新小児科医のつぶやき

2008-04-14 神奈川帝王切開賠償訴訟・二審判決文 前編

一審の解説は神奈川帝王切開賠償訴訟・判決文編にありますから、御存じない方はまずそちらを頑張ってお読みください。今朝確認すると一審判決文のリンクが切れていて申し訳ありませが、これの二審判決が3/27に東京高裁第8民事部で下されました。24ページの判決文で、これもWebにはまだ掲載されていないので原文を公開できませんが、まず判決結果を示します。


横浜地裁 東京高裁

  1. 原告患児に1億3708万7511円
  2. 原告父親に275万円
  3. 原告母親に275万円
  4. 訴訟費用は被告3:原告1

  1. 原告患児に8125万2506円
  2. 原告父親に170万
  3. 原告母親に170万円
  4. 訴訟費用は等分


見比べてもらえれば分かるように賠償額が約4割減額されています。どんな新たな事実認定があったが興味を掻き立てますし、それよりどれだけ熾烈な論戦が展開されたか興味津々なのですがビックリするような情報があります。一審の横浜地裁判決がH.19.2.28に判決が下されているのですが、なんとなんと実質審理無しで結審。ところが当初9月末の判決予定が突然延期、延々半年も待って3/17に予定されるもさらに延期され、最終的に今年の3/27にようやく判決が下されています。

訴訟の実際とか、法廷ルールにさして詳しいわけではありませんが、実質審理無しとは「一審の判決で再吟味する部分がない」と普通は考えられ、そうならば一審通りの判決を踏襲するのが常識的と考えますし、判決が下るのにもそんな時間はかからないだろうと考えます。ところが判決期日が半年も延期された挙句、判決内容まで大幅に変わるとは奇異な感を抱かざるを得ません。当ブログは法律関係者の方もよく訪れて頂いているようなので、そういう事はとくに珍しくないのか、それとも異例の事なのかを教えていただければ幸いです。

一審の焦点は、CTGの判定と緊急帝王切開への準備時間の遅れでした。簡単に経過をまとめておきます。


時刻 CTG 診療経過
20:35早発一過性徐脈
21:00遅発一過性徐脈(疑い)胎児仮死の可能性から緊急帝王切開になる事も想定し、患者を禁飲食とした。
21:40遅発一過性徐脈21:00の疑いと合わせ遅発一過性徐脈と診断。
21:45 緊急帝王切開の指示を出す。
23:01 分娩


まず20:35は問題無しとして一審同様関連性を否定していますが、二審でも21:00は遅発一過性徐脈の可能性が高いと判断されています。ここで裁判所は21:00の遅発一過性徐脈に対する考えを文献を引用して示しています。遅発一過性徐脈は胎児ジストレスの徴候と認定した上で、

「また,1回でも出現したら胎児はその場面では一時的に低酸素症に陥っていたことには違いないが, それ以後には発生をみなかったり。CTGの所見が良好になっていれば胎児はその状態を自分で乗り越えることができたと考えられ, 胎児ジストレスとは診断されない。」

1回目の遅発一過性徐脈で直ちに帝王切開を行わず経過を観察した判断は問題無しと認定したと解釈してよいでしょう。経過を観察しながらも医師に課せられる注意義務として、

このような基線細変動のない遅発一過性徐脈は遅発一過性徐脈の出現初発時期から約30分以後になってからみられることが多いので, この理論を基に臨床での指針を考えると, 私達は遅発一過性徐脈の繰り返しての発生をみたら,30分以内での胎児の娩出を図らないと予後が悪いということになる. 産科臨床の場では胎児ジストレス発生からの急速遂娩による胎児娩出術, ほとんどが帝王切開と思われるが, それは30分以内に実施されることが必要であるという指針が公表されているのもこのためであると考えられる。

この文献記述を重視したと考えられます。重視した上で、

    1回目の遅発一過性徐脈だけで急速遂娩(帝王切開)の判断はまだ早いが、2回目が来たら30分以内に急速遂娩を開始しなければならない。

この基準が裁判の目安として事実が認定されていきます。つまり1回目の遅発一過性徐脈が発生した時点で、2回目が起こったときに30分以内に急速遂娩すなわち帝王切開で娩出までできる準備を行なう義務が産科医にあると認定しています。

21:00の時点で産科医も遅発一過性徐脈の疑いから帝王切開の可能性を考え、

この徐脈について遅発一過性徐脈の可能性があるかもしれないと考え, 経膣分娩までには時間が必要であることから, 急速遂娩が必要になるときには帝王切開になる可能性があると判断し, 帝王切開に備えて飲食禁止と血管確保によるブドウ糖液の点滴を指示した

