新小児科医のつぶやき

2012-11-22 上小阿仁村・謎と共に去りぬ

まず11/7付さきがけ on tha Webより、

 先月12日に上小阿仁村国保診療所長として着任したばかりの西村勇医師(71)が、「体調が思わしくないので、後任を探してほしい」と村に辞意を伝えていたことが6日分かった。

続報が出まして、11/21付さきがけ on tha Webに、

公募常勤医が辞職 上小阿仁村国保診療所

 先月12日に上小阿仁村国保診療所長として着任したばかりの西村勇医師(71)が、体調不良を理由に辞職願を提出し、村が受理していたことが20日分かった。辞職願は15日付だが、19日にファクスで診療所に送信されていた。診療所の内科は15日から休診している。

 村によると、西村医師は19日昼ごろ、「健康に障害を喫し、歩行障害で業務を遂行できない」とファクス送信、診療所に「原本は後で送る」と電話連絡があった。郵便書留で「長い闘病生活になりそうだ」との文書と医師住宅の鍵や診療所のマスターキーなどが送られてきた。

 西村医師は今月2日、診療所事務長を通じて村に辞意を伝えたが、後任が見つかるまでは診療を続ける予定だった。村は6日から村ホームページなどで後任の公募をしているが、まだ見つかっていない。西村医師の診療は14日が最後で、既に村にいないという。

ちょっとまとめてみます。


Date 出来事 勤務日数
10/12 上小阿仁村診療所に赴任 1
11/6 辞意表明の報道 26
11/14 最終診察日 34
11/15 この日から休診 (35)
11/19 Faxで辞職願送付 (39)


どうも

    西村医師の診療は14日が最後で、既に村にいないという

11/14の診察終了と同時に村から離れた様にも見えます。翌11/15の朝から村を離れた可能性もありますが、そんなに長くはいなかった気配が窺えます。余ほど体調が悪かったようで、11/19のFaxには、

    健康に障害を喫し、歩行障害で業務を遂行できない

そこまで悪いのならどうやって荷物をまとめて(置いていったのかな?)村から離れたかの疑問は出ますが、上小阿仁村の診療所の仕事には在宅と言うか往診の業務も結構あったはずで、日常診療はともかく、そういう出歩く仕事が無理になったと言うことかもしれません。本当に体調は悪いようで郵便書留には、

    長い闘病生活になりそうだ

かなり深刻な病状である事を窺わせます。それにしてもどこに行かれたんでしょうかねぇ。確か赴任前は帯広に在住されていたはずですから、そこまで帰られたのでしょうか。謎の多い人物で、家族関係等も不明ですから、行く先は現時点では不明です。


これを額面通りに取ると、赴任時には少なくとも大きな体調不良はなかったはずです。年齢こそ心配されたものの体調自体は基本的に良好であったはずです。そんな西村氏が悲鳴を上げたのが赴任して26日目の11/6です。ここも11/6にいきなり体調悪化が起こったとするのはやや不自然で、その前から体調を崩されていたと考えるのが妥当でしょう。

大雑把ですが、その1週間前の赴任20日目頃より体調の変化に気付かれていたんじゃないかと思われます。その後は体調の悪化は回復の兆しを見せるどころか、益々悪くなり、11/6に辞意表明、11/15には診療さえままならない状態になり、村役場への挨拶すら出来ない切羽詰った状態に陥ったのだろうです。


これはあくまでも額面通りに取ればのお話です。やはり経過としては不自然です。色々にお人柄について風評が合った西村氏ですが、辞職をするにしても、やはり村役場に直接挨拶ぐらいはするのがマナーと思います。パターンとして、

  1. 体調の悪化のため後任が見つかるまでの診療継続は不可能になった旨を伝える
  2. 村側からの慰留を受ける
  3. それでも診療継続は無理だと重ねて伝える
  4. 村側はやむなく了承する

ある種の儀式みたいなものですが、そうやって辞職手続きから給与の精算、さらには荷物の転送などの手続きが行なわれるです。最低限村を離れるにあたり、電話連絡を村役場側と取り、カギなどを返還するぐらいは行いそうなものです。これらを吹っ飛ばして、先に休診し、村の外からFaxと郵便書留で辞職届けを送りつけるのは不自然と言えば不自然です。そういう経緯を取った理由としてあえて思いつくのは、

  1. 辞職に関連する一連の儀式を行う余裕もないほどの体調悪化に見舞われた
  2. 1ヶ月程度の勤務であったが、辞職するにあたり、二度と上小阿仁村役場の職員と顔を会わしたくないほどの理由ができた
  3. 西村氏の人間観察の反応実験の一部である

赴任するときもミステリアスな雰囲気を持たれる医師でしたが、辞職する時もまたミステリアスと言うところでしょうか。さしずめ、

    Gone with the mystery

とにもかくにもお楽しみは「いつ本が出版されるか」です。ここには今回のミステリーを解き明かす内容が期待できます。怖いもの見たさが半分とは言え、是非でも買って読みたいところです。読みたいのは私だけでなく、少なく見積もっても万単位の購読者が期待できそうな気がします。ひょとっすると1桁上るかもしれません。

