某所としておきますが、興味深い議論がされていましたので、これをモチーフに拝借して、御紹介と言うか意見を聞かせて頂きたいところです。と言うのも、タイトルにしたように外科手術に関わる事なので、小児科医の私では最後の実感がつかみ難いものであるからです。
最近の内視鏡手術の進歩は目覚しいものがあるようです。進歩に伴って適用範囲はこれも年々広がっているとされます。現在どうなっているかなんて、町医者には見当がつき難いのですが、某所の議論を参考にすると「そんな事まで、出来るのか!」と感心した次第です。おそらく当分の間は、内視鏡手術の進歩と適用の拡大は続いていくと予想されます。
内視鏡手術の適用の拡大はこれもまた当然のように軽症例から広がっているはずです。これがより重症例にドンドン広がりつつあるのが、目下の現状とぐらいに理解してもそんなにハズレではないかと考えています。
ここでなんですが現在の中堅クラス以上は、開腹手術でまずトレーニングを積んで、開腹手術の技術の基礎の上に内視鏡手術を習得していたと考えています。私が知っている内視鏡手術の初期時代はそうでした。単純に言えば、開腹手術技術を内視鏡に手術に応用していったと言う感じです。この辺は診療科や手術対象によって差はあるでしょうが、大雑把にはそんなものかと思っています。つまり、
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開腹手術技術習得 → 内視鏡手術技術習得
ところが内視鏡手術の適用が広がると、そういう軽症例の開腹手術がドンドン減っている実情があるそうです。技術の習得は、これもなんでもそうで、一番の早道は数と言う経験をこなすところに尽きます。人間の体、疾患の状態は個人差が大きいですから、数を経験する事によって、様々な応用技術を覚えるというのも大切な事です。
その数をこなせる環境が狭められているのが現在だそうです。そうなると問題として出てくるのが、若手医師の開腹手術技術の習得が年々難しくなるに通じます。現在の内視鏡手術の進歩と普及の程度が実感し難いのですが、流れとして若手外科医の最初の修練の場であった軽症例は殆んど無くなってしまう可能性があります。
実情がそこまでかどうかは私ではなんとも言えませんが、遠くない将来には確実にそうなる可能性はあるかと思います。そういう時代になると、若手医師は開腹手術を習得してからでなく、まず内視鏡手術を習得する時代が来る可能性があります。そう簡単に開腹手術が滅びるわけではありませんが、行なわれる開腹手術は内視鏡では手に負えない難関症例になり、そこからいきなり若手が手を出せるとは思えないからです。
さてなんですが、手術の技術習得が内視鏡からになっても、技術伝授のメソドはそれなりに確立するかとは思います。問題は、
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内視鏡手術 → 開腹手術
従来と言うか現在は、
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開腹手術技術 ≒ 内視鏡手術技術
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開腹手術技術 < 内視鏡手術技術
そういう時代でも開腹手術は残ります。残りはしますが、かなりの難関症例のみ残ります。そうなれば、難関症例に対応できる医師の育成が非常に難しくなってしまう事を懸念します。これは私が漠然と覚えた不安です。
そんなに心配なくとも、内視鏡手術から開腹手術への技術移行は容易なのかもしれませんし、技術移行は現在では難しそうに思えても、どこかで技術革新があって、シームレスのものとして伝授できるメソドが確立するかもしれません。内視鏡手術の発達の度合いになりますが、開腹手術のための必要医師数が減り、習得できる者が減っても需要と供給のバランスで支障を来たさないと言う見方も無いとは言えません。
何か私の個人的な疑問への情報収集みたいになってしまいましたが、良ければ御意見下さい。