立喰師列伝

夜、川崎のチネチッタ押井守監督の最新作「立喰師列伝」を観に行く。21:30からのレイトショウである。

興行的成功はもちろんのこと、観客の期待や感動などの一切を度外視し、監督が作りたい映画を作りたいように作ったという点で、商業映画としては稀有な作品だった。こういう作品の製作に商業資本が資金提供したということ自体が驚きだ。

私は、最初の「月見の銀二」のエピソードで早くも脱落した。映画を観ている間、時計をこんなに見たのは初めてである。監督自身がプログラム収録のインタビュー記事で認めている通り、映画は実質的には前半で終わっており、ラストに向けて事態が好転していくとは期待できなかった。それでも、私がエンドロールの最後まで席を立たなかったのは、全編を観なければ、作品全体を批判する資格がないという矜持に過ぎない。唯一、川井憲次の音楽が救いであった*1

公平のために付言すれば、映画「ローレライ」のように不快感を覚えることはなかった*2。紙芝居のような単純な映像表現*3と饒舌なナレーションに、私がついて行けなかっただけだ。戦後史を俯瞰しようという製作動機には共感するし、個々の映像演出には、この監督ならではのものがあった。
http://d.hatena.ne.jp/Wilm/20050314

*1:これとて、過去作の「攻殻機動隊」や「イノセンス」の方がインスピレーションに溢れている。正直、劇中で最も感動した音楽は、今井光也作曲の「東京オリンピック・ファンファーレ」だった。

*2:ローレライ」の樋口真嗣監督が「牛丼の牛五郎」の役で登場していた。

*3:そのわりには、素材撮影とCG処理には結構な労力を要したようだが。