こういう準備をしましたが、これでは注意義務を果たしていないとの結論に導かれていきます。

この事件では帝王切開準備の指示を出してから1時間16分で娩出しています。またこの病院自体の緊急帝王切開の平均娩出時間は約1時間20分と裁判でも証言されています。この点について、

控訴人病院では平成9年当時において夜間に緊急帝王切開術を実施することが決まった場合, その人的態勢等から, 開始決定から胎児娩出までに平均して約1時間20分を要しており, このことは控訴人病院医師においても十分認識していたこと

つまり帝切の「Go」のサインを出してから娩出まで1時間20分必要な事は被告産科医は知っているとしています。それなのに「飲食禁止と血管確保によるブドウ糖液の点滴を指示」しか出していないのは明らかな注意義務違反としています。2回目の遅発一過性徐脈が起こったときに直ちに手術に取り掛かれるように、

午後9 時ころに一過性徐脈の発生をみてこれにつき遅発一過性徐脈の可能性があるかもしれないと考えて急速遂娩が必要になるときには帝王切開になる可能性があると判断したのであるから, この時点において,胎児の低酸素状態(低酸素血症) が重症である可能性をも考慮して麻酔科医師や手術室看護師等に連絡をして同人らを招集するなど帝王切開術の準備を具体的に開始すべき注意義務があったものというべきである。

つまり遅発一過性徐脈の2回目が起こる可能性があり、起こった時には「30分以内」に帝王切開をしなければならないはずなのに、漫然と2回目が来るのを待ち、2回目を確認してから1時間20分もかかる帝王切開準備に取りかかるとは明らかな注意義務違反であると判断しています。ここでもし21:00に帝切準備にとりかかっていたら、

実際には開始決定(午後9時45分) から1時間8分が経過した午後10時53分に帝王切開術が開始されているのであるから, これによれば, 午後9時ころから1時間8分が経過した午後10時8分ころには帝王切開術を開始することができたのである(帝王切開術を行うことを決定したときから30分以内に帝王切開術を開始することができたのである。)。

いつもながらの裁判所の後出しシミュレーションですが、はっきり言って疑問があります。もちろんこの事件に限るシミュレーションなので間違いとは言いませんが、「30分以内」はあくまでも2回目の遅発性一過性徐脈を確認してから「30分以内」です。このシミュレーションでは21:40に遅発性一過性徐脈を確認し、22:08に手術開始で「28分」です。もちろん「30分以内」を満たしてはいます。

ところが一方で病院の娩出までの平均時間は1時間20分です。この日は1時間16分で平均より早かったですが、事件当夜はたまたま平均より早く手術準備が進んだため「30分以内」がシミュレーション可能ですが、平均時間の1時間20分であれば手術時間を同じ8分としても手術開始まで1時間12分、21:00から準備にかかっても手術開始は22:12で「32分」となり「30分以内」を越えます。当然平均ですから1時間30分かかる日もあるはずで、そうなれば「42分」になり余裕で越えてしまいます。

そうなると被告の産科医はたまたま事件当夜に平均より早く手術時間準備が整ったために責任を問われた事になります。準備時間なんて微妙ですから、21:00に手術準備を命じた時と、21:45に手術準備を命じた時が同じ時間になると限りません。時間帯は早いからと言って必ずしも準備時間が早くなるとか、その夜はいかなる時間帯であっても同じ時間で準備できるとは誰も保証し得ない事です。どうにも釈然としないシミュレーションに感じてなりません。

それはさておき被告産科医及び病院側が主張する、

  1. 麻酔科医師や手術室看護師等が常駐していない控訴人病院の人的態勢のもとでは, 夜間は通常より長い時間を要するものであること
  2. 控訴人病院における夜間の帝王切開術の決定から娩出までの所要時間が当時においても平均1時間20分であったこと
  3. 一般病院においても帝王切開術の決定から娩出までを1時間以内に行うことには大きな制約があること

そんな事情をすべて考慮しても、

緊急帝王切開術を行うことを決定してから実際に帝王切開術が開始されるまでに約1時間8分を要しまた胎児を娩出させるまでに約1時間16分を要したことについては, それが当時の医療水準を満たしているものとはいい難いというべきであるから, 控訴人病院医師には緊急帝王切開術を行うことを決定した後速やかに帝王切開術を開始すべき注意義務を怠った過失があったものといわざるを得ないものである.

