アブナー伯父の事件簿/M・D・ポースト
アブナー伯父の事件簿 (創元推理文庫 179-1 シャーロック・ホームズのライヴァルたち)
- 作者: M.D.ポースト,菊池光
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1978/01/20
- メディア: 文庫
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しかし、ポーストのアブナー伯父ものが、そのような価値観を色濃く反映したシリーズであることは間違いない。アブナー伯父は、キリスト教的・タカ派的な全く揺るぎない精神を持ち、神や正義への確信をもって事件に当たる。《偉大》を体現する人物であることは疑いなく、その禁欲的な信念には頭が下がる。作者の筆も、アブナーのキャラに相応しい真面目で力強いもので、骨太なタッチで《悪》との闘争を描出・演出する。
ミステリ的なネタは単純なものが多いけれど、古典を読まずに頭から舐めている人間が読んだら、捻りが利いていて驚くだろうな、という水準は維持している。個人的にはこれで十分だ。アブナーのような価値観は生理的にダメ、という人以外なら読み応え十分な小説であろう。でも、正義を描くなら、作者もこれ位腹を決めて書かないとね。