ある程度のベストセラーになれば、ドラマ化の期待も出てきます。これもある意味画期的で、これまでの医療ドラマにないものになるかもしれません。従来の医療ドラマのパターンとして、

  1. 赤ひげ型
  2. 白い巨塔
  3. ブラックジャック
  4. ヒポクラテスたち型
  5. ER型

ER型はブラックジャック型の群像アレンジと言える気もしますし、ヒポクラテスたち型も赤ひげ型の変形と見なせば、さらに類型は絞られ、

  1. 赤ひげ型
  2. 白い巨塔型
  3. ブラックジャック型

これら従来の類型とは異なる上小阿仁村型が生み出される可能性を秘めています。新たなオリジナルの創出はどんな分野であっても大変な事ですから、今は出来上がる著作にひたすら期待を持ちたいところです。


オマケの小ネタ

診療所の電話番号に慄然様のコメントより、

問題の診療所の代表電話番号を見て慄然としました。
末尾が42の「死に番」です。縁起が悪いとされ、特別な場合を除いてNTTが一般に割り当てることは有り得ない番号です。通常はNTT内部で内線直通番号などに割り当てて消費するので、家庭や企業、ましてや病院や診療所に割り当てるなど、特別な場合を除いてあり得ません。
特別な場合とは、電話回線契約の際に「死に番を割り当ててくれ」と言われた場合です。

なにか呪詛的な怨念を感じます。

えっ、まさかと虚を衝かれた思いで確認してみると末尾は確かに「42」です。おそらくですが前身の病院時代から引き継がれてきたものと思いますが、ちょっとビックリしました。小ネタついでなんですが、11/21付さきがけ on tha Webには、

    村は6日から村ホームページなどで後任の公募をしているが、まだ見つかっていない。

こうなっているのですが、今朝公募ページを確認してみると、

誠に申し訳ありませんが、お客様の要求を処理することが出来ません。

理由として次のようなことが考えられます。

  1. 要求された情報は現在公開されていない。
  2. 要求された情報は既に削除されている。
  3. URLの記述に誤りがある。

URLが変更された可能性も否定できませんが、もう一つの可能性として後任が見つかったもありえます。ドラマはまた新しい展開を見せてくれるのでしょうか。

JSJJSJ 2012/11/22 08:49 2〜3週間の経過で歩行障害が進行していく病態は、実際ありえますから。
まずは ご快癒を祈念し、さらなるご活躍を期待いたします。

MOKOMOKO 2012/11/22 10:46 初めまして、いつも楽しく拝見しています。

死に番の件ですが、うちの自宅の電話番号、末尾が42です。
特に希望したわけでなく、NTTから割り当てられました。
契約したのは18年ぐらい前ですが……時代とかによるんでしょうか。
(あるいは単に担当者がお間抜けだったとか(^^;))

YosyanYosyan 2012/11/22 12:12 MOKO様

怪しい、怪しい記憶なんですが、かつて電話番号は強制割当の時代があったはずです。そのために都合の良い電話番号を獲得するために何回線も契約したなんて話が遠い記憶の中にあります。それと類似の話なんですが、「0123」で有名な引っ越し屋ですが、あれも「0123」を宣伝しすぎたために、「0123」の電話番号を持つ家庭から、間違い電話で迷惑している抗議が来て、片っ端から買い取ったのエピソードをどこかで聞いた事があります。

2つのエピソードを勘案すると、一度割り当てられた電話番号は縁起が悪い程度の抗議では変更が不可能であったしても良さそうです。上小阿仁村の診療所の場合、たまたま当時の電電公社から「42」の末尾番号を機械的に割り当てられ、公立の事ですから変えることも出来ずに今に至るになっている可能性は否定できません。

根拠は私の怪しい記憶ですから、その辺は御容赦下さい。

かとうかとう 2012/11/22 13:25 1993年にとった電話番号は、NTTの窓口で全部手続きを処理しましたが、番号を三つ提示されて選べました。この段階では空いてる番号をランダムで出してたようで、候補の中に末尾42がありました。窓口の方が縁起が悪いから二択になっちゃったと言ってましたが、他の番号の並びも含めて気に入ったので、その番号にましたかが。

吉田吉田 2012/11/22 16:54 とりあえず上小阿仁村の人は無医村になってもそんなに困らないんですよね。
だから来てくれたお医者さんを政争の具に出来るんじゃないの? さすがに。

BugsyBugsy 2012/11/22 18:11 後任がすぐに見つかったというのは嘘くさいです。普通現任の職員が辞意を申し出てから探すでしょう。そんなに時間がたってないはずです。
勤務医の立場で言うと 普通人事移動するときは自分の後任がきまり、勤務先の区切りが年度初めかせいぜい10月1日です。少なくとも採用時期は他の事務などの職員と同じな方が退職金の換算も楽ですから。
従って今の時期に自分から辞職しようとしても 後任の方がこれまた自分の後任をすぐさま見つけようがありませんから。