この辺は一審と同様の事実認定です。ただ二審は若干弱気で日本産婦人科学会の「わが国の産婦人科医療の将来像とそれを達成するためめ具体策の提言」を引用し、

「・・・努力目標としては30分以内に帝王切開が可能な体制を目指していくが, その達成には産婦人科だけでなく麻酔科, 手術室の体制を含む施設全体の対応が必要である。」と述べている。

だからあくまでも「仮に」としながら、

緊急帝王切開術を行うことを決定してから実際に帝王切開術が開始されるまでに約1時間8分を要しまた胎児を娩出させるまでに約1時間16分を要したこと白体には, 控訴人病院医師において緊急帝王切開術を行うことを決定した後速やかに帝王切開術を開始すべき注意義務を怠った過失を認めることができないとしても

こういう事実認定の仮定まで行なっています。おそらくですが、杓子定規に「30分ルール」を規定してしまうと「マズイ」との心証の揺れでしょうか、

午後9時ころの時点で帝王切開術の準備を具体的に開始すべき注意義務を怠った過失があったのであり, もしこの時点で準備が開始されておれば, 午後10時8分ころには帝王切開術を開始することができ(帝王切開術を行うことを決定したときから30分以内に帝王切開術を開始することができた。)

付け足しみたいな形ですが、この事件では21:00の時点で帝切準備「Go」としていれば「30分ルール」を満たしていたはずだから、いずれにしても「アウト」だと補強しています。

ここはあくまでも個人的な解釈ですが一審判決文では、

急速遂娩である帝王切開術が可及的速やかに児を娩出させるために行われるものであることからすれば,帝王切開が決定されてから児の娩出までに要する時間はできるだけ短くしなければならないのは当然であり,被告病院の平均時間が1時間20分であり,一般病院においても1時間以内に行うことに大きな制約があるとしても,それは医療慣行に過ぎずこのような医療慣行に従ったからといって,被告の過失が否定されるということはできない。

これでは当然でてくる「1時間20分が遅いのなら『何分以内』ならOKだ!」に答えが無い事になります。それで証拠を漁ってみたら「30分以内に手術開始」の文献が出てきたのでこれを当てはめ、シミュレーションを組んだら「28分」となり注意義務違反の根拠にしたと考えます。ところが「30分ルール」ですべてを縛ると実情との乖離が余りにも大きくなり、一審のように「医療慣行」で一蹴にするのにためらいが生じたのではないかと感じています。

二審でも事実認定は結果として「30分ルール」を満たせないから注意義務違反は踏襲していますが、含ませるニュアンスとして

    この事件では「30分ルール」を満たせる可能性があったのに怠った

この事を蛇足のように強調していると思っています。

しかしそうなれば「30分ルール」を満たせない分娩施設では、遅発性一過性徐脈(疑いでも)が出現すれば直ちにスタッフを招集し帝王切開準備に驀進する義務が課せられたと考えても良さそうです。ただしです、それで「30分ルール」を満たしたら例え重症仮死であっても問題無しとされるかどうかは分かりません。さらに直ちに手術準備にかかっても「30分ルール」を満たせなかったらどうなるかも不明です。何と言っても裁判所の判断は「30分ルール」さえ満たせば「高度の蓋然性」で重症仮死自体は起こらないとしているのですから、後は訴訟をやって見なければ分からないというところです。


ここまでなら一審と同様で病院側完敗です。ところが判決は冒頭に記した通り、一審から賠償額が約4割削減されています。実質審理を行なっていない二審判決で何が起こったのかになります。皆様「何があったんだ!」と素直に疑問を抱かれると思いますが、

    「♪ちょうど時間となりました〜、またの会う日を楽しみに、それではみなさん、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ、さーよおーなーらー・・・」

くたびれたのでまた明日(たぶん)。。。

峰村健司峰村健司 2008/04/14 08:50 現場感覚から外れた医療水準を認定するこのような判決は、時として大災害をもたらす可能性があり看過できませんね。例の「フィブリノゲンを使え」判決を思い出します。↓
http://www.orcaland.gr.jp/kaleido/iryosaiban/S44wa1117.html

もと公務員麻酔科医もと公務員麻酔科医 2008/04/14 09:05 ほとんどの病院では麻酔科医は、オンコール料なんて貰っていません。往復のタクシー代は出ないし、残業代は、実際に帝王切開をやっている時間で、早めに呼ばれて待機している間はでない。そのくらいの環境だったら、PBで呼ばれたら(笑)連絡はつくけれど、1−2時間で手術が開始できるレベルだったら御の字だと思います。夜間休日でも麻酔科が来る。それを、1時間以内に、緊急帝王切開ができるように改善せよというのは、かえって麻酔科を逃散させることになります。
裁判所に伺いたい。
この産婦人科医や麻酔科医は、オンコール待機料を貰っていたのか。往復のタクシー代を支給されていたのか、残業代はキチンと支払われていたのか。
そういうもろもろのお金もはらわれず、でも、母子の安全を考えて過重労働している人間をさらに裁判で痛めつけることは辞めてほしい。
昨日mixiの映像をみていて、不当判決に心を折られている産婦人科医に涙しました。

