JF1DIR業務日誌(はてなblog版)

アマチュア無線局JF1DIRのアクティビティをつづっています。

電流帰還オペアンプによる広帯域高周波増幅回路

しばらく運用ネタばかりでしたが、偶には工作ネタです。前回高速オペアンプによる無線機回路を実験しました。7MHz程度の周波数ならば電圧帰還の高速オペアンプでも+40dBくらいの電圧利得を稼ぐことができ、プリドライバ段に使えそうということがわかりました。オペアンプを使うメリットはいくつか挙げられますが、(1)利得を簡単に設計通りに調整できる、(2)同調回路を使わずに低歪な増幅器が得られる、(3)コイルレスで外付け部品が少なく実装面積が小さい、などが挙げられます。FCZコイルが廃版になった現在、なるべくならコイルレスで低歪な回路を実現したいところです。
高周波のアナログ回路(センサーやADコンバータなど)では電流帰還オペアンプが多用されていますが、アマチュア電子工作界隈ではあまり一般的でないようです。入手が難しいのと表面実装品が多いのが理由かと。それでもいくつかは入手が容易な電流帰還アンプがあるのでこれらを集めて短波周波数帯での増幅特性を調べてみました。DDSの出力から0dBm(1mW)へ持ち上げるプリドライバ段に使うことを想定してます。

まずはコントロールとして伝送線路トランスを使った1石広帯域小信号アンプです。2SC1906と似た特性と言われているフェアチャイルド社のSS9018をトリファイラ巻のFT-50#43を負荷に用いると(トロ活154ページのものと同じ)、7MHzで約35dBの利得が得られました。しかし出力5dB(3mW)くらいになると飽和してしまい、また歪が多く一段でプリドライバ段に使うのには厳しいものがあります。高次高調波の増幅特性は理論通りの傾きとなっています。

次は同調回路を負荷にした狭帯域小信号アンプで7mm角FCZコイルの2次側を50Ωで受けた時の結果です。約40dBの利得があります。18dBm(63mW)くらいまで頑張って出力してくれました。同調回路のおかげで0dBm時で約-50dB以下の高調波となることから、フロントエンドのプリアンプなどに使うと有用かと思います。

各種電流帰還オペアンプの特性を調べ以下の様な試験回路を組みました。電源電圧は9Vの単電源とし、高インピーダンスの非反転端子からの入力となります。電流帰還は電圧帰還オペアンプと違って帰還抵抗の値に制限があります。帰還抵抗を470Ωとしまし狙い利得を25dBとしました。電流帰還オペアンプはハイスルーレートで裸ゲインが高いので割りと自己発振しやすいので実装方法に注意が必要です。特に電源への信号の回り込みに弱い実装だと発振しやすいです。

まず入手が容易な電流帰還アンプとしてナショセミのLMH6702を試してみました。秋月電子通商で入手可能で2ケで300円とリーズナブルです。このアンプはなかなかの性能で出力10dBm(10mW)までリニアリティが高くまた0dBm(1mW)出力時にスプリアスが-45dBm以下に収まります。ドライバアンプとして使いやすそうです。高次高調波の増幅特性(傾き)が1石の時と異なるのは主に負帰還回路のせいです。

次に入手が容易だったのがTIのOPA694で150円くらいで入手可能です。やはり-50dBくらいの低歪特性がハイゲインで得られ非常にFBです。

次にDIP品でも手に入るアナデバのAD8001です。電流帰還アンプとして結構有名なのですが、ひずみ特性はワンランク落ちるようです。3次高調波のレベルが比較的低く抑えられているのも特徴でしょうか。

同じくアナデバの同ファミリーのAD8011は低消費電力タイプで帯域幅が狭い(-3dB帯域幅300MHz)せいもあり、ひずみ特性が悪く、3次高調波のレベルの方が目立つという結果となりました。

他にもいくつか試しましたが、だいたい似た特性になりました。入手性とお値段からLMH6702かOPA694が良さそうです。

なお、DIPへの変換基板は基板上の配線が入り組んでおり、高周波特性を悪化させます。SIPへの変換基板のほうが良さそうです。ご参考に。