色々考えさせ 楽しませてくれる診療所ですね。オイラにとっては金木病院以来です。

MUROMURO 2012/11/22 18:56 日本医事新報11月17日号の105pageに募集があります。地方公務員、診療所所長職、年収2000万円以内などという条件です。

BugsyBugsy 2012/11/22 19:21 2000万以内ですか。3000万だったら助教授が飛んでくるって言い放った遠い街にの市会議員もいたのに ここにいないのは実に残念ですねえ。

みゅーみゅー 2012/11/23 12:53 前北秋田市長が診療再開、上小阿仁 医師辞職で休診
http://www.sakigake.jp/p/akita/news.jsp?kc=20121123d

行く末が気になります。

京都の小児科医京都の小児科医 2012/11/23 17:49 >これら従来の類型とは異なる上小阿仁村型が生み出される可能性を秘めています

ドラマ化及びその後のゲーム化と思います。 
(医者追い出しゲームです。)

この場合は、昨今の諸事情から女医さんを出すのがベストと思います。
○○にやぶれた女医○○子は2000万円という条件で、何も知らずに
神○○○村に赴任した。 ライターさんの資質にもよると思いますが
個人的にはオカルト風にはしてほしくないです。
からめてほしいのは選挙でしょうか
村の政治状況
現野田村長派と安倍派の対立とか 若手の橋本
石原・自見・小沢・山口・渡辺・・・・・などなど

YosyanYosyan 2012/11/23 18:22 京都の小児科医様

プロットねぇ。個人的には熱血者のアンチテーゼみたいなものが面白いと思っています。熱血者の定番ストーリーは、誰もやる気のない集団に1人の異常な熱血漢が闖入し、様々な反発を受けながらも、やがてその熱気に皆が巻き込まれていくが基本です。

今回も出だしは同じで、陰湿な集団に場違いも程があり勘違い熱血漢が赴任するあたりが設定として宜しいかと存じます。ネットの悪評を読むとかえって「オレがなんとかしてやる」のタイプが主人公です。

定番の熱血者と違い、序盤は順風でストーリーは展開させます。協力的な村役場、難物と思えた反抗的な患者も順調に熱血漢医者に感化され、支持者が順調に増えていきます。このまま順風満帆と思わせたところで、小さな挫折が出ます。それを取り戻そうとして、さらに新たな挫折が広がります。やる事、なす事、裏目に出て行く展開です。

そうですねぇ、順風満帆で村の一員になれたと勘違いして祭ぐらいに、つい口出ししたら思わぬしっぺ返しを強烈に喰らい、自分は所詮は余所者なんだと痛烈に思い知らされるエピソードなんて面白そうです。

そこに選挙は御指摘どおりに入れてるのは良さそうです。色んな使い方はありますが、祭のエピソードに懲りずに現村長から支持を要請されたら、熱血振りを発揮して肩入れしてしてしまうなんてのも良いかもしれません。ところが熱血応援をするればするほど、かえって空回り捨てしまい、あえなく現村長は落選。

前村長派からは「あいつが余計な事を・・・」と恨まれ、新村長からは「あいつは前村長派だ」とレッテルを貼られる状態に陥るです。まさしく四面楚歌状態に陥った時に、小さな医療事故ぐらいが発生するぐらいが良いでしょう。客観的には医師の責任とはとても言えないのですが、残っていた支持者からも村全員から白眼視される状態です。

最後は石もて終われるように村から去っていくです。

第2部はそうやって何人もの赴任医師が去っていく状態の村に、まったく毛色の変わった医師が応募してくるです。でもって・・・こんなもんので如何でしょうか。

出張中出張中 2012/11/23 23:13 http://www.sakigake.jp/p/akita/topics.jsp?kc=20121123d
とのことです。

10年ドロッポ10年ドロッポ 2012/11/24 09:52 やヴぇめっちゃ面白そうw
Yosyan先生、このまま小説化キボンヌwww

k_gobok_gobo 2012/11/25 12:13 ちょうど22日から新しい先生が診療を開始していたようです。
以前は他市の市長だったほどの人物ということで、新たな展開が楽しみです(不謹慎)。

http://www.sakigake.jp/p/akita/news.jsp?kc=20121123d

森吉森吉 2012/11/26 00:50 前北秋田市長は町村合併前は旧鷹巣町長だった人ですね
その北秋田市でも医療や福祉についていろいろありました
あの辺り、政治がらみでいろいろありそう

浪速の勤務医浪速の勤務医 2012/11/26 09:30 現村長は、インタビューで医師へのいじめなんかなかったよ、と言っておられます。

http://www.news-postseven.com/archives/20121125_156661.html

2012.11.25 16:00
「悪の村」「村民全員が意地悪い」。診療所の医師が辞職するたびにネットでそんな風評を立てられて苦しんでいる村があ
る。秋田県中央部に位置する上小阿仁(かみこあに)村だ。なにが原因なのか、どのような被害が起きているのか。村長の
インタビューを中心に、村の現状をリポートする。(取材・文=フリーライター・神田憲行)

元村民元村民 2013/07/18 22:13 http://www.asahi.com/area/akita/articles/TKY201307170649.html

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