麻酔科医麻酔科医 2008/04/14 09:08 以前中止された番組が今晩再放送されるようです。
4/14(月) 22:00〜22:50 NHK総合
地方の時代優秀賞▽JR脱線事故・救命の優先順位医師の決断

NHKスペシャル◇災害現場や大事故の現場で、けが人の治療や搬送を医師や看護師が緊急度に応じて選別する”トリアージ”の実情と課題を伝え「第27回地方の時代映像祭」の放送局部門優秀賞を受賞したドキュメンタリーを再び送る。107人もの死者を出したJR福知山線脱線事故。当時、現場に駆け付けた医師や看護師は、それまで経験したことのないトリアージを迫られた。判断に許された時間はわずか30秒。1人でも多くの命を救うために、通常時では考えられないほどの厳しい決断が求められた。現場では、最優先で治療を施す必要がある負傷者には赤のタグが着けられ、重傷だが数時間は治療を待つことができる人には黄色のタグが着けられた。そして蘇生(そせい)不可能な人には黒のタグが着けられ、治療は施されなかった。当時の過酷な状況を、現場の最前線にいた医師や看護師をはじめ遺族、負傷者らの証言から検証する。http://www.nhk.or.jp/special/onair/070423.html

この事故に出動し、トリアージに関与された救命救急医の先生が、自殺されています。

元臨床医元臨床医 2008/04/14 10:19 我々医療専門職としては、「30分ルール」を満たしていても、ある一定の数で重症仮死が起こることを具体的に示し、「高度の蓋然性」とやらがないことを裁判官に明示する必要があります。

医療裁判で「高度の蓋然性」という言葉が出てきたら、それほど「蓋然性」はないということを示す例を医療者が数多く蓄積し、裁判官の過ちを指摘してあげることが専門職として必要ではないでしょうか。相手はド素人なんですから。

学会として司法の不当な蓋然性判決に対処すべきです。

僻地の産科医僻地の産科医 2008/04/14 12:01 このような論文があります。
「緊急帝王切開術に要する時間の実態一大阪府下病院調査より−」
(産婦人科治療 2007 vol.94 No.2 p197-200)
http://obgy.typepad.jp/blog/2007/12/post_1341_9.html

あの大阪府でさえ所謂30分ルールの実施できる施設は,56施設中わずか2施設に過ぎなかったという論文です。

また近々、神奈川県内での同様の調査結果が出る予定で、そちらのほうは資料を手に入れ次第、ブログにてあげさせていただく予定ではありますが、30分以内で帝王切開できる施設は1施設も存在しなかった、という結果だったと漏れ聞いております。

Med_LawMed_Law 2008/04/14 12:57
第二次未熟児網膜症訴訟から続く、『高度の病院ほど高度の責任を負うべし』という最高裁判例を叩き壊さないといけないということです。

亀田のテオフィリン訴訟とも共通するものですが、救命可能性が高い病院ほど訴訟リスクが高くなるという、ハイレベル病院を撲滅するトンデモ訴訟が続いてるのです。

さっさと、医療崩壊させて、高度の責任能力を持つ人の扱い方を教えてあげるべきでしょう


血液製剤HIV訴訟でも、責任能力のある厚生技官だけが有罪に問われ、高給だが能力の欠ける厚生文官は能力なしとして罪に問われませんでした。

この国では、能力があるということは、罪深く、どこまでも義務を負わされるようです。

勤務医の皆さん、単なる賃金労働者として、賃金以上の義務を国に返上申し上げましょう

10年ドロッポ10年ドロッポ 2008/04/14 16:22 >ほとんどの病院では麻酔科医は、オンコール料なんて貰っていません。往復のタクシー代は出ないし、残業代は、実際に帝王切開をやっている時間で、早めに呼ばれて待機している間はでない。

