画編集のようなクリエイティブな作業には、頼もしい相棒が必要です。ソフトができる事の限界を規定するのではなく、自分のできる領域は全てソフトがカバーしてくれているようなソフトがあればこそ、作品をクリエイティブなものに仕上げるための「チャレンジ」ができる。ビデオ編集ってのは時間的体力的なリソースをものすごく要求される作業です。どうせやるなら少しでも良い作品を残せた方が、投入したリソースに見合う満足を得られる可能性が高いでしょう。