労働基準法違反ですからとっとと告発しましょう。

>不当判決に心を折られている産婦人科医に涙しました。

産科医なんかやってるからですよ。自業自得です。
…と、最近本気で思いつつあります。

BugsyBugsy 2008/04/14 17:48 夜間緊急オペをしようにも麻酔科医が常勤でいないか人数が減っている病院が増えました。
即座にはフリーランスの麻酔科医を「捕獲」不可能です。仮に当直でいたとしても他の診療科の緊急オペの麻酔に掛かっていて自分の患者のオペの順番まで数時間待たされることはザラです。むしろオペ開始の時間は最近著明に延びましたね。
だから30分ルール達成なんて事実上ありえません。30分で始められたとして100%救命できるわけはありません。緊急オペとは重症で生命予後が危ぶまれるからこそ適応になるのです。翌日の定時オペに持ち込めないから夜中にやるんです。

昼間手術出来てなんで夜間はもたもたしてるんだと、お怒りになる患者家族は多いですけどね。これが現実です。

「医者の来ないところには嫁は来ない」といいますが、「麻酔科の先生のいない病院に外科医は来ません」これが真実!これも医療焼け野原なのかなあ?すでにそうなってしまいました。

当科麻酔なんて昔の話。「ウチラ陽気な かしまし外科医」でしたがねえ。やったことはありますが、今じゃあ最大の地雷でしょう。土下座されたってやりませんよう。

YosyanYosyan 2008/04/14 19:09 30分ルールの判決文部分ですが、

−−−−

 やはり, 緊急帝王切開術を行うことを決定してから実際に帝王切開術が開始されるまでに約1時間8分を要しまた胎児を娩出させるまでに約1時間16分を要したことについては, それが当時の医療水準を満たしているものとはいい難いというべきであるから, 控訴人病院医師には緊急帝王切開術を行うことを決定した後速やかに帝王切開術を開始すべき注意義務を怠った過失があったものといわざるを得ないものである.

 なお, 日本産科婦人科学会産婦人科医療提供体制検討委員会の平成19年4月12日付け最終報告書は, 「わが国の産婦人科医療の将来像とそれを達成するためめ具体策の提言」として, 「緊急時の体制の整備: 多様な分娩施設を許容しつつ安全性を確保するために, 分娩を取り扱うすべての施設で, 急変時に迅速に帝王切開を含む急速遂娩による児の娩出が可能な体制の整備を行っていく。すべての分娩施設には緊急時の体制に関する情報公開が求められる。努力目標としては30分以内に帝王切開が可能な体制を目指していくが, その達成には産婦人科だけでなく麻酔科, 手術室の体制を含む施設全体の対応が必要である。」と述べている

−−−−

 これが判決文の真ん中ぐらいにくるのですが、この部分だけ読むと学会が「30分ルール」を提唱しているから、医療常識として「30分ルール」を適用して当然と言う論旨展開になっています。ただ産婦人科学会も「努力目標」としているだけであり「遂行義務」とはしていません。「30分ルール」を施行するには産科だけの問題ではなく施設全体の対応が必要になるからです。

 施設整備には医療と言う特性から国の整備方針が必要です。この「30分ルール」が国の医療整備の方針として「努力目標」として初めて現れたのが平成15年の通達で、この事件当時には未だ出されていません。この事件は平成9年ですからね。また初夢の時限爆弾で書いた今春の地域医療計画でも「30分ルール」は書かれていますが、この時の通達でも「努力する」であり、義務になっていません。判決文が引用して根拠にしている産婦人科学会の最終報告書も平成19年です。また通達も地域周産期センターにそれを望むだけで全分娩施設に望んでいません。

 この事件の後、6年も経ってから出始めた努力目標の「30分ルール」を

  >当時の医療水準を満たしているものとはいい難いというべきである

 これは正直なところ根拠無しの主張と考えざるを得ません。医療裁判ではしばしばそういう事が起こりますが、平成9年当時に公式に近い形(通達、学会報告など)で「30分ルール」が無かったと考えられます。無いものを当時の医療水準にするのは牽強付会と見なされても致し方ないと考えます。判決文中でも平成9年当時に「30分ルール」が常識であったとの文献提示は行なわれていません。

元外科医元外科医 2008/04/14 20:33 結果が悪くて亡くなれば訴えて金を取り立てるというのは遺族の普通の手法になりつつありますね。
このようなモラルハザードも司法が悪いせいでしょう。正義も真実もありませんね。
今後は30分でCS出来ない病院はQQ転送も断るでしょうね。

サルガッソーサルガッソー 2008/04/14 23:23 私の経験だと努力目標という言葉は「達成できるかどうかわからないけれど、立てることに意義がある!」といった内容だった気がしますが
どうやら法曹会では達成できなかったら刑罰を食らう性質の概念のようですね

でもでも 2008/04/15 00:24  保険金の一事故一億円の範囲内に納まって、支払い可能にすればここで終わると思ったんでは?(裁判官の思惑)